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七話 生還と組合と偽装

———地上


僕たちはやっと地上へと戻ってきた。外は今までの出来事が嘘のように晴れており、梅雨を感じさせないほど暑かった。少し前までは、幼馴染たちに裏切られて、死にかけていたのに、五体満足で戻ってくることができたのは奇跡のようなものだった。

けれど、余韻に浸る間も無く、まだやるべきことが多くあった。僕がダンジョンの入り口から歩いて出てくると、道行く人々が僕の方を見てきていた。どうやら、この仮面が異質すぎたらしい。少し足早に、高層ビルが立ち並ぶ道を歩いているとレティアが尋ねてきた。


——歩、地上に戻ってきたがまず何をするんだ?


「‥‥そうですね、とりあえずダンジョン組合に向かおうかと」


•ダンジョン組合

世界にダンジョンが溢れてから設立されたものであり、ダンジョン内で起こる事故や死亡、ダンジョンの異変などを確認し、管理をする。また、ダンジョンがある国には必ずあり、自己証明などをここで行い、冒険者達は組合に登録を行うことが義務とされている。


——ああ、なるほど。新しく登録を行うということか


「はい。 ‥‥多分、あいつらが僕のことを事故とでも言って死亡書を提出していると思うので、今更本人が現れても混乱を招きますし。それに、今はちょっと騒ぎになって注目されたり、あいつらから怨みを買うのも嫌なので」


——‥‥まぁ、確かにそうだな。しかし、それならば偽装するための名前はどうするんだ?


「そうですね‥‥。なら、無明(むみょう)ゼロっていうのはどうかな? 一から全部やり直すという意味で」


——まぁ、良いんじゃないか? 刻藤 歩という事がバレなければ名前なんて適当で良いしな。‥‥だが、身分証はどうするつもりなんだ?


「‥‥そうか、レティアは知らないんですよね。十年くらい前から、登録の仕方が変わったんですよ。自分の名前と血液、あと、魔道具を使って犯罪歴の確認をパスできれば登録ができるようになったので、身分証とかは使わなくなったんですよ」


——!そうだったのか。なんだ、いらん心配だったか。そういえば、家族は大丈夫なのか? 君が死亡したという報告がされて心配しているのではないのか?


「‥‥あぁ、それも大丈夫です。家族はもう、みんな死んでしまったので」


——!! ‥‥それはすまないことを聞いた


レティアがさっきまでの陽気な声色から少し動揺を受けたように、弱くなった。


「いえ、だいぶ前のことですし。それに、既に泣き尽くしたのでそんなに気を使わなくて大丈夫です」


そう、僕の家族はもういない。元々僕の家族は四人家族だったらしい。らしい、と言うのも僕は父親と面識が無かった。僕が生まれている以上父親はいるはずだけど、姉も母も父に関しては何も言うことは無かった。

だから、実際は三人家族のような者だった。三人ではあるけれど、特に不自由は無かった。しかし、そんな中、母は五年前に病気で死んでしまった。冒険者で赤級だった姉は二年前、()()()()()()()()に入ったきり行方不明となった。事実上、僕は一人ぼっちであった。

それに恋人も僕にはいないから、僕の訃報を聞いても悲しむ人はいなかった。


——‥‥そうか。君は強いんだな


「精神的には確かにそうですね。色んな経験をしましたからね‥‥、例えば、女の子に告白したらいきなり泣かれ始めたり、他にも‥‥」


——ストップ! もう充分だ。君は‥‥、何と言うか本当に凄烈な人生を送ってきてたんだな


そんな話をしていると、周りの高層ビルの中でも一際大きいビルの前に着いた。このビルこそがダンジョン組合であった。自動ドアが開いて、中に入ると中は冷房が効いており、居心地が良かった。僕は受付所まで行くと、そこにはカウンターが八つあり、それぞれに受付嬢さんが、座っていた。

僕は一番目のカウンターへ近づいた。


「冒険者登録をしたいんですが」


僕がそう言うと、座っていた受付嬢さんが笑顔で答えてきた。


「それでは、この紙にお名前をお書きください。書けましたら、魔道具を腕に嵌めていただき、犯罪歴のチェックを行います」


そう言われて、名前を書き、犯罪歴のチェックを行ったが、特に異常はなかった。


「最後に、このガラス板の上に血をお垂らし下さい。」


僕は受付嬢さんが持ってきた針で人差し指を指して、血を垂らした。


「はい、これで登録は完了です。それでは、このプレートをお持ち下さい。このプレートは、身元確認などに使われますので無くさないようにして下さい。また、紛失した場合は五千円で再発行となりますのでお気をつけ下さい」


そう言われて、白色のプレートを受け取った。ダンジョン組合の発行するプレートには身元確認のほかに、所有者のランクを見るためとしても使われる。下から、白、水色、青、緑、橙、赤、銅、銀、金、黒、となっている。この中でも、黒の冒険者はいずれかのゴールドダンジョン以上のダンジョンを制覇した者に与えられ、世界に三人しかいない。ちなみに、蒼丸達のランクは赤であり、僕のランクは橙であった。プレートを受け取ったあと、ビルから出ると、レティアが僕に聞いてきた。


——登録は終わったが、これからどうするんだ?


「そうですね‥‥、一度交換所で魔石や素材をお金に交換してから、武器の新調をしようかなとは思ってますけど」


——そうだな、それが良い。だが、あのオーガや下層で倒したモンスターの魔石や素材はまだ売るな。今売ったら、とんでもない騒ぎになることは目に見えている。


「はい。元々、あの素材は売るんじゃなくて、新しい武器に使おうと思っていましたし。今回の戦いで、オーダーメイドの武器を持っておいた方が良いと思ったので」


——言うまでもなかったか。それならば、特に言うことはない。さぁ、交換所に行こうか


「はい」


そして、僕は交換所で中層で倒したゴブリンの魔石と素材を売って、武器屋へと向かった。ちなみにゴブリンは意外と高く売れて、四匹合わせて、五万二千円になった。



———この時、これから向かう武器屋で運命的な出会いを果たすことを()はまだ知り得なかった。







少し長くなりました。これからはこのくらいの長さで統一して出していくつもりです。次回は明日に更新いたします。感想やコメントお待ちしておりますのでよろしくお願いします。

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