表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/104

七十一話 日常と非日常

あれから三週間が経った。僕はいつものダンジョン用の服ではなく、制服に身を包み、黄印学園で授業を受けていた。学園は昨日から夏休みが明けて、いつも通りの日々が始まっていた。

あのダンジョンでの日々を思うと、今の日常は退屈なものだった。けれど、退屈なだけであって居心地が悪い訳では無かった。ただ、勉強をして、昼ごはんを食べて、また勉強をして帰る。ただそれだけの日常。

僕の非凡な日常が元々の日常に戻ったのだった。


時は少し遡り二週間前、僕たちがダンジョンから帰ってくると、僕の家の前には呼び鈴を鳴らす人がいた。


「あれは・・・・・・」


「誰? 歩君の知り合い?」


「うん。あの人は———」


「刻藤!!」


歩きながらレナと話していると、それに気づいたその男が振り返ってそう言った。高身長で、整った顔を持ち合わせた男だった。


「どうしたんですか? 縞中先生」


その男は縞中(しまなか) (あかり)という名前の僕の担任であった。僕や、蒼丸たちが通っていた黄印学園の三年三組の担任で、学校では、分かりやすい、カッコいい、優しいの三点が揃った正に非の打ち所がない先生であった。


「刻藤、本当に無事だったんだな」


「あぁ、はい。おかげさまで。それで、どうしてここに?」


「率直にいうと、刻藤。学園に戻ってこないか?」


「ええ?」


縞中先生が言ったのは、復学に関する話だった。


「あー、そういえば歩君はまだ高校三年生なんだっけ」


「うん・・・・、そうだけど・・」


ここ二ヶ月程度、起こったことが非日常過ぎて、僕はまだ高校生だということを忘れていた。

それに、学園に戻りたいかと言われると特に戻りたいわけでは無かった。

クラスで虐められてたし。まぁ今が充実してるっていうのもあるけど。


「とりあえず、先生。立ち話もなんなので、家の中にどうぞ」


僕は少し暗くなり始めた辺りを気にしながら、家の鍵を開けた。


「ふぅ・・・・、じゃあ本題ですけど」


僕はレナが入れてくれた紅茶を一口飲んでから、話し始めた。


「ああ」


「正直に言うと、学園に戻る気はありません」


「えっ?! な、何で? もしかし学園は嫌か?」


「うーん、まぁ色々な理由はありますけど、今のこの生活が充実しているっていうのが一番ですかね」


僕は金級になってから、色んな仕事が増えた。ダンジョンの中だけじゃなくても、組合からの依頼など、忙しくなったのだった。そして、僕はそんな仕事にやりがいを感じてた。それに楽しかったし。


「まぁ、そう・・だよな。刻藤は今や金級の冒険者だし、最近はテレビとかでお前の名を見ない時は無いほどに有名だしな」


「恥ずかしいですけどね。でも、今更何で僕の復学を進めるんですか?」


「あんまりこういう話はしたく無いが、正直な所は大人の事情ってやつだ」


縞中先生は紅茶を飲んでため息を一つ吐いてそう言った。

まぁ、大方有名になった僕の名前が欲しいんだろうなぁとは思う。自分で言うのも何だけど僕は今、割りかし有名になった。だから、学園側としては、そんな人材を休学、いや退学ということにはしたく無いってところだろう。

縞中先生は僕をガツガツと勧誘しない辺り、そう言ったことにちゃんと配慮してるんだろう。


———行かないのか? 学校に。


僕が色々と考えていると、不意にレティアが話しかけてきた。


(「そうですね・・・・。今更行ったところでっていうのもありますし」)


———そうか。


(「それに、もうそろそろレティアを・・・・」)


そう言えば、僕はまだレティアにちゃんと聞いていなかった。どちらかと言えば、怖くて聞けずにいた。今までの僕ならレティアを助ける! って何も考えずに思っているところなんだろうけど、今はその気持ちが少し変化してきていた。妙な胸騒ぎがする。

本当にレティアを助けて良いのか? って考えるようになってきていた。僕自身、自分を救ってくれた恩人に対してそんなことを思うのは悪いとは思ってる。だけど、どうも今の僕はレティアを全面的に信じることが怖くなっている節があった。


———ああ、そのことか。私を助けるのはまだ無理だと思うぞ。


(「え? 何でですか?」)


———何って、そりゃあ力不足っていうところだな。


(「力不足・・ですか・・・・?」)


驕っているわけじゃ無いけれど、僕は格段に強くなった。それは自他共に。でも、レティアはそれでもまだ力不足と言った。僕はこの言葉に少し驚きを受けた。


———ああ。最低でもラウスト、いやあの鬼丙とかいう奴を倒せるほどじゃ無いとな。


(「陸・・・・ですか・・」)


———ああ。私がいるデッドエンドは特殊すぎるものだからな。レッドダンジョンのくせして、危険度はブラックダンジョン以上だ。もし、ランクをつけるとするならプラチナとでもいったところか。


(「そんなに、ですか」)


———ああ。だから、当分君が私を助けるのは無理だな。まぁ君のことだ。すぐにそのレベルを超えてくるんだろがな。


(「だと、良いんですけどね」)


「歩君、行かないの? てっきり即答で行くっていうと思ってたのに」


レティアと話していると、レナがそう言ってきた。


「何で、そう思ったの?」


「え、だって歩君は、高校三年なのに文化祭も、修学旅行もやってないじゃん」


「あー、うん。確かにそうだね」


「でしょ? だからそんな楽しいことがあるんだからてっきり行きますって言うと思ってたんだよ」


「いや、まぁ確かにそうだけど・・・・」


「それにさ、歩君。高校生って一度しかないじゃん? だからさ、冒険者として働くのも良いけど、高校生活を満喫するのも大事だよ?」


レナは微笑みながらそう言った。


「それもそうだけど・・・・」


「だから行っておいでよ、学校に。それに、高校は卒業しておいた方が何かと便利だしね」


「・・先生、少し考えても良いですか?」


「ああ、分かった。決まったら、連絡してくれ。まぁ、お前の担任としては、学校に来て欲しいとは思う。けど、一人の人間として言うなら、お前の判断に従うよ。誰が何と言おうと、これはお前自身の人生だしな」


そう言うと、先生は笑った。机に残されていた紅茶の残りを一息で飲むと、椅子から立ち上がった。そして、スーツの内ポケットから手帳とペンを取り出すと、連絡先を書いて僕に渡した。


「じゃあ、また連絡してくれ」


「はい」


先生は手をヒラヒラさせて、家から出ていった。


「良い先生だねー」


先生が行くのを見届けてから、レナが僕にそう言った。


「うん」


「さっきの先生も言ってたけど、私も歩君が決めたことに従うよ。だから、気楽に考えてねー」


「うん。ありがとう」


レナはそっと僕の頭を撫でた。そして、先生が飲んだ紅茶が入っていたコップを片付けてから、自室に戻って行った。

そして、僕はソファに深く腰掛けた。


「自分の人生か・・・・」


僕はソファの上で天井を見上げながら、目を閉じた。


それから、二日経った。

僕の家にはまた先生が来てくれていた。昨日、連絡を入れた所、明日家に向かうと言われた。先生は僕を特別視しているのかは分からないけれど、わざわざ来てくれてたのだった。


「もう、決まったんだよな? 刻藤」


「はい」


「じゃあ、答えを聞かせてもらって良いか?」


「はい。僕は、学園に行きます。また、よろしくお願いします」


「! 来てくれるのか?!」


「はい。あっでも、僕を特別扱いはしないで下さい。今までと同じように普通でお願いします」


「ああ、分かった。そういう風に伝えておくよ」


「ありがとうございます」


「・・・・言いたく無かったら良いんだが、どうして、心変わりしたんだ?」


「・・・・、そうですね・・。大した理由じゃ無いんですけど。やっぱり、普通の生活って良いじゃないですか。確かに、ダンジョンに行くのは楽しいけど、それ以上に、僕は普通にいることが性に合ってるんですかね」


「・・・・本質は変わらないものだねー。今じゃ歩君は有名人でお金もあって権力もあって力もある。それなのに、何も変わらないね」


「それって褒めてる?」


「褒めるてるんだよー。偉い子だね」


レナはそう言って、僕の頭を撫でて来た。


「子供扱いしないでよ」


僕は少し恥ずかしくなって、レナの手を払った。


「アハハハハハ!! そうか。分かったよ、刻藤。お前は優秀だな」


「何がですか?」


「立派だよ。君は。よし、分かった。じゃあ、刻藤、始業式の次の日からで良いからそこからはちゃんと学校に来てくれよ。色々渡すものもあるしな」


「分かりました」


「最後に、刻藤。俺はお前が学校に来てくれると言ってくれて嬉しいよ。目一杯学校生活を楽しんでくれよ!」


「はい!」


先生はスーツケースのような鞄の中から、夏休み後の予定などが書かれたプリントを二枚机の上に置いて、家を出て行った。


「ねぇ、レナ。僕は学校に行くけど、土日とかは一緒にダンジョンに行ってくれるよね?」


「もちろん! あー、でもノア君はどうだろう?」


「何で? どうかしたの?」


「ノア君も歩君と同じ年齢なんだけどさ。あの子は飛び級で大学に通ってるんだよ。で、休み過ぎて教授に捕まってるらしいんだよねー」


「え、そうなの? っていうか大学生?!」


「うん。ほら、ダンジョンで色々魔道具持ってたじゃん。あれも半分くらいはノア君が作ったやつだしね」


僕は思わぬ形でノアの凄さを改めて知ったのだった。

確かに、頭が良さそうだなー。とは思ってたけどまさか大学生とは。


「じゃあ、ノアは来れるか分からないってこと?」


「うん。まぁ、でも多分来てくれそうな気がするけどね」


「確かに、それはそうだね。とりあえず、このことはノアとか龍羽さんにも伝えておくよ」


「うん。それが良いよ」


そして、僕は学校が再開するまでの間に、ダンジョンや、師匠の所に行って修行をして、学校に戻って来たのだった。



「あーー、終わったーー」


チャイムが鳴って、午前中の授業がやっと全部終わった。僕はノートや教科書を片付けると、大きく伸びをしていた。

久しぶりに授業を受けた。久しぶりに受けた授業は案外面白かった。とは言え、五十分も机から身動きが取れないのは辛いけど。

僕は伸びをした後、リュックから弁当を取り出した。その弁当はレナが作ってくれたものだった。


「いただきま———」


「刻藤君!!」


僕が手を合わせて食べ始めようとした時、僕の名前が呼ばれた。


「どうかした? 白吹さん」


一旦箸を置いて振り返ると、クラスメートである白吹(しらふき) 茉莉(まつり)さんと、湊月(みつき) 紫苑(しおん)さんの姿があった。クラスメートとは言っても、僕はあんまり女子と話したことがあるわけじゃ無いから、特に接点があるわけでは無かった。


「あの、その・・・・、えっと・・・・」


「ほら、茉莉。ちゃんと言いなさいよ」


「う、うん。あの、と、刻藤君。無事だったんだね。本当に良かったよ」


「え? あ、うん。ありがとう」


「うん・・・・。えっと、じゃあ、それじゃあね・・・・」


「え? ちょっと、茉莉?!」


そう言うと、白吹さんは急いで教室を走り去って行った。


「悪いね、刻藤君。邪魔をしちゃって」


「いや、別に。大丈夫だよ」


「あの子も、君が無事で喜んでいるだけだから。もちろん、アタシも無事で良かったと思ってるよ」


「うん。ありがとう」


「それじゃ、アタシはあの子を探しに行ってくるよ」


湊月さんは白吹さんの跡を追うようにして、教室を飛び出して行った。嵐のようだった。

まぁ、朝に比べればマシなんだけど。

朝はひどかった。僕が学校に着くなり、色んな人から話しかけられた。クラスメートだけじゃなくて、この学園に通っている色んな人から話しかけられた。当然、僕とは面識がない人も多くいた。

まぁでも、今更って感じだった。


———君は、嬉しくないのか? 色んな人からチヤホヤされて。


(「嬉しくないことは無いですけど・・・・。なんか複雑な気持ちです」)


———まぁ確かに。そうだよな。全員が全員喜びだけで君に話しかけているわけじゃ無いしな。打算的な事を考えている奴は多いしな。


(「はい」)


———まぁ、気にしなさすぎるのも問題だが、気にし過ぎるのも問題だ。少しは、今くらいは、素直に喜んでいれば良いんじゃ無いか? 君は、それだけの事をしたんだしな。


(「そう・・・・ですね」)


「まーた、女の子に話しかけられてんのかよ。羨ましいな、歩」


(ひなた)。羨ましくはないだろ。お前は純粋な行為から女子に話しかけられてるじゃんか」


僕の前の席に座りながら、僕に話しかけて来た。目の前の男は、制服や下にパーカーを着て、紙パックの苺ミルクを飲んでいた。

この男は、(さざなみ) (ひなた)という名前の僕がこの学園でよく話す友達であった。まぁ、こいつ以外とは基本話さないんだけど。陽はクラスのカーストの上位にいる者だ。だから、男女問わず人気のある人物であった。


「それに比べて、僕は打算的なものでしか話しかけられてないし」


「は? お前・・・・、気づいて無いの?」


「何が?」


「さっきの・・・・。・・・・いや、これは俺が言う事じゃ無いか。はぁ、お前も悪い奴だな」


「だから何が?」


「おおっと、もう時間だ。俺は部活のミーティングがあるから。じゃあな〜」


「おい、逃げんな!」


陽を捕まえる前に陽は椅子から立ち上がって、教室から出て行った。


「僕、なんかしたっけ?」


———はぁ・・・・・・、君はそういうとこも変わってないな。


レティアが人知れずため息をつくのだった。

そして、打算的なものがあるにしろ、無いにしろ、基本的には僕に向ける感情は安心だとか、安堵だとかというものだった。けれど、全ての人がそうだというわけでは無い。少しは、僕に対して悪い感情を持つ人もいた。



「チッ・・・・! 気に入らねぇ。金級冒険者のおこぼれをもらったカスのくせに・・・・!」


「ねぇ、迅? また、今までみたいに痛い思いさせないといけないんじゃ無い?」


「・・・・そうだな。幸い、次の時間はダンジョン講座の実技だ。俺がアイツの化けの皮を剥がしてやるか!」


屋上でカップルと思われる男女はそんな事を計画していたのだった。



黄印学園 第二グラウンド


僕の通う黄印学園は、都内有数の広い敷地を持った学校であった。グラウンドは二つあるし、体育館は三つ。そのほかにも野球場など色んな施設が揃っているのだった。

そして、今僕たちは五時間目の授業であるダンジョン講座の実技をするために体操着に着替えてグラウンドに来ていたのだった。


「よし、集まったな!! 今日は、夏休み前に言っていたが、四人組を組んで二対二の模擬戦を行なってもらう! 負けても成績が落ちるわけでは無いから安心しろよー!」


大きな声でハキハキと喋っているのは蒼丸たちのクラスの担任であり、このダンジョン講座の先生を行なっている和旗(わはた) 雅牙(がが)という人だった。

確か、冒険者は引退してしまったけど、元銀級冒険者で今は先生をやっていると自己紹介の時に言っていた。

そう言えば、蒼丸はあの後、情状酌量の余地があると言い渡され、謹慎は解けた。けれど、賠償金だけは、払うと言って、減刑を拒否したらしい。それに、学校の退学も取り消しになった。蒼丸は真剣に罪を償おうとしていると、この前龍羽から聞いた。まぁ、元々の性格が戻ってきたと言った方が正しいんだろうけど。何はともあれ、蒼丸が罪をちゃんと償おうとしてくれていて僕は嬉しかった。


「よし、じゃあまずはペアを作ってくれ!!」


和旗先生がそう言った瞬間、僕の元に雪崩のように色んな人が詰め寄ってきた。


「刻藤君! 私と組まない?!」


「刻藤! 俺と組めよ!」


至る所で、刻藤コールが始まった。僕はこの状況に嬉しいよりも恥ずかしいが勝ってしまっていた。


「ほら、茉莉! 刻藤君を誘ってきなさいよ!」


「ええー、無理だよー。人がいっぱいいるんだもん」


「何でそんな消極的なの? 自分から行かないとまた後悔するよ?」


「そうだけどー! 緊張しちゃうんだもん」


白吹さんが人差し指を合わせながらモジモジしながらそう言った。


「チッ! 邪魔だ! どけ!!」


「きゃっ!!」


「ちょっと、新谷派(にやは)!! 何すんのよ!」


そんな中、その人混みを力づくで押し分けながら、僕の元へ向かってくる人物たちがいた。どうやら、仲間の勧誘では無さそうだった。

女子とぶつかり、口論になっていた。


「ああ?! そいつがドンクセェのが悪いんだろうが!」


「そうよ。あなたたちが鈍いのがいけないのよ?」


「はぁ?! あんたたちが力づくで入ってきたからでしょ?!」


「チッ、ウルセェなぁ。黙ってろよ、クソが」


「何ですって!? ぶつかってきたくせに謝りもしないどころか喧嘩売ってくるとか、意味がわからないんですけど?!」


「も、もう良いよ。紫苑ちゃん」


片方はさっき僕に話しかけて来た湊月さんだった。突き飛ばされた張本人である白吹さんが湊月さんを止めていた。もう片方は、僕が蒼丸以上に会いたく無い人物たちであった。その二人は、僕がまだちゃんと学校に通っていた時に、毎日僕のことを虐めていた奴らだった。

二人は今にも戦いになる勢いだった。


「おい、お前たち、何をしてるんだ!」


その時仲裁をするように和旗先生が走って来た。


「チッ、今日はお前らに用はねぇ。消えろ」


「はぁ?!」


和旗先生が来ると、その男、新谷派(にやは) (じん)は再び僕へ向かって歩き出した。

そして、僕の目の前まで来たのだった。


「なぁ刻藤。俺たちと戦えよ。まさか、あの金級様が断ることなんてしねぇよなぁ?」


「・・・・分かった」


「決定だ!! 俺が金級様の化けの皮を剥がしてやるよ!! あと一人選んで、早く来いよ? まぁ、仲間になってくれる奴がいればの話だけどなぁ?」


新谷派が言うように、さっきまでの刻藤コールが消えた。みんな、新谷派の事を恐れているのだった。その恐れは新谷派の力だけじゃ無い。新谷派の親はあの市山財閥の幹部であった。だから、新谷派が何かしても、教師もあまり強く言えない権力もあるのだった。それに、ここには陽もいない。

しょうがない。一人でやるしかないか。


「あ、あの。と、と、刻藤君。わ、私と組むのは嫌・・・・かな?」


そんな中、一人手を上げた人がいた。さっき新谷派に突き飛ばされていた白吹さんであった。


「ああ?! テメェ・・・・!」


新谷派がすぐに白吹さんのを睨みつけた。


「! うん、こちらこそお願いします。白吹さん」


僕は新谷派の前から一瞬で白吹さんの元へと移動した。そして、白吹さんの前に立って新谷派に身体を向き直した。


「新谷派、勝負をすれば良いんだろ?」


「ああ! 早速やろうぜ?!」


「・・・・分かった」


そう言うと、新谷派は彼女である八木田 絵梨花を連れてグラウンドの中心にある決闘場へと向かって行った。


「ごめん、白吹さん! こんなことに巻き込んで・・」


「い、良いんだよ。刻藤君。私が言い出したことだし・・・・。む、むしろ迷惑じゃ無かった・・?」


「とんでもない! ありがたいよ、白吹さん!」


「刻藤君。茉莉の事をお願いね」


「うん。絶対に守るから」


「! 、、、、」


白吹さんはそう言われて俯いてしまった。顔が耳まで赤くなっていた。

あれ、ひょっとして僕、変なこと言った?


———はっ、たらしめ。


レティアが鼻で笑うようにしてそう言った。


「まっ、まぁ、そうしてくれるとありがたいよ」


フォローをするようにして湊月さんがそう言った。


「じゃあ行こっか。白吹さん」


「あっ、あの・・・・、ま、茉莉って呼んでください」


「えっ、ああ・・・・、うん。分かったよ。白・・、茉莉さん」


「刻藤、武器はあるか? 真剣ならあるんですけど、ダメですよね?」


僕はズボンに入れていた指輪を右手に嵌めた。右手に嵌めて、左手をかざすと鬼月が僕の目の前に現れた。

この指輪は雅国さんが新しく作ってくれたもので、指輪型の異空鞄であった。けれど、鞄とは違って指輪は容量が少ない。だからこの指輪には、鬼月一本しか入らないけれど。


「! ああ、そうだな。流石に真剣はな・・・・」


「まぁですよね。じゃあ、木刀を貸してもらって良いですか?」


「ああ、分かった。くれぐれも、相手を殺したりはしないでくれよ」


「分かってます」


和旗先生はそう言って、僕に木刀を手渡した。


「茉莉さんは? 武器はある?」


「わ、私の能力は障壁(ザ・バリアー)っていうものだから、武器は持たない・・・・。ご、ごめんね、役立たずで・・・・」


「そんな事ないよ! 障壁ってことは、防御ができるってことでしょ? 良い能力だよ!」


「! ・・うん、ありがとう。せめて、足を引っ張らないようにするから・・・・!」


「大丈夫だよ。そんなに緊張しなくても」


そして、僕たちもまた、新谷派たちが待つ決闘場へと向かうのであった。



次回の更新は土曜日までに行います。


やっと第三章が開幕です!! と言うことで、第三章は学園の話から始まります。ここから、色んなことに起こっていきます。また、歩たちが振り回されますね。

ちなみに、歩たちトリックスターは、色んなメディアに取り上げられてます。主に歩が。

トリックスターに入りたいという人が急増したり、歩たちがテレビに出ることになったりっていう話は書けそうだったらいずれ幕間で書きます。

あと、ノアは大学でモテモテになってます。兄のレオが聞いたら嘆くでしょうね。


ということで、第三章もお付き合いください!

面白かったら高評価の方お願い致します。感想やコメントなどもお待ちしてますのでよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ