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六十九話 決着へ

「congratulation !! よくその答えに辿り着いたな。歩」


僕が自分の胸に手を当てて能力を使った瞬間、その言葉をかけられた。前を向くと、そこはダンジョンでは無かった。真っ白いなにもない部屋だった。少し眩しいくらい光が強かった。


「え?! ここは・・??」


パチパチと手を叩きながら誰かが近づいて来ていた。


「なに。心配するな。ここは外界とは隔絶された場所だ。ここにいる間は時間は止まっているから安心しろ」


「あなたは? いや、どこかで・・・・」


「あー、そうか。正規のルートで会うのは初めてだったな」


その人は初めて会うはずなのに、以前どこかで会ったことがあるような気がした。


「今回は俺のことを教えられるな。俺の名は刻帝(クロノス)覇王(ワールド)。つまり、お前の中に眠る能力だ」


そう言った人物は全身白い身体をしていた。髪も瞳も肌も服も全て真っ白の人物だった。その人の声は妙に優しく、聞いていて心が安らぐような声色だった。


「覇王・・・・?」


「そうだ。気軽にハオさんとでも呼んでくれ」


ハオさんは手をひらひらさせながら、軽い調子でそう言った。


「ちょっと待って、何が何だか・・・・。それに、僕の中に眠るってどういうことですか?」


「そのままの意味だが? ん? まさかお前異能力のことを一つも知らないのか?」


「・・・・?」


「分かってない顔だな。はぁー、じゃあ教えてやろうか。異能力について」


ハオさんは自分の顔に手を置いて少し考えるようにした後、僕へと話し始めた。


「まず、異能力が何かというところからだ。異能力っていうのは読んで字の如く普通の能力とは異なったものという意味だ」


「でも、それは悪い意味での異なっているってことじゃ・・・・?」


「違う。断じて違う。異能力はその特異性故に本来の能力に制限が掛かっているものだ。つまり、異能力は隠された能力という訳だ」


「隠された・・?」


「ああ。お前も覚えがあるだろう? ある日を境に能力が進化したことを」


僕の脳裏にレティアと初めて会った時のことが呼び起こされた。僕が無能ではなくなった日のことを。


「ここまでは理解したな?」


「はい」


「よし。なら次だ。じゃあなぜ異能力という制限がついた能力がこの世にあると思う?」


ハオさんはそう言って僕に問いかけるようにして指を僕へと指した。


「・・・・、先天的な欠陥みたいなことですか?」


「残念、違うな。答えは、異能力というものはこの世界の()()()()()を持つものだからだ」


「? ・・どういうことですか?」


「言葉の通り。この世界の理を一から否定することができる能力ということだ。そして、それはつまり神をも殺す事ができるゴッドスレイヤーの資格があるということだ。そして、そういった者を()()と呼ぶ」


「この封印が?!」


「正確に言えば封印では無いんだがな。まぁ、異能力というのはそういうものだ」


「何が何やら・・」


「まぁ、今はそれを完璧に知る必要は無い。だがな、一つ覚えておけ、歩。異能力を持つ人間は普通の人生は絶対に送れない。それは100%だ。例外は無い」


「どういうことですか?」


「考えてみろ。理を破壊する能力を持っているのに、代償が無いわけが無いだろう? 何かを手に入れるためにはそれと同価値のものを支払う。等価交換というものだ。だから肝に銘じておけ。刻藤 歩。お前は人並みの人生を送ることは不可能だ」


「!・・・・・・。その道を歩んだら、僕は大勢をの人を助けることに繋がりますか?」


「ああ。それに関しては間違いない。その使命を全うできるのならお前はお前自身以外の多くの人を助けることになるだろうな」


「なら良いです。それなら僕はその道を喜んで進みますよ」


「! ・・ハハハハ!! 馬鹿な奴だな! だがその気持ちは嫌いじゃない。俺を所有しているのがお前で良かったと思うよ」


ハオさんはそう言って高らかに笑った。一点の曇りもない笑顔だった。そして、腕を伸ばして僕の頭をガシガシと撫でた。


「それで、なんで僕はここにいるんですか?」


「ああ、そうだった。お前は今日一つ進化を果たした。それも、今までとは違う。解釈の違いによる進化を」


頭から手を離してハオさんがそう言った。


「解釈の違い?」


「すまないがこれ以上俺からは何も言えない。ただ、お前は今までよりも強くなった。そう思っておけ」


「! 分かりました」


「それで良い。・・・・、歩。諦めるなよ。どんな時でも」


「はい!」


「よし。おっと、もう時間のようだな。ちゃんと勝って来い歩!」


ハオさんがそう言うように、心なしかこの部屋の光が強まっているように思った。


「はい!!」


僕は力強く、ハオさんの顔を見てそう叫んだ。


「ああ、それともう一つ。お前がどう思っているかは知らないが()()()()()()()()()()を信用しすぎるな」


ハオさんがやけに真剣な眼差しでそう言い放った。


「え? ちょっと待って、それって———」


僕がハオさんにそう言いかけた瞬間、視界がぼやけた。そして、一瞬で視界が暗転した。


「今更何かをしたところで何も変わらない!終わりだ、刻藤!!」


ラウストの声が響いた。そして、ラウストの刃が僕の首に迫っていた。ラウストに躊躇いは無かった。僕へと刃が振り下ろされた。


「なあっ———!!」


けれど、その刃が僕の首を跳ね飛ばすことはなかった。首が両断されなかったからというわけじゃない。首は薄皮に至るまで斬れてはいなかった。

むしろ振ったラウストの刃が真っ二つに折れていた。ラウストの折れた剣が宙を待って地面に落ちた。


「これは一体・・?!」


僕はゆらりと身体を動かした。ラウストはその僕の動きを警戒したのか剣を手放してすぐさまその場から離れた。

ハオさんの言葉が頭をよぎる。けれど、今はそんなことを考えている暇は無い。僕は頭を切り替えた。力なく垂れ下がっていた左腕を右手でそっと触った。新しい力の使い方がよく分かった。

僕が新しく得た力は自分自身に封印を施すということ。今まで生きているものは自分も含めて封印は使えないと思っていた。だけど、違った。封印は生きているものにも有効だった。僕に足りなかったのは想像力と理解だった。僕は今初めて封印のことをちゃんと知ったんだと思う。


「封印:保管(キープ)


僕はさっきラウストによって斬られた場所に封印を施した。斬られて出血していた場所から血が止まった。そして、その傷口が少しずつ閉じていった。


「どういうことだ? お前、一体?!」


「決着をつけよう。ラウスト!」


「チッ!」


ラウストはまだ僕へ向かって飛んできていなかった様々な武器を僕に飛ばさずに一点に集中させた。そして、合わさった武器が溶け合い、混ざり合って一本の大剣へと形を変えた。ラウストはその剣を掴むと、僕へと構えた。


「何をしたのかはよく分からんが、決着をつけることには同意だ!」


ラウストがそう叫んだ。


「封印:自転選択(セレクトマイセルフ)鉄血(ブリード・クロガネ)


僕は心臓の位置に手を置いた。そしてその瞬間、ドクンと心臓が脈打ち、僕の身体を何かがほとばしっていった。お面の下の僕の目が黒から薄い鮮やかな青のような色に変わった。地面に落とした鬼月を拾い上げて僕はラウストに構えた。

示し合わせた訳でもなく、僕たちは同時に動き始めた。

鬼月と大剣が当たりあった。ラウストは理由は分からないけれど、さっきよりも力が落ちていた。

一方、僕はラウストに力負けすることはなく、ラウストを少しずつ押していった。


「グッ・・・!!」


「終わりだ!!」


僕はラウストの大剣を弾き飛ばした。流れるように僕はラウストの腹を蹴り飛ばした。ラウストは後ろによろめいていった。


「これで、決着だ!!」


「俺を舐めるなァァァァァァァア!!!!!!」


ラウストが激昂した。今まで叫ぶそぶりなぞ見せなかったラウストがそう叫んだ。


「混酸の繭」


ラウストが手を広げた瞬間、僕を取り囲むようにして糸状のものが現れた。それはまるで蚕が繭を作るように僕を中に閉じ込めた。


「爆ぜろ!!」


僕を取り囲んだ瞬間その蚕の中が爆発した。閉じ込められた空間の中で爆発はその中にいた者を焼き尽くすほどの威力だった。確かにそんなものが直撃したら人が耐えられる道理はない。それに以前の僕ならこれで間違いなく死んでいた。

けれど、今は違う。僕は新たな力を得ていた。

繭が熱によって溶けていった。そして、その中には無傷の僕の姿があった。流石に黒い服はその熱に耐え切れず所々破れていた。けれど、僕自身に傷はなかった。

ラウストはそんなことを予測していたのか、繭が溶けるのと同時に走り出していた。


「死ね、刻藤!!!!!!!!!!」


そして、僕もまた、既に鬼月を構えていた。


「柳生新陰流 六式 龍巣!!」


龍巣の斬撃とラウストの大剣が当たりあった。結果は明白だった。ラウストの大剣が粉々に砕かれた。


「くっ———!」


ラウストは最後の悪あがきをするように僕へ腕を伸ばした。そして、その先から先の尖ったものが造られ始めた。けれど、ラウストはそれを途中でやめた。それを作ることなく自分から腕を広げた。まるで斬れと言うかのように。


「ァァァァァァァア!!!!!!」


僕はその無防備なラウストの身体を斜め下に袈裟斬りのように斜めに斬った。


「ガハッッ・・・・!!」


ラウストの身体が後ろに飛んだ。深々と胴体を斬りつけられたラウストは重力に従って地面に背中から倒れた。白かった白衣が赤い血で染まっていった。


「ゴホッ・・。俺の敗けか・・・・」


「テメェの敗けだ。テメェなんで最後攻撃をやめた?」


「・・・・みっともなく足掻きたく無かっただけだ」


口から血を吐き出しながらラウストはそう言った。


「ゲホ・・・・、俺を倒したお前に教えてやる」


「今更何をだ」


「敵についてだ。お前の、お前たちの敵は無銘教(むめいきょう)というものだ。気をつけろ。無銘教は———」


———無銘教・・・・!


レティアから激しい怒りのような感情が伝わってきた。レティアからここまで強い感情が感じられたのは初めてのことだった。

そして次の瞬間だった。ラウストの胸に剣が突き刺さった。


「喋りすぎだ。大人しく死んでおけ」


ラウストの胸から深々と刺さった剣を抜き取ると血をはらって鞘に納めていた。その男は鬼丙 陸だった。顔や腕に火傷がついていた。


「ガハッッ・・・・!」


ラウストは口から血を撒き散らした。一度身体が跳ねるとそれ以降ラウストは動かなかった。


「なっ!! 待て、陸!」


一度だけ僕を見て踵を返した陸へ向かって叫んだ。陸はゆっくりと振り返って僕の方を見た。


「・・・・なんだ?」


「お前、まさかレナたちを!!」


「さぁな。俺は今お前と戦う気は無い。いずれ会う日までせいぜい足掻いていろ」


「待て!!」


僕が陸へと走り出そうとした時、陸の姿は一瞬にして消え去った。まるで元から存在していなかったかのようにこの場から消えた。


「クソッ!!」


「・・・・、刻藤・・歩。ゴホッ・・! お前・・の敵・・は、神だ・・。気をつけろ・・!」


ラウストが小さくそう言った。最後の足掻きをしないと言っていたラウストが最後の力を振り絞るようにして僕にそう伝えた。


「神・・・・? どういうことだ、ラウスト。お前は何を知っている?」


僕はそうラウストに聞いた。けれど、多分もうラウストは僕の声が聞こえていなかったんだと思う。返事はなかった。ハイライトが薄くなった瞳が虚空をただ見つめていた。


「・・・・、エイナ・・・・。やっと・・君に・・」


僕には何も見えなかった。けれど、ラウストの目にははっきりと姿が見えていた。かつて、自分が愛し、何よりも大切に思っていた女性のことを。

それが最後の言葉だった。ラウストは涙をこぼしながらそう言った。震えながら上へ伸ばしていた腕が力無く落ちた。

その直後、ダンジョンに激しい揺れが起こった。


———歩、ダンジョンが壊れるぞ


(「分かってます」)


また脳裏にハオさんの言葉がよぎった。そして、ハオさんの言葉を僕は力強く否定することもまた出来ずにいた。現にレティアに僕は少しの不信を抱いてしまっていた。

僕はダンジョンが崩壊する前に急いで走った。そして、拓義さんの首だけを拾った。ノアがいれば全身を拾えたけれど、僕の異空鞄だと頭だけが限界だった。そして、ダンジョンが崩壊した。目の前が強い光に包まれた。何度も経験をして僕はもう慣れていた。瞬きをする間に僕は地上へと戻ってきていた。



十分前


レナと陸がぶつかり合っていた。激しい熱気がその部屋を占めていた。


「どうした?! 大口叩いた割にその程度か?! 鬼丙 陸!!」


レナが休む暇もなく連撃を繰り出し続けていた。そして、その連撃は少しずつ陸を追い詰めていた。


二点集中連弾撃ち(ダブル):ガトリングチェック」


陸は纏っていた炎の大部分を攻撃に回していた。陸の武装は攻撃、防御どちらかにしか使えない。だから、レナが防御の炎を無視して攻撃してくる以上、その炎は攻撃に使うしか無かった。けれど、逆に言えば攻撃は強くなる分、防御は弱くなる。そして、身に纏う炎が無い今、華の弾丸は陸の身体を捉える事が可能だった。


「くっ・・! !!猛焔乱斬(フレイム・ヒート)


陸は向かってくる弾丸だけでなく、全方位に斬撃を放った。全方位ということはレナを回復させるために前に出ていたノアにまで狙いがつけられていた。

だから、レナは一度陸から離れてノアを守った。

熱を受け続けた籠手は段々と赤みを帯びてきていた。


「そんなもんか? 鬼丙 陸!」


「良いだろう。俺も本気で相手をしてやる。身体付加:魔剣超武装(リグ・ヴェーダ)焔神(アグニ)


強かった炎がさらに強さを増した。圧倒的なまでの熱をその身に纏っていた。熱いなんてものじゃ無かった。空気が一瞬で乾燥していく。炎が身体から出ているわけじゃ無かった。けれど、皮膚に熱を凝縮しているのかその部分に蜃気楼が出来ていた。触られたら身体が灼ける。いや溶けるかもしれない。


「レナさん、アレは僕でも治せませんよ・・!」


「ヤバいね、これは・・!」


「燃え尽きろ———!」


陸が熱を全身に纏って走り出した。その瞬間、陸の身体が地に伏した。


「なっ・・!?」


物理干渉(リアル・ブレイク):重力増加(グラビティ・タイム)


「これは・・!」


錘がついたように急に身体が重くなった陸がゆっくりと立ち上がった。そして、近くにはさっきまで一番後ろにいて現実を受け止めきれていなかったはずの存在がいた。


「蒼丸・・!」


「陸、もう俺には何がなんなのか分からないよ。でも、やっと自覚した。俺は罪を償う。そのためにお前を俺は全力で止める!」


「今更、何をしたところで過ちを無かったことには出来ない!」


「そんなのは分かってる! 過去は変えられない。だから、俺は未来を変える!」


「腰を抜かして見ていれば良いものを・・!!」


陸は完全に立ち上がると、蒼丸へと歩き始めた。けれど、途中でその足を止めた。


「・・・・。チッ、もう時間か・・。ラウストのやつ失敗したのか」


「何を言ってんだ!」


「今回はここで終わりだ。だが、次は必ずお前たちを殺す・・! 蒼丸、お前もだ・・!!」


スイッチが切れたように陸が身に纏っていた熱が消えた。それと同時に灼けるような暑さも消えた。よく見ると、熱を消した陸の身体には小さく火傷のようなものが数箇所あった。


「待て! 陸!!」


「逃がさないっス! 強化散弾撃ち(レインフォース):バスターショット!」


蒼丸が陸へ走り出した。それと同時に華が陸を撃った。けれどその弾丸は陸には当たらなかった。陸に当たる前に陸の姿がこの場から消え去った。奥多摩ダンジョンの時のようにまた消え去った。

華の弾丸が陸のいたその空間を虚しく通り過ぎた。


「前と同じように消え去った・・・・。アレは一体?」


「クソッ! 逃げられたっス!!」


華がそう言って、地面にまだ手の中に握られていた弾丸を投げつけた。


「・・・・陸・・」


「西倉 蒼丸。君が歩君にしたことは忘れないけれど、さっきは助かった」


陸がいた場所で蒼丸は呆然と立ち尽くしていた。レナが能力の反動で少しよろめきながら蒼丸の元へと歩いて、そう言った。。


「・・・・いえ。感謝には及ばないです」


「レナさん、出口が見つからないです! このままじゃ、歩を見つけられない!」


ノアが焦ったようにそう叫んだ。その時、階層に強い揺れが生じた。


「これは・・・・!」


「ダンジョンが崩壊する?!」


揺れは段々と強まってきていた。そして、激しい揺れと共に身体が光に包まれていった。


「全員、気をつけて!」


そして、光が視界を埋め尽くした。目を開けると、そこは地上だった。太陽が空高く昇っていた。日差しが地面を照らしていた。そして、目の前には入り口が壊れて崩れたダンジョンの姿があった。

そして、少し離れた場所には立ち尽くしていた僕の姿があった。


「歩君!!」


真っ先に気づいたレナがそう叫んで僕の元へ走り出したのだった。


誰も知らない、世界の境界線で迷える魂が一つ漂っていた。


「ここはどこだ? 俺は死んだはずでは・・?」


その魂は辺りを見渡した。辺りは暗く、目の前には何があるかさえ何も分からないほどだった。

その魂は何も考えずに正面だと思われる場所を進んでいった。


「ラウスト」


その魂の名を呼ぶ声があった。


「! ・・その声は、エイナか?」


ラウストはその声のする方へと走った。進んでいくと、道が出来ていった。真っ暗な世界に光が灯り始めた。そして、やっとラウストはその女性と出会ったのだった。


「ええ。久しぶりね。ラウスト」


白いワンピースを着た女性がそこには立っていた。透き通るような白い肌をした手を振っていた。辺りはいつのまにか真っ暗な世界から二人が初めて出会った美しい花畑に姿を変えていた。


「エイナ・・! エイナ!!」


ラウストは駆け出した。ラウストの服は白衣ではなくなっていた。彼が昔着ていた服に変わっていた。


「私のことを忘れてって言ったのに・・」


その女性は少し困ったようにして、走ってきたラウストを受け止めた。二人はその存在を確かめるように抱き合った。


「忘れるわけが無いだろう! 俺は・・、私は!! 君を愛していた!」


「・・・・でも、嬉しかった。私を忘れないでいてくれて」


「そんなこと、当たり前じゃないか!」


「貴方を置いていってごめんなさい」


「良いんだ・・、良いんだ。私は君とこうしてまた会えた」


「うん。私も貴方とまた会えて嬉しいわ」


「だけど、ここでお別れだ。私は、君と別れてから罪を犯しすぎた。もう、君の隣を一緒に歩いて良い人間じゃないんだ」


そう言うと、ラウストはその女性から離れた。そして、ラウストは振り返ると、背中側に続いていた真っ暗な世界を見た。


「何を言ってるの? 私も貴方と一緒に行くわよ?」


首を傾げてそう言った。


「ダメだ、エイナ! これを君に背負わせるわけには。君は悪いことなんてしていないのに・・!」


ラウストは慌てて振りいてそう叫んだ。けれど、それに構わずその女性は続けた。手をブンブンさせながら少し怒ったように頬を膨らませていた。


「もうっ! 貴方は私の夫でしょう? 夫婦なんだから、嬉しいことも、悪いことも、罪も私に分けてよ。それとも、貴方は私といるのは嫌?」


「そんなわけが無いだろう!」


「そう。なら、もう言うことは無いわね。さぁ行きましょう? ラウスト」


すぐに笑顔を取り戻してラウストの手を取った。

その女性はラウストの背中に飛びついた。無邪気に笑ってラウストにおんぶをされるようにくっついた。


「エイナ・・! すまない、すまない・・!!」


ラウストの瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。おんぶされたその女性がラウストを慰めるように頭を優しく撫でた。


「良いのよ、ラウスト。さぁ行きましょう?」


「ああ・・・・。行こうか、エイナ」


そして、二人は暗い道を二人で歩いていった。少しずつ光から離れて、光の届かない場所へと二人は進んでいった。けれど、二人に恐怖は無かった。二人は一歩ずつ歩いていった。


「君は、怖く無いか?」


「全然。だって貴方がいるもの」


「そうか。私もだよ。愛しているよ、エイナ」


「私もよ。ラウスト」


二人は笑い合った。そして、二人は真っ暗な世界を歩いていくのだった。二人を待つのは過酷なものであることは確かだった。けれど、その闇の中でも二人は進むのであった。




更新が少し遅くなりました。次回は月曜日に行います。

今回で二章の戦いに関しては終わりです。次回で二章は終了になると思います。二章が終わり次第、ラウストの過去などは書いていくと思います。

本編の補足です。

歩の能力の進化として、自分自身に封印の付加が可能になりました。今まで、生きているものに封印が出来なかったと思われてましたが、実際には人間などの生物に封印をする際はより正確なイメージが必要でした。例えば、人間の中の血管に封印を施すなどの細かいイメージが必要だったため、今までは使えませんでした。

ちょっと複雑な書き方をしてすみませんでした。


面白かったら高評価の方お願い致します。感想やコメントなどもお待ちしてますのでよろしくお願いします!

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