表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

64/104

六十一話 奴

レナは超高速で奴へと襲いかかった。雷姫を気にすることなく、雷の鎧へ突っ込んでいく。


「さぁ、ちゃんと受け止めろよ!!」


奴も流石にそれはまずいと感じたのか、刀でレナの籠手をつけた拳を止めた。

レナの拳と奴の刀が鍔迫り合いのような状態になった。レナの拳と、奴の刀が激しくぶつかり合う。

レナに雷姫を何とかする方法はあるとは言ったけれど、それはだいぶ危険な上に、少し手間がかかるものであった。

僕は接近する途中で、砂を握った。そして、奴の背後から接近した。


「柳生新陰流 四式 冥突」


僕は、電気の装甲を一点を目掛けて、鬼月で突いた。けれど、全くもって、ダメージになっている気配は無かった。それどころか、一点集中していても、生身に届く気配すら無かった。

奴は、僕の攻撃は意に介していないようだった。けれど、今はその油断は僕にとってありがたかった。


「アハハハ!!!!!! もっと撃ってこいよ!!」


レナが狂ったように叫びながら、奴に打撃を繰り出していく。

前にレナに聞いたけれど、レナの今の状態は、二年前からだいぶ進化したらしい。全てにおいて二年前よりも遥かに能力が向上したらしい。けれど、ただ一点だけ、過度の能力の使用によって、レナの脳のにも重い負担がかかる。そのため、脳内では急速に脳内物質が生成され、性格が変わってしまうらしい。今のようないつもからは想像できないような戦闘狂へと変わってしまうらしかった。

レナが奴のヘイトを買い続けているうちに尚も僕は攻撃を当てていく。


「柳生新陰流 複式 神爪」


師匠との修行で習得した新しい合成技であった。二式の新作と、五式の虎爪を合わせたもので、高められた速さと威力は至近距離から打てば、巨大な岩石さえも粉々に出来るほどの威力が出せた。奴の腰へ至近距離で叩き込んだ。

けれど、奴の身体に傷は無かった。僕の斬撃は鎧によってその動きを止めた。雷姫の硬度は僕が思っていたよりもずっと上であった。


「これでも無理か・・・・」


「歩! まだいけるよな?!! もっと攻撃をくらわせろ!!」


奴と撃ち合いながら、レナは僕へと叫んだ。


「分かってるよ! フッーー、、柳生新陰流 複式 冥龍」


地面を思いきり踏み込んで、奴へと急接近する。踏み込んだ地面の砂がその衝撃で舞い上がった。目から血が出るほどにその目は充血した。師匠と修行して得た三つ目の合成技であった。通常、あらゆる方向に繰り出す龍巣を対象のある一点のみに斬撃を集中させることで、周りの被害を極端に減らし、なおかつ龍巣の威力を数倍に引き上げるものであった。

しかし、その渾身の一撃は奴に触れることさえ叶わなかった。


「なっ!! ぐっッッッ!!!!!!」


奴は打撃を繰り出し続けていたレナの腹へと鋭い蹴りをくらわせた。そして、一瞬動きが鈍ったレナの頬を電気を纏った拳で殴りつけた。レナは血を吐きながら、吹き飛んだ。

そして、奴はまるでそれを待っていたかのように、僕へと振り返った。


「しまっ、、」


そう思った瞬間、僕の身体は吹き飛ばされていた。顔面に鈍い痛みが広がっていく。砂の上を何度も転がり、止まると僕の視界は穴の空いた天井を捉えた。背中には砂の感触だけがあった。右手に刀は握られていなかった。


「ぐぅっっっ・・・・・・!!!!」


砂を引っ掻くようにしながら、立ちあがろうとした。けれど、その前に奴が僕へと接近した。そして、立ちあがろうとしていた僕の右腕を思いきり踏みつけた。骨が折れた音がした。その証拠に腕から痛みとそれに伴う熱さが広がった。踏まれた右の前腕が青紫色に変色していた。そして、奴の足から電流が流れ、それは僕に感電した。


「ぐああああああ!!!!」


腕を折られた痛みと、肌が焼けるような痛みが同時に襲いかかってきた。

そして、奴は電気を纏わせた右腕で僕の首を掴んで宙へ持ち上げた。持ち上げられて辺りが見えた。吹き飛ばされたレナは動いてはいるけれど、まだ立ち上がれていなかった。


「があっっ・・・・、、、」


首の肌が徐々に焼け爛れ始めた。首を強く締め上げているのも相まって息がし辛くなっていた。少しずつ酸素が足りなくなり始めていた。

悪あがきをするように、僕は奴へと左拳で殴った。けれど、そんな身体のか弱いパンチが奴にダメージを与えることなどは出来るはずもなかった。


「ゴホッっ!! グゥっ、レナ、今だ・・・・!!」


けれど、そのパンチは奴の強靭な装甲に不具合を起こした。見て分かるほどに、奴の電気の装甲が薄く、脆くなっていた。所々に電気が消えているような場所すらもあった。僕は精一杯息を吸い込んで、叫んだ。

そして、奴が気づくよりも前に、レナが口から血を吐き出しながら、奴のガラ空きの背後に接近していた。


「アアアアアッッッ!!!!!!」


レナは雷姫の上から重い渾身の一撃を放った。奴は僕の首を離すと、今度は奴が砂の上を転がった。

身体に纏っていた電気が弱まり、そして、鎧は消えた。


「ごほっ、ゴホッっ、ゴホっ・・・・!!」


地面へ落ちた僕は右腕を抑えながら、激しく咳をした。


「歩君、大丈夫?」


もう既にさっきの状態を解いたレナが僕へと駆け寄った。


「レナこそ・・、大丈夫なの・・?」


「私はお腹を蹴られたくらいだし。骨とかは折れてないから」


レナは口元の血を拭いながら、そう言った。


「歩、今治す!」


透明化を解いてノアがすぐさま治療を開始した。首の焼き爛れのようなものは比較的にすぐ治ったけれど、骨折は少し時間がかかった。

ノアの言っていた回復速度の鈍化を実感した。


「歩君、どうやって雷姫を消したの?」


「ああ、それね。攻撃するたびに砂を封印で固めたものを鎧の中にずっと入れ続けてたんだよ。鎧だけど、電気で出来てるんなら、それを阻害するものを入れればいいんじゃないかなぁって思って」


「なるほどね」


「良かったよ。ちゃんと効果があってさ。あれで鎧が消えなかったら、本当にお手上げ状態だったし」


そう言って、僕は今だ砂の上にうつ伏せている奴へと視線をやった。


「あれで倒せたの? レナ」


「手応え的にはだいぶ良いのが入ったと思うよ。一撃で死んではないとは思うけど、動けないくらいのダメージにはなってると思うよ」


「それにしても、やっぱりあれって・・・・」


「ノア、その話は後にしよう。まずは、奴がどうなったのか確認しないと」


青紫色に変色していた腕が元の肌色に戻って、痛みが引いてきた。変形した右腕が元の直線へと形を戻した。

ノアの治療を終わらせると、僕は立ち上がった。そして、ゆっくりと、吹き飛ばされた奴へと近づいていく。

その瞬間大気に濃密な、呼吸を行うことすら辛くなる鉛のような重いプレッシャーが広がった。


「ハァ・・、はあ・・、なんだ、これ・・・・」


「やばい、これはまずい」


砂の上にうつ伏せで倒れていた奴の背中が急に盛り上がった。そして、背中から一対の大きな翼が出現した。薄い紫色の翼をはためかせ、身体を起き上がらせた。そして、奴の身体に起こった変化は翼だけではなかった。

奴の腕に、鱗が現れ始めた。そして、何より頭に二本の角が生え牙が生えた。縦に長くなった瞳孔が赤く光っていた。その姿は人間では無く、龍人のような姿であった。そして、その身体に傷は一つとしてついていなかった。


「嘘だろ・・、あんなのって・・!!」


「ノア君、早く逃げて」


「・・・・・・・・龍化:雷龍」


ノアがレナに言われてすぐさま透明化をした直後、奴は独り言を言うようにそう言った。


「龍化?! 今、龍って言った?!」


「歩君にもそう聞こえたかぁ。どうやら幻聴って訳じゃなさそうだね」


奴の放つプレッシャーはさっきまでとは比べ物にならないほどに重かった。正面から受けているだけなのにそのプレッシャーは僕たちの身体に重りをつけた。


「やばい、レナ。震えが・・・・、止まんない・・!!」


「奇遇だね、私もだよ」


しかし、どんなに恐怖を抱いていても戦うしかなかった。

鬼月を握る手が震える。レナの腕も少し震えていた。脳が、本能が、僕の身体全てが目の前にいる奴へ警報を発し続けている。


「・・・・・・雷弓、魔雷装填」


奴は突然右手を前に突き出した。そして、何もなかったその空間に紫色の巨大な弓を創り出した。そして、いつのまにか右手に握られていた矢のような、槍のような電気をその弓にあてがった。その圧倒的なエネルギーは奴の立っている砂が巻き起こり、発せられる電気によって地面に穴が空くほどであった。


「・・・・、消えロ。雷弓・纏龍の魔雷(デス・ライトニング)


次の瞬間、その弓からエネルギーの塊が撃ち出された。それは矢でも槍でもない、もはやミサイルと同等の衝撃と速度を持って僕たちへ突き進んでいく。


「封印!!!!!!」


僕は咄嗟に空気を固めて壁のように何枚も出現させた。けれど、そんなもので威力が落ちることなどは無かった。ミサイルを紙で受け止めるなんてどだい無理な話であった。

レナと僕は、音速を超えた速さで向かいくるそれに絶望する。

———そんなことは無かった。身体は考えるよりも先に反射で動いた。僕たちは避けるのでは無く、むしろ前に出て迎撃をした。

レナの拳と僕の鬼月が迫り来るエネルギーの塊へ直撃した。身体が吹き飛ばされるほどの風圧が僕たちを襲う。死ぬ気で、全身の力を使って砂を踏みしめる。少しずつ身体が、後ろへ押されていく。けれど、それでも、歯を食いしばって耐えるしか無かった。


「ゥアアアアアッッッッッッ!!!!!!」


「アアアアアアアッッッッツ!!!!!!」


その生死をかけたその全ての行動はわずか数秒で終わった。ミサイルのようなその攻撃が消えた時、そこには僕と、レナの姿がまだあった。けれど、たった一発のそれで、レナの籠手は砕け、レナの腕もボロボロになっていた。僕もまた、鬼月の刀身が折れ、僕の身体の全身に傷が入っていた。

それでも、僕たちは生き残った。なんとか、なんとかその一発を凌いだ。


「ゴホッっ・・・・、レナ、生きてる・・?」


「もちろん・・! あ・・ゆむ君こそ・・・・、ちゃんと生きてる・・?」


「ハァ・・・・、当たり前・・だよ」


代償は大きかった。命が長らえた代わりに、僕たちの武器は破壊され、身体もボロボロになった。

ノアが必死に治そうとしていることは分かった。けれど、同時に重症レベルで傷ついた今の現状では焼石に水の状態であった。


「まダ、生きるのカ。しブといナ・・・・」


姉さんの声で、姉さんでは無い誰かの声が聞こえた。


「黙れ、その声で・・喋るな・・!!!!」


震える足で、倒れるのをなんとか耐えながら、奴へ顔を向けた。


「オれが憎いカ? 刻藤 歩」


「殺すぞ、黙れって言ってるんだ・・!!」


「力を持たナい者ノ言うことヲ聞くトデも思っていルのか?」


「黙れ、黙れ、黙れ!!」


耐えられなかった。僕は姉さんの身体を使って喋っている誰かに怒りを露わにした。痛みを和らげるためにアドレナリンなどが大量に出ているのも影響していた。頭に血が上り僕は激昂して叫んだ。

そして、まだ傷だらけの身体で奴へ殴りかかろうとした。


「だめだよ、歩君!」


ボロボロになって壊れた腕でレナが僕を掴んだ。動かすだけでも激痛が走るであろうのに、構わずレナは僕を制止した。


「歩君、一度息を大きく吸って。頭を冷やして。突っ込んでも死ぬだけだよ」


「・・・・・・」


僕は表面に出てしまった怒りを抑えるように息を吸った。怒りは収まる気配は無かったけれど、頭は冷えた。僕が少し落ち着いたのを見て、レナは手を離した。


「よし、それで良いよ。私だって死ぬほど腹が立つ。だけど感情に身を任せたら碌なことにならないよ。そして、往々にして感情だけで動く人は早死にするよ。だから、怒りを持っていても落ち着いて」


「・・・・・・、ごめん、レナ」


「どうシた? 来ないノか? 俺が憎イんじャないのか?」


「・・・・・・」


僕はそれには答えなかった。ただ、眼だけは、奴を睨み続けていた。


「歩君、私に案がある」


レナが耳元で囁くようにそう言った。

だんだんとノアの回復が効いてきて、怪我は治り始めていた。けれど、武器が破壊された事に変わりは無く、攻撃する手段を失っているのは事実であった。


「でも、どうやって?」


「ノア君、前にダンジョンで見つけたアレを持ってるよね?」


「!! はい、持ってます」


突然、何もない空間から、手が現れた。そして、レナの先に回復し終わった右手に中に赤い液体のような何かが入った瓶を置いた。


「それは・・?」


「その説明は後で。歩君、これをアイツにどうにかして摂取させるよ」


「簡単じゃ無いけど、それで倒せるの?」


「確証では無いけど、多分。歩君、確証はないけどこの案に乗る?」


「もちろん。命を賭してでもやろう」


「フフッ、ありがとう。そう言ってくれて」


奴にこの瓶の中身を摂取させる。文字にすればそれは簡単なことのように思える。けれど、実際にはたった一発で僕たちを満身創痍にさせ、武器すらも失った僕たちにとってそれは途方もなく難しい事であった。けれど、打開策となり得ることがそれしかない以上、それに命を賭ける以外に勝機は無かった。

僕は刀身が折れた鬼月を握った。


「どんな策ヲ弄したとコろで勝ちメはなイ」


「それは、やってみないと分からねぇだろ?」


僕はさっきの一発を撃ってからただ立ったままの奴へ向かってそう言った。


「空間跳躍:モード クリムゾン・ヒート」


ノアの回復によって傷自体は治ったレナの身体から蒸気が発されていた。近くにいた僕ですら熱気を感じるほどであった。

レナはさっきの瓶を鞄にしまうと、僕を見て頷いた。


「歩君、長くは持たない。すぐ、決めるよ」


「分かってる」


もう身体の震えは止まっていた。僕はただ目の前の一点、異形の姿になった奴のその姿をはっきりと瞳に写していた。

折れた刀を構えた。

僕とレナは同時に動き出した。僕よりも速いレナは奴の懐へ入ると籠手をつけていない素手で連撃を繰り出していく。奴のもはや目に捉え切ることすら難しい速さの攻撃を間一髪で躱し続けていた。硬い鱗と丈夫な皮膚によって、斬撃はおろか打撃さえダメージが通っている感じはしなかった。それでも、レナは殴り続けた。拳が反動で傷ついてもその攻撃の手を止めなかった。


「柳生新陰流 複式 冥龍」


レナが引きつけている分、僕に来る攻撃はレナよりも緩かった。だから、何とか僕も躱して攻撃を繰り出した。

龍巣を一点に狙いをつけて穿った。折れた刀で、鱗の上から斬りかかった。けれど、この合成技でさえ、鱗にヒビが入る程度で肝心のダメージは入っていないようだった。

けれど、目的はあの瓶の中身を奴に摂取させること。だから、奴の隙を作るだけで良かった。

そして、一瞬だけなら、僕はその隙を作る術を持っていた。


「柳生新陰流 四式 冥突・連」


僕は奴の一点に集中して、そこだけに攻撃を入れ続けた。僕の攻撃はせいぜい一発で鱗にヒビを入れる程度。けれど、ヒビが入るのであれば、何度も攻撃し続ければそれは亀裂になる。

三、四、五回と同じところに冥突を撃ち込み続ける。

けれど、六回目を撃つ前にレナの一瞬の攻撃の合間を突いて、奴は僕へと僕が捉えきれない攻撃を繰り出した。


「封印!!!!!!」


悔しいけれど、僕はその攻撃を捉えきれない。だけど、事前に来ると分かっていれば、止めるのは容易だった。僕はあらかじめ、空中に高密度で集めておいた空気を封印で固めで壁にした。

奴の腕が空中で停止した。そして、その瞬間に、奴の四肢に同じ壁を作り出し、ほんの一瞬だけ奴の動きを完全に止めた。


「レナ! 今ぁ!!!!!!」


「なアっっッ!!」


「これで、終わりだアアアアアアア!!」


レナが瓶を持ちながら、奴の口の中へ入れようとした。その瞬間、奴の右足の空気の壁だけが割れてしまった。そして、そのまま奴は瓶を持ったレナの腕に膝蹴りをくらわせた。一瞬にして、レナの腕がくの字に曲がり折れた。


「っっつああっ!!!!!!」


流石のレナでもそれに耐えることが出来なかった。だから、レナが持っていた瓶を落としてしまうのはしょうがないことだった。

そして、その瓶は空中で何かに当たったようにして割れてしまった。


「なんだ!?!」


奴の身体を見ると、さっきまでには無かった尻尾が生えていた。太く強靭な尻尾が奴の腰あたりから生えていたのだった。右足の壁だけが壊れたのもこの尻尾のせいであった。

そして、割れた瓶の中身が砂の上に落ちた。


「お前タちが終ワりだっタナ!!」


奴がそう叫んだ。けれど、地面のこぼれたのは赤い液体。ではなく、地面にある砂と同じただの砂であった。液体は溢れていなかった。


「ハ?」


「そんなのは、想定済みなんだよ!!!!!!」

赤い液体は奴へと向かう前に僕が封印して、持ち続けていた。だから、あの瓶の中にはダミーとして砂しか入っていなかった。奴はまんまとその罠に引っかかったのだった。今度こそ、僕たちは奴の口の中に赤い液体をぶち込む事に成功したのだった。


「があ?? っっががアアアアアアアアア!!!!!!」


変化はすぐに起こった。さっきまで余裕そうな態度をとっていた奴が急にうめき出した。身体が暴走したかのようにボコボコとなっていた。奴が苦しみ、膝をつくと大きな翼が腐ったかのようにして落ちた。落ちた翼はドロドロになって溶け、砂にそのシミを残した。


「ギヤアアアアアアア!!!!!!」


それでも苦しみは治ることなく、口から大量の血が吐き出された。


「がああ・・・!!!!!! これ・・・・ハ、龍血?! ッガアアアアアアア!!!!!!」


「そうだよ。それは龍血」


「龍血ってあの? 秘薬とかの材料にもなる?」


「そう。だけど、それは人間が扱えば、の話。龍の血って同族の龍にとっては猛毒なんだよ。他の龍の血を体内に入れると、龍は身体の内側から腐るようにして崩壊するほどのね」


「だから、アイツは、あんなに苦しんでるってこと?」


「そうだよ」


異形になっているとは言え姉さんの身体が腐っていく姿を見るのは心にくるものがあった。だけど、僕は目を逸らさずにその姿を見続けていた。

目を離すのは責任から逃げているような気がしたから。僕はじっと姉さんの姿を見ていた。


「アアアアアアア・・・・!! お前・・・・タち、覚エたぞ。待っテ・・イろ。必ず、こノ借りハ返し・・て・・ヤル・・・・」


「もう二度と会わねぇよ」


僕は姉さんの中にいた姉さんの身体を使っていた奴の正体を聞く気は無かった。心底、どうでもよかった。早く消えろとしか思わなかった。

しばらく、奴は苦しんだ後、姉さんの身体を覆っていた鱗や尻尾が全て腐り落ちた。残ったのは、姉さんの身体だけであった。


「・・・・姉さんは生きてるのかな?」


元の身体には戻りはしたけれど、姉さんが目を覚ますことはなかった。砂の上にうつ伏せのまま動かなかった。


「生きてはいるとは思うけど、龍血は人にとっては薬、龍にとっては毒だからね。一度とは言え、龍人になった瑞稀にどんな影響が出るのかは分からない」


「そう・・だよね」


「でも、ひとまずは一段落ついたんじゃないかな」


「そうだ! レナ腕!!」


「ああ、そういえば折れてたね」


レナはそう言って変形してしまった右腕を見た。それはとてもひどく、少し白いものが見えるほどであった。


「早く治さないと! ノア!!」


「もうやってるよ」


僕がノアの名前を呼ぶとノアが透明化を解除した。既にノアはレナの隣にいて、治療を始めていた。


「ひどいですね、これ」


「今はあんまり痛みを感じないけどね」


「神経もいってるってことじゃないですか」


ノアはなおも治療を続けた。しかし、だいぶ治るのには時間が掛かっているようだった。

レナは怪我をしているし、まだ分からない事だらけではあるけれど、ひとまずは、僕たちは奴を倒すことに成功したのだった。



———しかし、これはまだ序章にしか過ぎなかったことを僕たちは知るのだった。

束の間の休息を取る今の僕たちに想像もできない事実と、事態が待ち構えているのであった。




更新遅くなりました。次回は土曜日までに行います。


余談ですが歩は激昂していたりした時に口が悪くなります。普段からは考えられないほどの暴言や冷たい態度を取ります。

龍血について補足です。龍血は、人と龍の遺伝子が混じったものが使うと、その効能と、デメリットが均衡します。そのため、非常に傷つきやすい身体にはなりますが生きる事自体は可能です。


面白かったら高評価の方お願い致します。感想やコメントなどもお待ちしてますのでよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ