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五十四話 明かされる過去

大衆食堂 小松屋


小松屋は、一般の客よりも、冒険者が集まる場所で有名であった。値段は少し高いが、それに見合う料理が提供され、冒険者たちの打ち上げなどによく使われている場所であった。

僕たちが小松屋に着くと、まだ午後三時だというのに中には冒険者たちが溢れていた。


「うわー、人多いね」


「まぁ、いつも多いけどね。でも、龍羽さんがもう予約してくれてるんでしょ?」


「ああ、予約はしてあるから待つことは無いと思うが」


「僕、十人でご飯を食べるのなんて初めてですよ」


「ん? 十人じゃ無いぞ。あと一人いる」


「え? でも、会議室には僕たちを含めて十人しかいませんでしたよ?」


「それはそうだ。あっ、来たぞ」


「えっ、師匠?」


「ああ、歩。龍羽に呼ばれたんでな」


「と言うか師匠がいてもみんな驚かないんですね」


「まぁ見慣れてるだろうからな。俺は龍羽絡みでこういうところに行くのは少なくないからな」


そして、僕たちはしばらくして、店員に呼ばれて席へと移動した。

座席は他の席とは違って個室になっており、一つの長い机と、それを囲むようにして掘り炬燵があった。


「初めて来たけど良いね」


「うん、ここ良いよねー。あと純粋に掘り炬燵あると気分上がるよね」


「なんかちょっと分かる」


話しながら、僕たちは席に着いて、メニューを見てから、店員を呼ぶと各々が注文を始めた。

そして、それから十分ほどして頼んだ料理が届き始めた。


「歩の金級昇格などなどを祝って、乾杯!」


全員分の飲み物が揃うと、龍羽さんが立ち上がってそう言った。

そして、僕は飲み物が入ったジョッキをレナや師匠たちとぶつけた。

乾杯を終えてから、届いたご飯を食べていると、さっき麗さんに雅国君と呼ばれていた男性が近づいてきた。


「刻藤君、少し質問しても良いかい?」


「はい、なんでしょう?」


「君はあの核をどういう風に使うのかい?」


「核ですか? まだ特には決めてないですね」


「もし、君が良かったら、僕が君専用のものに改造しても良いかい?」


「えっ、逆にそんなことをしてもらって良いんですか?!」


「もちろんだよ。それに、科学者にとって未知のものを改造したりするのは心躍るからね」


「じゃあお願いしても良いですか?」


「ああ、どんなものにして欲しいかい?」


「そうですね・・・・、じゃあ、形や強度を可変できる盾みたいなものとかって作れますか?」


「可変できる防具か・・・・。うん、面白そうだね! 多分できると思うよ」


「じゃあそれでお願いします!」


「オッケー、じゃあ一週間くらいしたら組合の研究室っていうところへおいで。その時に完成したものを渡すよ」


「ありがとうございます!」


「ああ、それと、金級昇格おめでとう。刻藤 歩君」


「はいっ!」


雅国さんはそう言って笑うと、僕から核を受け取って、元の場所へと戻っていった。


「歩、武器とかに使わなくて良かったのか?」


「ああ、うん。武器は今使ってる鬼月で充分だからね」


そう言って、僕は床に置いていた鬼月に触れた。


「まぁ、確かに刀を二本は要らないか」


「そうだね。今はまだ筋力的にも二本はキツイだろうしね」


「そうだ、歩。まだ、ちゃんと言ってなかった」


「え? 何を?」


「金級おめでとう。歩」


「・・・・、うん! ありがとう、ノア!」


そして、それからも打ち上げは続き、僕のところへ麗さんや八城さんたちが来て、祝いの言葉をかけにきてくれた。

時間はあっという間に過ぎていった。


午後八時半


打ち上げが始まってから、五時間が経った。どうやら、龍羽さんはこの部屋を半日貸切にしたそうだった。

酔っている師匠や龍羽さんが腕相撲をしていたり、八城さんとレナが喧嘩していたりと中々にカオスな状況になっていた。

ちなみに、雅国さんは七時くらいに僕が頼んだものを完成させるために組合へ戻っていた。


「レナ、お前たちは次にどこのダンジョンに行くんだ?」


腕相撲を終えた龍羽がレナにそう聞いた。


「うーん、まだ決めてないんだよねー。明後日からはまたダンジョンに行きたいんだけどね」


「そうか。もうゴールドダンジョンには行くんだろう?」


「うん。明治神宮ダンジョンは攻略したしね。ねぇ、二人とも次はどこのダンジョンに行きたい?」


師匠と話していると、レナがそう聞いてきた。


「あっ、僕ちょっと気になってたところがあるんだけど」


「歩君が提案するなんて珍しいね、どこのダンジョン?」


「えっーと、この奥多摩ダンジョンってところなんだけど」


僕はそう言って、スマホで奥多摩ダンジョンを調べて見せながら、そう言った。


「「「「!!」」」」


僕がそう言った瞬間、師匠と龍羽さんとレナとノアの顔が凍りついた。


「え? どうしたの?」


「歩、お前ちゃんと知っててそこに行きたいって言ってるのか?」


「え? 知ってるも何も、奥多摩にある比較的難易度は低いゴールドダンジョンでしょ?」


「! レナ、お前まだ言ってなかったのか・・・・」


「・・・・・・」


「え、何? どう言うこと? 師匠、教えてくださいよ」


「歩君、それは、レナの口から聞いた方が良いわ」


その話を聞いていたのか、麗さんが近づいて来てそう言った。


「そうだね・・・・、ちゃんと言わないとね」


「何、どう言うこと?」


「歩君、私がさ病院で言おうとしてたことを覚えてる?」


「あー、あのちゃんと聞けなかった時の?」


「うん」


「それが、どうしたの?」


「あの時、私が言いたかったのは、君のお姉さんについての話なんだ」


「どう言うこと?」


「私と、君のお姉さん、つまり刻藤 瑞稀(みずき)は高校の同級生だったんだよ。そして、同じパーティーメンバーでもあったんだ」


「え・・・・? そんな話姉さんからも一回も聞いたことなんて無いよ? 本当なの?」


「歩、それは本当だよ。レナと君の姉は同じパーティーメンバーだった」


龍羽さんが僕へとそう言った。

そして、レナは、過去に何があったのかを僕に語り始めた。


二年前 2020年 五月 七日


奥多摩ダンジョン


私は元々、刻藤 瑞稀と二人組のパーティーであった。それから、パーティーには人が増えて、つい先日に六人パーティーになった。

私たちはパーティーのランクを一から上げており、銀級のパーティーにするために、試練となる五つのレッドダンジョンのクリアを達成するために奥多摩ダンジョンへと来ていた。

私は既に、金級は確定している銀級であった。

瑞稀は家族がどうのこうので銀級になることを断っていた。

銀級以上の冒険者には、基本的に組合などから、緊急事態などにさまざまな応援などの要請を受ける。瑞稀はそれをしたく無いために、ずっと赤級のままであった。


「ねぇ、レナ。レッドダンジョンってここが最後だよね?」


「うん。そうだよー。これが終わったら、私たちも晴れて銀級だね!」


「いやー、銀級まで長かったですね。特に、青から赤に上がる時に必要なブルーダンジョンの攻略三十回は大変でしたよね」


「まだ、銀級では無いよー。さらに、油断はダメだよー」


「いや、レナさん。もう銀級は確実ですよ! 今更僕たちがレッドダンジョン程度につまづきなんてしませんよ!」


私がそう言うと、パーティーメンバーである紅牧 香織 と、リュート・ルーフィンがそう言った。

私たちは、リーダーの私と副リーダーの刻藤 瑞稀(みずき) そして、回復役である紅牧(あかまき) 香織(かおり)とタンクのリュート・ルーフィン、(ワン)(ヂェン)、そして後方支援役のルージュ・アンベルからなる六人パーティーであり、バランスの良いオールラウンダーな構成をしていた。

そして、私たち一人一人の実力は既に銀級以上であり、リュートが言うように、レッドダンジョンでつまづくことはないほどの実力があった。

だから、私たちは失敗はしないと言う慢心がどこかにあった。もし、その慢心がなかったら、もう少しマシな結果になっていたのかもしれないと今でも思っていた。


「まぁ、でも確かにリュートの言っていることは一理あるよな」


「そうですね。確かにレッドダンジョン程度であったら、苦戦はしないレベルなのは同意ですね」


「そうだね。でも、レナの言うように油断はダメだよ。何が起こるか分からないしね」


「そうそう、瑞稀の言う通りだよー。よーし、じゃあみんな、行こっか!」


そうして、私たちパーティー『アルゴノート』は奥多摩ダンジョンへと脚を踏み入れた。そして、もう二度とこの六人が揃うことは無かった。



私たちは奥多摩ダンジョンに入ってから、特にモンスターに苦戦などをする事なく、順調に進んでいった。

三階層あるダンジョンは、ただ広いだけで、モンスターのレベルは低く、モンスターの量も多くはなかった。


そして、奥多摩ダンジョンに入ってから二時間ほどして、二階層まで辿り着いたのだった。


「よーし、じゃあ一旦休憩しよっか」


私たちはボスの前に軽い休憩を取ることにした。

各々が飲み物などを飲んだり軽い食べ物を摂ったりして休んでいた。


「レナ、何か変な感じしない?」


「え? そう?」


私もみんなと同じように飲み物を飲んでいると、瑞稀が私に話しかけてきた。


「うん、何で言うのかな、ちょっとゾワッとするって言うか」


「うーん、私は感じないけどなー。みんなは何か変な感じする?」


みんなにそう聞いても特に違和感は感じないと言っていた。


「瑞稀の勘違いじゃない? それか、熱でもある?」


「みんなが感じないなら、気のせいか。風邪でも引いたのかな?」


「風邪なんじゃない?このダンジョンが終わったら、休んでよ」


「そうだね。そうするよ」


「それにしても、あと少しで私たちも銀級のパーティーになるんだね」


「そうだね。私たちが出会ってから、もう四年も経ったんだね」


私たちは、高校二年生の時に、同じクラスであり、同じ冒険者であることから仲良くなり、一緒にダンジョンに行くようになっていた。私たちの目標は日本で初めての黒級のパーティーを作ることであった。


「銀級になったら、黒級までいよいよあと二つだよ」


「うん! だから、このダンジョンはしっかりと攻略しないとね!」


「だね! よしっ、じゃあみんなボスのところへ行こっか!! あと少しだよ!」


「「「「「オー!」」」」」


そうして、私たちはあと少しで銀級になるという高揚感を持ちながら、階段を降っていった。



「これで終わりだよ!!」


そして、ボスと戦い始めてから十分ほどして、私がボスにトドメを刺したのだった。


「みんな、ボスを倒したよ!!」


「やりましたね! レナさん!!」


「やったな、レナ!!」


私の元へパーティーメンバーが駆け寄って来ていた。


「うん、みんなありがとー!」


「やったね、レナ」


そう言って、瑞稀が私の元へと歩いてきた。私は瑞稀が挙げた右手にハイタッチしようと近づいた。

その時だった。

私たちは一瞬にしてその場から消えた。そして、瞬きをするほどの間に、どこか分からないけれど、真っ暗い場所へと飛ばされていた。


「!!!!」


私は瑞稀とハイタッチをすること無く、みんなに声をかけた。周りが暗くて見えない以上、声によって状況を伝え合うことしか出来なかった。


「みんな大丈夫?!」


「はい、でもここはどこですか・・・・?」


「分からない。でも、みんな充分警戒して!」


そして、各々がさっきまでの勝利のムードから一転して警戒心をむき出しにして、臨戦体勢を取った。

その瞬間、真っ暗い部屋に光が灯った。

私は眩しさに目を細めながら、急いで辺りを見渡した。周りには私だけで無く、パーティーメンバーが全員揃っていた。そして、私たちは石壁に囲まれた狭い部屋の中にいた。


「みんな!!」


私はすぐさまみんなの元へと駆け寄った。


「怪我とかはしてない?」


「はい、それは大丈夫です」


「ここはどこだ?」


「分からない。ただ、地上でも、ボスの部屋でもないことは確かだよ」


「まさか、ここはデッドエンドなんじゃないですか・・・・?」


「・・・・、状況から見てそうかも知れない」


「・・・・、それはやばいですね・・・・」


「みんな! 思考を切り替えよう。確かにまずい状況には変わりない。だけど、私たちは『アルゴノート』だよ。いずれ黒級になるパーティーだよ。だから、落ち着いて行動しよう」


瑞稀は動揺や焦りの色が見えるメンバーたちに手を叩いてからそう言った。

そのおかげで、動揺が大きくなる前に冷静さを取り戻せたのだった。

こう言う時に、瑞稀は本当に頼りになる。弟がいるって言ってたけど、そう言うものとかも影響しているのか、包容力みたいのがすごかった。


「状況の確認からしよう。ここは多分デッドエンド。つまり、ボスの部屋のさらに下の部分。そこまでは良いね?」


瑞稀がそう言うと、みんなは頷いた。


「よし。 じゃあ、私たちがすべきなのは、なるべく戦闘は避けて、どうにかして上への道もしくは上に戻るための装置などを見つけること。みんな良いね? 覚悟を決めて。ここから出てみんなで銀級の祝勝会をしよう」


「「「「はい!!」」」」


私よりリーダーっぽくてちょっと私は肩身が狭かった。

そして、私たちは動き始めた。幸い、この部屋は私たちがいる場所は一つの道につながっており、壁についている松明のようなものによって照らされていた。

私たちはその一本道を慎重に歩いていった。

しかし、その一本道で、何かが出てくることも、罠などがあることすらも無かった。

慎重に精神を少しずつ擦り減らしながら、私たちは何もない一本道を進んでいった。

そして、私たちはある大きな部屋にたどり着いた。


「ここは・・・・?」


「それよりも、モンスターが出て来ないってどう言うことですかね?」


「何にせよ、警戒は続けて。何かあってもすぐに対処できるように」


私たちが辿り着いた大きな部屋は二つの別れ道に繋がっていた。


「どっちに行く? セーので言うよ? せーの、」


「「左」」


「「「「右」」」」


「じゃあ右は行こう」


私たちは投票が多かった右の別れ道へと向かっていった。結論だけで言えば、右は正解の道であった。しかし、今思えば、左に行けば誰も後悔も、ましてや心が壊れかけることなどは無かったのかも知れないと思う。


また、右の一本道を進んで行くと、また大きな部屋に辿り着いた。ここまで、慎重に進んできたのに、いっさいの罠もモンスターさえも出てくることはなく、ただただ私たちの集中力だけが削がれていっていた。

この部屋はさっきの部屋とは違って、一つだけしか続いている道は無かった。


「また、大きいだけの部屋?」


そう言いながら、私たちはその部屋を進んでいった。

その瞬間であった。一瞬にして、私たちが今きた道が閉じた。それは比喩でも何でも無く、壁が押し迫り道が消えたのだった。


「「構えて!」」


私と瑞稀がそう言った瞬間、私たちの進む方向を塞ぐようにして、松明の光の影が伸びた。そして、そのまま影が動き始め、影が平面から立体へと変わっていった。

そして、人の形をした十体程度が私たちの前に立ちはだかったのだった。


「気をつけて、シャドウだよ!」



シャドウ

ダンジョンモンスターを長年研究している人でもこのモンスターに関してはほとんど何も分かっていない。分かっているのは、魔石や核を持つことはなく、ものやモンスターなどの影が本体から分離し、人の形を持つと言うことだけであった。倒し方自体は極めて単純であり、影を消す。つまり影が存在できなくなるほどに当たり一体を照らすか、実体とは別に地面を這っている影を切り裂けば消えるのであった。


「リュート、王! 攻撃を受け止めておいて!」


「「了解!」」


シャドウが出てきた瞬間に私たちもいつもの戦闘時のフォーメーションを取った。

タンクの二人を前に置き、アタッカーである私と瑞稀をその少し後ろ、そして最後尾に香織とルージュを配置していた。

シャドウはすぐさま私たちは向かって襲いかかってきた。


「リュート、やるぞ!」


「はい!!」


二人はそれぞれが能力を使いながら、魔道具で自分達はヘイトを向かわせながら、シャドウの攻撃を受けていた。

リュート・ルーフィンの能力は消動(リターン・ガード)と言い、自分がその場からいっさい動けなくなる代わりにいっさいの物理攻撃を通さないと言うものであり、物理攻撃主体のモンスターにとって有能な能力であった。

王・陣は吸収陣(きゅうしゅうじん)というものであり、自分を中心に半径二メートル以内の陣に触れた攻撃を吸収できる能力であった。ただし、吸収した能力は自分では制御できず、吸収しすぎると暴走してしまうというリスクもあった。


そして、その隙に私と瑞稀がシャドウの足元の影を切り裂くために近づいていった。

私は双剣で、瑞稀は能力で作り出した剣で床ごとシャドウの本体を切り裂いていった。

切り裂かれたシャドウはすぐさま霧散していった。

そして、三分もかからずに、私たちは十体全てのシャドウを消し去った。


「ふぅーー、、」


「二人ともお疲れ様。攻撃のヘイト役お疲れ様」


「攻撃を受けてどうだった?」


「レッドダンジョンで出てくるシャドウのニ〜三倍程度は威力があるな」


「ですね。それに攻撃もそうですけど、速さもそんな感じです」


「やっぱり、ここはデッドエンドで、金級相当のダンジョンっぽいね」


「だと思います」


「・・・・、考えててもしょうがないか! シャドウも倒したし、先に行こっか」


私がそう言った瞬間、私たちの行手を阻むようにして、また影の塊が集まってきた。それも、さっきとは比べ物にならないほどの密度で集まっていた。


「な!」


「二人とも、もう一回、前に出て!!」


「「! はい!!」」


二人は少し動揺はしたけれど、すぐに持ち直して私たちの前に出た。

シャドウはぞくぞくと人の形をすると百体を超えるほどの数になり、私たちの前を黒色で埋め尽くした。


「来るよ!!」


私たちはさっきのようにしてシャドウを倒そうとしていた。しかし、そこには一つの誤算があった。

シャドウはさっきよりもさらに速く動いてきたのだった。

そして、タンク役として前線で攻撃を受け止めていた王と、リュートに大きく影響した。


「「!!!!」」


二人は攻撃を受け止め、無効化することが出来る。けれど、無効化するのにも上限があった。王とリュートは百体近くのシャドウの攻撃を受けて、永遠に無効化できるほど能力は有能では無かった。


「レナさん、瑞稀さん! 速く倒し切ってください!!」


「すまない! 耐えるのがだいぶきつい!!」


後ろで、ルージュも既に二人にバフを持っていた。

ルージュの能力は付加(エンチャント)贈与(ギフテッド)というもので、最大四人まで、身体能力に関する向上を行うことができ、簡単に言うと、百メートル走を十四秒で走る人を五秒で走れるほどに身体能力を上げることが出来る。

そんなバフを受け取りながら、耐えきれないと言うことは、シャドウたちの攻撃は思っている何倍も重いのは明白であった。


「瑞稀!!」


「分かってる!」


私たちはすぐさま、シャドウの足元へ切り掛かった。影が切れればシャドウは霧散していく。

けれど、量が多すぎた。そのせいで、切っても切っても減っている気はしなかった。

その時であった。


「俺から離れろ!!」


攻撃を受け止めていた王が叫んだ。


「リュート、お前は堪えろよ!」


私たちはすぐさま王の意図を汲み取ると、香織とルージュと一緒に王から離れた。


「放出!!」


王は私たちが離れたことを確認すると、吸収を反転させて、シャドウの大群へと受けていた攻撃のエネルギーの塊を放出した。

王自身そのエネルギーを操ることはできずにエネルギーは暴走しながら、色々なところへ吹き飛んでいた。しかし、部屋が大きかったことが幸いして、私たちへとエネルギー(ほう)が向かってくることは無かった。

そして、エネルギー砲を全て出し切り、目の前が一瞬開くと、リュートの首根っこを掴んで、私たちの方へと投げた。


「何をしてるの! 王!!」


「分かるだろう! レナ、瑞稀!! これはお前らじゃ無理だ! 見ろ!倒しても倒しても、次から次に、シャドウが生まれ出てきてやがる!! 倒せないんだったら、先に行ったとしても、後ろからシャドウにやられる!!」


王が言うように、今のエネルギー砲を受けてもシャドウたちは減るどころか、むしろどんどんと増殖して、増え始めていた。


「この能力であれば、部屋ごと破壊すればシャドウも消えるだろ! それに、そんな大規模な事はお前らじゃ無理だ!」


「でも、それは・・!!」


「ウルセェ!!!!!! 早く行け!!」


「待ってください! 先輩!!」


「早く行け、リュート!! お前がパーティーを守れ!!」


私たちは、リュートを引きずるようにして、王がエネルギー砲によってこじ開けた道を進み、一本道へと辿り着いた。


「王!! 先に行く! 早く私たちを追って来い!!」


そして、私たちは王を置いて一本道の先へと進んでていくのだった。


「ハハハ、レナも無茶なことを言いやがる。チッ、こんな事になるんなら、彼女と別れときゃあ良かったな」


王はそんなことをぼやきながら、シャドウの攻撃を受け続けていた。

そして、王の吸収陣にヒビが入り始めていた。


「そろそろか・・・・」


そして、ヒビから亀裂に変わり、陣を破壊し始めていた。


「もう良いか。いくぞ、受け止めろ!! シャドウ共!! 最大放出エネルギー(キャノン)!!」


王はそう叫ぶと陣から極大のエネルギー砲を打ち出した。制御のせの字も無いほどにただ力任せにエネルギー砲が暴れ回った。


「ゥオオオオオオオオ!!!!!!」


暴れ回るエネルギー砲はシャドウを消し飛ばし、部屋全体を崩壊させ始めていた。

シャドウは消し飛ばしても消し飛ばしても、無限とも思えるほどに増殖していた。

そして、そんな威力のものが放出されて、部屋が無事であるはずは無かった。


天井が崩れ落ち、部屋が崩落し始めた。それは、シャドウも、王も等しく飲み込んでいった。


「仕事はこなした・・・・、あとは、頑張れよ・・・・」


崩れる部屋の中で、全てを出し切った王はそう呟いたのだった。王の頭へ向かって大きな塊が落ちていた。



一本道を進んでいると、後ろから強い風と、轟音が轟いた。

それは、王が命をかけて、シャドウを倒し切ったことを意味していた。

それでも、私たちは後ろを振り返ることなく、前へ進んで行った。



———今でも、私は思い続ける。今でも、私は自分を恨み続ける。私の脳裏には今でも、あの時のことが焼き付いて離れなかった。




更新遅くなりました。

ちなみに、私の誕生日は今日です。ってことで、歩の誕生日も今日に今決めました。

今回と次回はレナの過去をしっかりと書いていきたいと思っています。それが終わり次第、ダンジョンに戻ると思いますので、お楽しみに。


面白かったら高評価の方お願い致します。感想やコメントなどもお待ちしてますのでよろしくお願いします!

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