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三十八話 雷の鳥

それから五分程度、僕たちは一本道を歩いて行った。特にモンスターが出ることはなく、罠もまた無かった。


「あっ、二人とも、部屋があるよー」


レナがそう言うように僕たちの前には部屋の入り口のように広がっている空間があった。そして、僕たちは大きな部屋に出た。しかし、その部屋にはモンスターも三階層へと続く階段も宝箱も何も無かった。ただ大きな部屋だった。要するに、僕たちはどこかで間違った道を来てしまっていたようだった。


「ねぇ、レナもしかして、これってただの行き止まりだよね・・・・?」


「うん・・・・、そうだね」


僕は思わずため息をついてしまった。横にいたノア君もガッカリしたような顔で頭に手を置いていた。


「ほら二人とも、ガッカリしてないで」


「むしろよくレナはガッカリしないね」


「え? いや流石にガッカリはしてるよ。でも、冒険者やってると少なくないことだからね」


「そう言うもんなのかな」


「うん。ほらっ、さぁ引き返そう!」


レナの言葉に僕たちは頷くとこの大きな部屋を出たのだった。それからしばらくして、僕たちが歩いていると、僕たちが来た道とは違う道がもう一つだけあった。その道は岩の影に隠れていて、正面からだと死角になっていて見つけられないようになっていたのだった。


「レナ! これって・・・・」


「ゼロ君!! そっちには行かないほうがいい気がする」


僕がその隠れていた道の方に近づきながらそう言うと、レナが僕を止めた。


「?? どうして?」


「いや、ただの勘なんだけど、なーんかそっちからは嫌な予感がするんだよね」


「ノアはどう思う?」


「レナさんもそう言ってるし、やめといたほうがいいだろ。レナさんの勘って割と当たるし」


「うーん、じゃあやめとくよ」


「うん」


そう言って僕たちは隠された道ではなく、もと来た道を進んで行ったのだった。

実はこの時、レナの勘は当たっていた。この道は『溜まり場』になっていた。


溜まり場

そこはとんでもない数のモンスターが出現する場所の名称だった。溜まり場に続く道に一度入ると全てのモンスターを倒さないと進むことも戻ることもできない。来た道も行く道も閉ざされ、大きな部屋の中で、モンスターとの連戦を強いられる。そして、その数は最低でも五百体。今までに確認された中では千体を超える数のモンスターが出現したとも言われている。それに加え、出現するモンスターはそのダンジョンの全ての階層からランダムで出てくる。今までにボスが出現したと言う記録はないが、中ボスを含めたその他のモンスターがランダムに出現すると言われている。溜まり場は全ての難易度のダンジョンに存在し、初心者ベテラン関係なく、溜まり場によって命を落とす者は少なくない。そのため別名 冒険者の墓場とも呼ばれている場所だった。しかし、その反面、突破することができれば、非常に強力な武器や防具、魔道具といったものが入った宝箱を得ることが出来る。過去、溜まり場を突破したある冒険者はその宝箱からエクスカリバーを手に入れている。死の危険が非常に高い代わりにそれすら軽いものと思えるほどのものを手に入れることが出来る、超ハイリスク・ハイリターンであった。


歩たちはレナのおかげで窮地を無傷で乗り切ることができたのだった。

そして、三人は三十分ほど歩くと一番最初の分かれ道へと戻って来た。罠は相変わらずだけど、モンスターは既に倒していたからか出現する事は無かった。


「やっとここまで戻って来れたねー」


「ちょっと疲れたけどね」


「じゃあこれ、はい」


そう言うと、ノアは包み紙に包んだ小さい何かを僕とレナへと投げ渡した。そして、それを受け取ると包み紙を開いた。


「あー、回復飴ね。ありがとう」


「ありがとうーノア君」


僕たちはそう言うと、ノアは頷いた。そして、異空鞄からもう一つ回復飴を取り出すと包み紙を開き、三人とも回復飴を口に含んだ。


「じゃあ今度は左に行こっか」


そうして僕たちは分かれ道を今度は左へと進んで行った。

左の道に歩き出してすぐに、レナが異常を感じた。


「二人とも、サーチャーアイの様子がおかしくなった。多分なんかが来るよ!気をつけて!!」


「罠の位置はわかる?」


「全部じゃないけど、とりあえず二メートル前、右に一メートル先の壁の二つ! 他にもあるかもしれないから慎重に!!」


僕たちが臨戦体制をとると、奥から、バチバチッという音が高速で近づいて来た。


「二人とも、避けてっ!!!!」


そう言われて、ノアを庇うようにして、僕とノアは左に避けた。左に避けると僕たちがいた場所を高速で雷のようなものを纏った何かが通りすぎた。何かが通り過ぎると、少し肌がピリついた。


「あれは、雷鳥?!」


「珍しいねー、雷鳥」


雷鳥

その鳥は名前にもある通り、雷を身に纏っている。正確には、雷ではなく、空気中の電子を高速で動かすことによって自分の身の周りの空気を電気に変えている。しかも、電気を纏っているため、金属や素手でで攻撃をすると、感電してしまい、死ぬまではいかなくてもダメージを食らってしまうのだった。そして、雷鳥はその電気によって、周囲の電子機器や魔道具などを狂わせてしまう。レナのサーチャーアイに不具合をきたしたのもこいつのせいであった。しかし、あまりこのモンスターは人などを襲う事はあまりせず、おとなしいモンスターだった。そして、数が少ないため希少性が高いモンスターでもあった。


「でも、なんで雷鳥が?! 大人しいんじゃ・・・・」


僕は姿勢を直して雷鳥を見ながらそう言った。


「何はともあれ、襲ってくる以上倒さないと!!」


「だね、行くよ、レナ!」


そして僕とレナは雷鳥へと向かって行った。ノアはすぐさま、後ろへ下がるとサポートをする姿勢に入った。そして、既に姿を隠す魔道具をつけていた。


「でも、どうするー? ゼロ君。このままじゃ雷鳥に攻撃が当たらないよー?」


雷鳥は僕たちが届かない位置にいた。例え僕が虚空を撃ったとしても多分容易に躱されてしまうだろう。それにレナはそこまで跳躍できるけど、電撃を纏っているせいで、うまく攻撃も出来ない。

どうしたもんかなぁー・・・・


「とりあえず、僕が虚空を撃ってみる」


僕がレナにそう言うとレナは一歩後ろに下がった。


「じゃあよろしくねー」


「柳生新陰流 一式 虚空・連」


僕は縦横、斜めに虚空を雷鳥へ向かって放った。しかし、雷鳥のスピードは速く、そのどれもが躱されてしまったのだった。


「やっぱり無理か・・・・」


僕がそう言った瞬間、雷鳥が高速で僕へと突進してきた。


「はっっや・・!!」


僕は思わず鬼月で雷鳥を受け止めようとしていたのをやめて、無理矢理躱す姿勢に変えた。僕はなんとか迫り来る雷鳥を電気があたるスレスレで躱した。しかし、近くを通った電気によって僕の身体は痺れてしまっていた。すぐにノアが痺れを治してくれたとはいえ、長く戦っていたら僕たちが不利になっていくのは目に見えていた。


「ねぇゼロ君、私に案があるんだけど良いかな?」


そう言うと、レナは僕は近づき耳打ちをした。


「えー、でもそれレナ大丈夫?」


「大丈夫、大丈夫。ノア君もいるし」


「・・わかった。悔しいけど、僕じゃ倒せないし」


「よしっ決まりだね。それで行こう!」


レナは僕にそう言ってから、雷鳥の方を見た。雷鳥はまだ、僕たちが直接攻撃することができない位置で僕たちを観察するように見ていた。

そして、レナが雷鳥へ向かって走り出した。そして、サウンドバットと戦った時のように身を屈めたと思うと、一気に雷鳥へと跳躍した。いきなり、手が届く位置にまで接近された雷鳥は驚いているように、身体を揺らしていた。


「落っこちろ!!!!」


そう叫ぶレナは右手を雷鳥へ振りかぶった。雷鳥は電気という鎧を纏っているためかレナの攻撃を避けるではなく、むしろ受け止めようとしていた。そして、雷鳥の身体とレナの拳が当たる瞬間、バヂバチッという音共に、拳が雷鳥に直撃した。レナの拳には白いグローブのようなものがついていた。そして、レナの右肩まで、電気のようなものが走ったように見えた。レナは空中で右腕が痺れているようで左手で右腕を押さえていた。

一方でレナの攻撃を受けた雷鳥は姿勢を崩し、壁際まで吹き飛ばされていた。そして、手の届かない位置にいた雷鳥は既に僕の三メートル前まで落ちていた。


「柳生新陰流 一式 虚空!!」


落ちてきた雷鳥に狙いを定めて僕は鬼月を振った。姿勢を崩し、上手く飛ぶことが出来ずにいた雷鳥は僕の虚空を見て、翼を旋回させ、虚空を避けようとしていた。瞬間、雷鳥は翼に電気を纏わせ動きを加速させた。そして、加速した結果、虚空は雷鳥の身体を掠っただけで、切ることはできなかった。


「・・・・・・・・」


虚空はそのまま雷鳥を切ることなく、壁に当たった。虚空を躱した雷鳥はそのまま、僕へ突進しようとしていた。

———しかし、雷鳥の突進が僕に当たることは無かった。虚空を確かに躱したはずの雷鳥はその身体が一瞬にして側面から貫かれたのだった。


「??!!」


雷鳥は自分に突如として走った激痛に驚き、首をその激痛が走った場所に向けた。その場所には、壁から剣のようなものが突き出てそれが雷鳥を貫いていたのだった。

僕がさっき虚空を撃ったのは雷鳥を切るためでは無かった。このレナがさっき言っていた罠を起動させるために放ったのだった。雷鳥に当たればそれでよし。避けられても罠が起動して、どちらにせよ倒すことができるというわけだった。

まぁ、本当は虚空で雷鳥を倒し切るつもりだったんだけど。


「キュッッ!」


そして剣がダンジョンの壁の中に戻ると雷鳥の身体が地面へとゆっくりと落ちていった。


「やったね、ゼロ君!!」


もう右腕は大丈夫なのか、左手で右腕を掴むことなく、両手を振りながら、僕の方へとレナが来た。


「うん。でも、虚空躱されちゃったけどね」


「まぁ、あれは雷鳥がすごかっただけだよ、それにちゃんと倒せたんだから良いでしょー」


「でも、まだまだ修行不足だったよ。もっと頑張んないと」


「ちゃんと反省してて偉いねー。そんなに気負わなくて良いと思うけど」


「お疲れ様です、二人とも」


「ノア君もありがとう、お陰で痺れがすぐ消えたよ」


レナはそう言って右腕をノアに向かってプラプラさせた。


「いえ、痺れが治って良かったです」


レナは右手につけていたグローブのような手袋のようなものを外して、しまっていた。


「レナ、その手袋は何?」


「これ? これはただの手袋だよ。流石に素手で殴ったらやばいと思ったからさ」


「なんか他に装備はなかったの?」


「いや、あるにはあるんだけど今日は持ってないんだよね。家に置いてきちゃったからさー」


「そっか。まぁ確かに雷鳥が来るとは思わないもんね」


「うん。でもこれからはちゃんと持ってきておくよ」


「うん、お願い」


そんな話をしながら僕たちは雷鳥が落ちた所へと歩いていった。地面に倒れている雷鳥の身体は既に死んでいるはずなのに、うっすら電気を纏っていた。とは言っても、身体が痺れるようなものではなく、多少ピリピリするようなものだった。


「僕、雷鳥初めて見たけどすごいね。まだ電気を纏ってるよ」


「そっか、あんまり出てこないもんね」


「僕も二度目だからな、雷鳥を見るのは」


僕たちは死してなお、存在感を放つ雷鳥の姿をじっくりと見ていた。


「じゃあ魔石と雷鳥の羽をとって行こっか」


雷鳥の羽はその電気を纏うという特殊性から色々なものに使うことができ重宝される。状態がいいものだと、一羽分の羽で三百万近くの値がつくこともあるものだった。


「そうだね、それじゃ回収しよっか」


そうして、僕たちは雷鳥の魔石と羽を回収して、ノアの異空鞄に入れた後、先に進んで行った。


「そういえば、レナ。サーチャーアイはどう?」


「え? ああ、もう大丈夫だよ。雷鳥を倒したから、もう直ったよー」


「そっか、それなら良かった」


レナはそう言うとまたサーチャーアイを目に掛けていた。それから少しして、また僕たちの前に分かれ道が現れた。


「今回はどうしよっか?」


「今度も右で良いんじゃない? ノアは?」


「僕は二人に任せるよ。さっき間違えたから」


「じゃあレナはどっちが良い?」


「ゼロ君が右っていうなら、右で良いよー」


「じゃあ右に行こ!」


そうして僕たちは、この分かれ道を右へと進んで行った。右の道は一本道で特にモンスターなどが出てくる気配はなかった。そして、僕たちが歩き出してから五分ほどして大きな部屋に到着した。さっきの行き止まりとは違ってここは部屋に大きなトロールが二体いた。


「なんでここにトロールが?!」


トロールの姿を見たノアがそう言った。


「なんでそんなに驚いてるの? ノア」


「明治神宮ダンジョンにはトロールは居ないんだよ。だから、ここにいるのはおかしいんだよ」


「これは・・・・、ひょっとして進化でもしたのかな?」


モンスターの進化

モンスターには進化という概念が存在する。例えば、ゴブリンだったらその種族の最上位個体はオーガであるモンスターに才能と、類い稀なる経験が有ればそのモンスターは上位のモンスターに進化することが稀にあるのだった。


「ゴブリンが進化したってこと?」


「うん、多分だけど」


「もしかして、さっき雷鳥がいたのも、こいつらが現れたせいなんじゃ・・?」


「それもあるかもねー、でもとりあえずこいつらは倒さないと・・・・!」


「そうだね」


「二人とも、トロールは下手したら即死もあるから気をつけて!!」


「「了解!!」」



そして、僕とレナはトロールへと向かっていった。






すみません。色々と立て込んでいて更新が遅れました。


次回は明日更新です。

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