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三十四話 連戦

「クソッ、キリが無い!!」


僕はそう叫びながら、手に持った鬼月でオニグライの大群と戦っていた。

それを説明するには少し過去に話は戻る。

約三十分前、僕たちがオニグライを一体倒した後、オニグライを解体してすぐにまた探索を開始した。しかし、何度も何度もオニグライが僕たちの前に立ちはだかるのだった。どうやら、僕たちが行く道のりにオニグライの群生地が出来ていたらしい。最初に倒した一体のオニグライの叫び声に釣られて、僕たちの行く先々にオニグライが現れているのだった。倒したと思ったらまたすぐに次々とオニグライが出て来ていた。そして、僕たちが(主に僕)がオニグライを十体ほど倒した時、僕たちはオニグライの大群に囲まれていた。ざっと見るだけでも、三十体ほどは居る大群だった。そして、時は今に至る。


「ハァハァ・・・・、何体居るんだよ!!」


僕がオニグライを一体倒すと同時にすぐに次のオニグライが僕へと突進してくる。そして、周りのオニグライは僕は向かって糸を吐き出したり、鋭い脚で僕へ襲ってきたりしていた。ノア君は既に姿を隠すコートを身に纏っていてオニグライから狙われることはなかった。そして、レナは涙ながらにオニグライと戦っていた。オニグライの大群に囲まれた時、極度の蜘蛛嫌いのレナも戦わざるを得ないほどの窮地だった。しかし、そのレナの動きはいつもの動きとはかけ離れていてお世辞にもレナの動きは良いとは言えなかった。それでも、レナが苦手だという蜘蛛と戦っているだけでも、僕にとってはありがたかった。


「レナ!! 大丈夫?!」


そんなレナへ僕は突進してきたオニグライを弾いて叫んだ。


「大丈夫じゃナイヨ……。もうやめたい・・・・」


レナはいつもの陽気なテンションから、あからさまにテンションが下がっていた。しかも、その声は震えていてすぐにでも泣き出しそうなものだった。


「耐えてレナ!! 今レナが落ちたら本当に全滅する!!」


「それぐらいわかってるヨ」


「後で何でもしてあげるから、だから耐えて!!」


「・・・・、何でもって言ったね? なら私も頑張るよ!!」


レナは僕の言葉を聞いて、急激に元気を取り戻した。そしてレナはそう言うと、レナの目の前にいたオニグライを切り裂いた。

あっ、これレナの元気は戻ったけど、僕やばいこと言っちゃった?

僕は少し寒気がしていたのだった。


「今はとりあえず、この状況を打破しなきゃな・・・・」


そして、僕はレナからオニグライへと意識を戻した。

(「多少の無茶をしても、ノア君がそれはカバーしてくれる。なら、少し捨身に行ってもいいか・・」)

レナが元気を取り戻したとは言っても、オニグライの数はまだまだ沢山いた。僕も既に十体ほどは倒したはずだけど、次々にオニグライは溢れてきていた。


———大変な状況だな。まぁしかし、冒険者にとって、これぐらいの状況はザラにある。しかも、これよりひどい状況だって沢山ある。デッドエンドに向かうなら、これぐらいは乗り越えないとな


(「分かってます!! これぐらいは切り抜けてみせます!」)


———そうだ、その意気だ。それに、全方位からの攻撃が飛んでくるのはいい練習にもなるだろう?


(「はい。師匠との修行では体験出来ないですしね」)


———頑張れよ、歩。


(「はい!」)


僕は最前線に居た一体のオニグライに向かって走り出した。そのオニグライも、僕が向かってきたのを見て、糸を吐き出してきた。


「バレバレなんだよ!!」


僕はオニグライが吐いた糸を横に飛んで躱した。そして、そのままオニグライに肉薄して、頭に鬼月を叩き込んだ。頭を切り裂かれたオニグライは、すぐにその場に倒れ、八つの目から光が消えた。しかし、すぐに僕はオニグライに囲まれてしまった。つまり、僕は全方位の退路が絶たれてしまっていた。


「ゼロ!! 早くそこから出ろ!」


姿は見えないけれど、ノアの叫ぶ声が聞こえてきた。


「レナさん!! ゼロが!」


すぐに、ノアはレナにも助けを呼んだ。


「大丈夫だよ。ノア君。ゼロ君はこの程度じゃやられないよ。だからノア君も信じてあげて?」


「・・・・、分かりました」


「あっ、でも、フォローには行ってあげて。流石にあの大群に無傷は無理だと思うから」


「はい!」


ノアは相変わらず、姿は見えないけれどゼロの方へと走っていった。


「よしっ、ゼロ君が頑張ってるんだから、私も頑張ろう! だから、君たちは一体も残さず消えてもらうね」


レナはそう言って、目の前に居る大量のオニグライへと視線を向けるのだった。

(でも、やっぱり怖いものは怖いなぁ・・・・)

そんなことを胸の内で考えながら。


オニグライに囲まれていた僕は、四方八方から、オニグライの攻撃を受けていた。糸を吐き出してきたり、脚で襲いかかってきたり、強酸を飛ばしてきたりと様々な攻撃が飛び交っていた。しかし、僕はその全てを受け止め、弾き、躱していた。


「柳生新陰流 七式 瀑撃(ぼうげき)


そして、僕は目の前のオニグライ達に目掛けて連撃を繰り出した。


瀑撃(ぼうげき)

この技は、僕が師匠に教わった技の中で、奥義に次いで習得するのに時間がかかった技だった。名前の通り、滝が水を打ち続けるように、何度も連撃を与え続けるものだった。まともにこれを喰らえば、絶命は免れないほどの技だった。


瀑撃を直で喰らった僕の目の前のオニグライは全身を切り裂かれ、そのままその後ろにいたオニグライ数体を屠ったのだった。しかし、オニグライ達はすぐに僕へと飛びかかってきた。


「やっと近づいてくれたな。これで終わりだ!! 柳生新陰流一刀 五式 虎爪・円!!!!」


飛びかかってきたオニグライ達の鋭利な脚が僕の身体の至る所を裂いた。しかし、それと同時に僕は全身に飛び掛かってきたオニグライ達へ向かって鬼月を振った。

数秒後、飛びかかってきたオニグライ達はは全てが切り裂かれて絶命した。僕は頬や足、腕など至る所から赤い血が流れていた。それと同時に、オニグライの緑色の血が僕に返り血となって髪や服にべったりと染みていた。しかし、僕の傷はすぐにノアが回復してくれたおかげで痛みを感じる暇もなく、完治したのだった。そして、僕の周りにはあれだけいたオニグライの動いている姿はもうなかった。辺りには緑色の血を流したオニグライの死体だけが足の踏み場もないほどに転がっていた。その光景は見る人が見たら卒倒するレベルでグロかったのだった。


「ゼロ!! よく無事だったな!!」


「回復ありがとうノア。助かったよ」


「それが仕事だからな。それより、何で、さっきみたいに今までオニグライ達を一掃しなかったんだよ。最初からあれをしてれば、危険を冒す必要もなかったのに」


「あー、あれは・・・・」


「ゼロくーーーん!!!!」


僕がそのことについて、ノアに説明しようとした時に、レナが僕の名前を呼んだ。レナは僕の名前を呼ぶとすぐに僕たちの方へと小走りしてきた。見ると、レナも僕と同じようにオニグライの緑色の返り血で至る所が汚れていた。


「無事でよかったよ、レナ」


「無事じゃないよ!! 返り血でベトベトだしさ!! もう本当に最悪!」


レナはそう叫んだ。しかし、レナが走ってきた方を見ると、オニグライの死体が山のように積み重なっていた。数は僕よりは少なかったけど、それでも大量の数を倒していた。

そう言うレナは本当に機嫌が悪そうだった。何と言うか、口は笑っていたけど、レナの目が死んでいた。


「ねぇ、ゼロ君。何でも頼みを聞いてくれるんだよね?」


「ヒュッ・・・・」


そう言えば、さっきレナにそう言ってしまったのだった。


「ねぇ、言ったよね?!」


レナがそう言うと、ノアは殺意のようなものを無言で僕に目で訴えかけてきていた。しかし、レナを前にして、あれは冗談!!とか何とか言ったら、それは僕の死に直結することは目に見えていた。


「・・・・はい」


「じゃあさ、このダンジョンが終わったら私とまたデートしてよ!!」


「えっ、そんなことでいいなら、全然良いよ」


僕はちょっと安心した。てっきりレナがもっとドギツイお願いをしてくると思っていたけれど、案外軽めなもので良かったと思う僕だった。

まぁそれでも、ノアは目から血を流す勢いで、僕のことを凝視していた。

しかし、すぐに、ノアは何かを思い出したように僕に問いかけてきた。


「で、ゼロ。さっきの話だけど、何であれを最初から使わなかったんだ?」


「あっ、それ私も思った。ゼロ君の方を見たらゼロ君がオニグライを一掃してるからさー」


「あれは、単に僕の実力不足だよ。虎爪とか少し離れた敵に攻撃できる技は持ってるんだけどさ。僕はまだ未熟だから、オニグライの強度だとだいぶ近寄らないと倒しきれなかったんだよ。だから、一掃するために、捨て身でオニグライを引き寄せたんだよ。だから、最初からは使えなかったんだ、ごめんね」


「そういうことだったのか。でも、よくあの大群の中に突っ込んでいけたな」


「まぁ、そこはノアを信頼したよ」


「そっか。とりあえず無事で良かった。さらに、特に大怪我することなく、窮地を乗り切れて良かったよ」


ノアと二人で話していると、死体とは言え蜘蛛が大量にいるこの空間に嫌気が差してきたのかレナが口を開いた。


「ねぇねぇ、二人とも、もう早く行こうよ。ここは蜘蛛の死体が沢山あって気味が悪いしさー」


「そうだね、じゃあ魔石を回収して移動しよっか」


「だな、!!レナさん!!」


何かに気づいたノアがレナに向かって叫んだ。直後、レナの後ろの景色がぶれた。


「今、私は機嫌が悪いんだ!!!!」


レナがそう叫ぶと、レナの体が一瞬にして消えた。そしてその直後にレナの後ろの景色が大きくぶれると思うと、それは大きなカマキリの姿に変わった。そして、そのカマキリはずるっと大きな首が地面に落ちた。


「アサシン・マンティス!!」


僕はその姿を見てそう叫んだ。


アサシン・マンティス

そう呼ばれるモンスターは大きなカマキリの姿をしている。そして、このモンスターの大きな特徴として、気配と同化するという特性があるのだ。だから、獲物は気づかぬ内に大きな鎌で切り裂かれてしまう。それはまるで暗殺を行うように静かに行われる。そこから、この名前がついたのだった。しかし、暗殺性能が秀でている代わりに、身体は脆く存在にさえ気づくことができれば倒すことは容易いモンスターだった。


「でも、よく気づいたねノア」


「レナさんの後ろの景色が凄いぶれたからな。アサシン・マンティスかどうかはわからなかったけど、何かしらがいるとは思ったからな。まぁでも、レナさんは気づいてたっぽいけど」


「叫んでくれてありがとうね、ノア君」


「でも気づいてたんですよね?」


「まぁ、変な気配がしたからねー。それにちょっとピリピリしてて、感覚が鋭くなってたしね」


「やっぱレナは凄いね」


「いやー、ゼロ君も慣れればすぐにできるよ。気配を感じるのは冒険者を長くやってれば嫌でも身につくからね」


「そういうもんなのかなぁ。そうだといいけどね」


「うん。きっとできるよ。ゼロ君なら」


「じゃあアサシン・マンティスの魔石も回収して先に行きましょう!」


ノアが僕たちは向かってそう言った。


「そうだね、今度こそ行こっか。ちなみにレナ 、二階層まではあとどれくらい?」


「んー、あと一時間ってところかなー。順調にいけばの話だけどね」


「じゃああと一時間頑張っていこう二人とも!」


レナの言葉を聞いて、僕は二人に向かってそう言った。

そして、そこから一時間と二十分後僕達はついに明治神宮ダンジョンの二階層入り口まで辿り着いたのだった。辿り着くまでに、バッタの姿をしたブラッドレッグと呼ばれるモンスターや鳥のモンスターである血鴉(ちがらす)鬼雀(おにすずめ)と呼ばれるモンスターたちが襲ってきた。しかし、僕達はそいつらを危なげなく倒して進んできたのだった。


「やっーーーっっと着いた!!」


「いやー、長かったねー」


「本当に疲れた・・・・」


僕達は各々が疲れの色を示していた。そして、二階層へと続く階段に入ると、ノアが異空鞄から水のような液体が入った少し大きめの瓶のようなものを三本取り出した。


「二人とも、これを使って」


そういうと、取り出した瓶のうち二本を僕達へと手渡した。


「これは?」


「それを使えば自動的に服や体の汚れを取ってくれる魔道具。この魔道具に水を入れるだけで血の染みでさえも取れるんだよ。それに中身を入れ替えれば何度でも使えるし便利なんだよ。瓶の蓋を開ければ使えるから」


ノアにそう言われて、瓶の蓋を取ると、中の水がまるで意志を持つように動き出した。そして、直ぐにそれが僕の身体に纏わりついてきた。少しして、身体から水が離れたと思うと僕の身体の汚れが全て落ちていた。そして、汚れた水はまた瓶の中に入っていった。


「うわっ、凄い!! 汚れが全部消えた!」


横を見るとレナも同じように汚れが落ちて綺麗になっていた。


「あー、さっぱりした。ありがとうノア君」


「終わったら瓶は返してください」


そう言われて、僕とレナは中の水が汚くなった瓶をノアに返した。


「ありがとうノア」


「うん」


「綺麗になったことだし、二人ともここで少し休憩していこっか」


「そうですね。次の階層からは罠も出てきますし」


「よしっ、じゃあ休憩しよー!」


そうして、僕達はここで休憩を始めたのだった。そして、明治神宮ダンジョンの一階層を大きな怪我などを負うこともなく、抜けたのだった。






更新遅れてすみません。


最近は歩の活躍が書けて嬉しいですね。ちなみにレナの蜘蛛嫌いは僕の蜘蛛嫌いと合わせました。まぁ僕の場合は蜘蛛というよりかは虫全般が苦手なんですけどね。

そんなことより、次回は日曜までに更新の予定です。

感想やコメントなどお待ちしてますのでよろしくお願いします、

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