三十一話 漏れ出でる不穏
七月 十二日 午後六時半
僕は今レナの家にいた。レナの家は新宿の高層ビルだった。しかも、百階まであるビルのうちの最上階である百階がレナの部屋だった。なんだかんだで忘れていたけど、レナも金級の名のある冒険者の一人でだいぶお金を持っていたのだった。僕たちは、ノア君や師匠と別れた後、少し早めの昼食を食べ、新宿内の色んなところを見てから、家へと着いた。家へ着くと、レナがエプロンを着ながら僕へと言った。
「夜ご飯は私が作るけど、何か食べたいのはある?」
「いや流石に僕が作るよ。レナの家に泊まるんだからそれぐらいはするよ」
「じゃあ歩君に任せちゃおっかなー」
「うん。レナは何が食べたい?」
「じゃあオムライスかな。私、オムライスが好物なんだよねー」
「わかった」
僕が冷蔵庫の中を見ると思った以上に調味料や食材が完備されていた。少し驚きつつ、僕はオムライスに使う材料を取り出した。そして、それから一時間後、僕たちは夜ご飯を食べていた。
「ん、このオムライス美味しいねー!」
レナはパクパクとオムライスを食べていた。レナの希望で、大盛りにしたはずなのに、直ぐに消えてしまいそうな勢いだった。
「オムライスを作るのは得意なんだよね。姉さんもオムライスが好きでさ、『ご飯何がいい?』って言ったらいっつもオムライスって言ってたんだよ」
僕が昔の姉さんと二人で暮らしていた時の事を思い出して笑いながらそう言った。
「‥‥そっか。そりゃあ歩君の腕前が上がるのも納得だよね!」
「そう言ってくれると嬉しいよ」
そして、僕たちはすぐにオムライスを食べ終えた。それでも、時刻はまだ九時を八時をまわっていなかった。
「ねえ、歩君。明日のダンジョンなんだけどさ、現地に八時集合で良い?」
二人で食器を洗っていると、レナが僕へと言ってきた。
「あー、うん。それで僕は大丈夫だよ。でも、ノア君は大丈夫?」
「多分大丈夫だと思うよー。じゃあノア君には明日八時集合って伝えておくね」
「うん。ありがとう」
食器を洗い終えると、僕とレナはソファへと座った。ソファはフカフカでとても座り心地が良かった。レナの家はソファのすぐ近くに窓があり、そこからは地上百階からの景色が楽しめた。外は街灯や店などの色んなものの光があって、上にも下にも満天の星があるようだった。
「今更だけど、また明日からダンジョンだけど、大丈夫?」
僕が窓から外の景色を見ているとレナが僕の方を向いてそう言った。
「うん。大丈夫だよ。そりゃあ確かにまだスッキリなんてしてないけど、もう大丈夫。うん、もう大丈夫」
「そっか。でも、辛くなったら言ってね。その時は私が目一杯甘やかしてあげるからさ!!」
「もしかして、それが最初から狙いだった? でも、ありがとう。そうだね、その時は甘えようかな」
「うん!」
僕がレナに笑いかけると、レナも満面の笑みで僕に返してくれた。
———そうだぞ、歩。それに私にだって甘えても良いんだぞ?
(「はい。ありがとうございます」)
———まぁ、何だ明日からも、気をつけてな
(「はい!」)
そうだ。もう僕は一人じゃない。レナもそれに、レティアだっている。
両親が死んで、姉さんが行方不明になってから、ずっと一人だった僕は、久しぶりに一人じゃないと言う実感を持てることが素直に嬉しかった。
「よし、それじゃあ今日は早くお風呂に入って、寝ちゃおう!」
「そうだね」
そして、僕たちはその後、お風呂に入った後、眠りに就くのだった。
まぁ、その前に、レナが僕と一緒にお風呂に入ろうとしたり、一緒のベッドで寝ようとしたりしてが、何とか普通に寝ることができた。
「それじゃあ、歩君おやすみー。でも本当にソファでよかったの?」
「うん、大丈夫だよ。おやすみ、レナ」
僕がそう答えた後、レナは自分の部屋へと入って行った。僕も暗くなったリビングのソファで、眠りに就いた。
七月 十三日 六時半
僕が起きると、既にレナは起きていて、朝ご飯まで用意されていた。
「おはよう! 歩君」
「おはようレナ。それにしても早いね」
「私は朝起きるのが得意だからねー。朝ご飯も出来たし、ほら食べよ!」
「うん。ちょっと顔だけ洗ってくるよ」
「はいはーい」
僕が顔を洗って戻ってきてから、二人で朝ごはんを食べた。
やっぱり、レナのご飯は美味しいな‥‥。
「あっ、そうそう。歩君にまだ、どこのダンジョンに行くか言ってなかったね」
「そう言えば、確かに‥‥」
「今日これから私たちが行くのはね、あの明治神宮ダンジョンだよ」
「えっ、あの!?」
僕はその言葉を聞いて、思わず飲んでいた味噌汁を吹き出しそうになった。
「うん。あの」
明治神宮ダンジョン。それは日本国内のシルバーダンジョンの中で、トップクラスの難易度を誇るダンジョンだった。ダンジョンは未知数なことが多いが、わかっていることもいくつかはある。そのうちの一つとして、ダンジョンは年代や畏怖の対象、そして知名度によって難易度が決定されると言うことだ。もちろん、ダンジョンはどこに出てくるかが分からない。けれど、日本であったら、明治神宮、屋久島、日光東照宮、そして、日本最高難易度と呼ばれている法隆寺などが存在している。ちなみに、外国などでは、アマゾン川やクフ王のピラミッド、ストーンヘンジなどがある。また、そのほとんどのダンジョンが二重ダンジョンになっている。しかし、難易度に比例してダンジョン内で現れる宝箱などでは有能な物が現れる。イギリスで発見されたエクスカリバーなどが良い例だ。そして、明治神宮ダンジョンは難易度が高い理由としてモンスターの攻撃力が異常なほどに高いことと、即死級の罠が所々に存在していることだった。
「怖い? 流石に明治神宮ダンジョンは」
「‥‥うん、少しだけ。明治神宮ダンジョンは日本人だったら誰でも知っているほどに危険なところだしね。でも、ちょっとワクワクもしてるかな」
僕がそう言うと、レナは笑って僕へ言った。
「ワクワクかー。まぁそうだよね、宗一郎さんに鍛えてもらってから初めてのダンジョンだもんねー」
僕はレナの言葉に頷いた。
「よしっ、じゃあまだ時間には余裕はあるけど、一足先にダンジョンへ行こっか」
「うん!」
———明治神宮か
(「はい」)
———フッ、今の君ならば心配することはない。ただ、気は引き締めていけよ。イレギュラーなことが起こらないとは言い切れないからな
(「そうですね、気を付けます!」)
———よし
そうして、僕たちはレナの家を出て、明治神宮へと向かった。外は昨日までとは違い、雨予報ではなかったけど、曇っていた。生ぬるくて、少し重い空気が漂っていた。
時刻はまだ、七時であった。
遅くなりました。そして、今回は話が短いです。すみません。
そう言えば、前話の付け足しですが、レナが倒したモンスターには魔石はありません。歩が倒したオーガには魔石はあります。これ以上はネタバレなので、これからの話を楽しみにしていて下さい。
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