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二十六話 シルバーダンジョンとレナ ③

戦い始めてから何分経ったのだろうか。私たちは尚、戦い続けていた。私はアイツに絶えず、攻撃をしている。

何度も首元や胴体の急所となる部分へ斬りかかった。しかし、アイツの皮膚が硬すぎてどんな急所を切っても、決め手になるほどの傷をつけることが出来ずにいた。

ただ、それはアイツも同じだった。とは言っても、アイツの場合は私に攻撃を当てることが出来ず、私を倒せずにいた。それに、仮に私に傷を与えてもノア君がいる限り、即死じゃない限りは私は死なない。

しかし、いくら傷を私が負わないとはいえ、アイツに対して決め手が無いというのも事実であった。

どうにかスタミナ勝負になる前に決め切りたいところ。


「こ、こんなのはは初めてダ。お、オ前にコ、攻撃ガ当たらナい。お、おまえ面白い」


「それはどうもー。まあ、今のままじゃ君の攻撃は永遠に当たるわけないよねー」

(‥‥私も決め手はないけどねー)


アイツは私にほとんど攻撃が当たっていないのにも関わらず、未だ戦いを楽しんでいた。全くイラつきを見せない相手はだいぶ戦いにくかった。

ハァ、ほんっとにやりにくいなぁー。


「コ、攻撃が当たらないナラ、も、もっト速くナってや、ヤル」


そういうと、そいつは相も変わらず、今までと同じ様に私へ向かって直線的に突っ込んできた。そして、右腕を私へ向かって放った。それを私は同じ様に躱そうとした。しかし、今まだとは少し変わったことがあった。私が攻撃を躱す瞬間に、アイツの右腕の振りが加速した。


「!! ・・・・急に速くなった?」


私はアイツの後方へ躱すことはできた。しかし、私の頬から血が流れていた。アイツの攻撃が私の頬に掠ったためだった。アイツは私に攻撃が掠ったとはいえ当たったことをひどく嬉しがっていた。


「や、やっとア、当たった。ド、どうだ??」


「確かに急に速くなったのは驚いたけど、掠っただけだよ? そんなんじゃ私は倒せないよ?」


血が流れていた私の頬は既に治っていた。ノア君がすぐに能力を発動してくれたおかげだった。

そう言えば、ノア君の能力についてまだ話してなかった。ノア君の能力はエンチャント•フルリカバーという名前の回復に特化した能力だ。

この能力は、即死の致命傷じゃない限り、全ての傷や怪我を治すことができる。しかもその傷というのは手足などが欠損した場合にも適応され、欠損した部位そのものを丸ごと治すことができる。

しかし、デメリットはある。それは、重症(手足の欠損)などを治せるのは一日に一回しかできない。それに加えて、無くなった部位を回復すると、治された人は一日の間、免疫により軽症であったとしてもこの能力によって回復を受けることが出来なくなってしまうということだった。


「ソ、それハ、おまえもお、同じダろう?」


「さぁ、どうだろうね? 私はまだ、力を隠しているだけかもしれないよ?」


「オ、お前の攻撃は、速いがお、重いわけじ、じゃない。現に、お、お前は致命傷をあ、与えられていなイ」


チッ、確かにここまで戦いが長引いたら、流石にバレるか。でも、今のままだと本当に決め手が無いんだよなー。


そんなことを私が考えていると、アイツは私へ突っ込んできた。しかも、さっきよりもずっと速いスピードで。それでも、私もまだ反応できる範囲だった。しかし、異変はここからだった。アイツは私が移動した場所へ攻撃を繰り出した。


「!! なっ!」


流石に私もこれには少し動揺してしまった。その結果、アイツの攻撃を避けきれず、持っていた。二本の剣でアイツの拳を受け止めた。しかし、その勢いを受け止めきれず、後ろへ少し飛ばされた。両脚に強く力を込めて、壁まで飛ばされるのを抑えた。

剣を持っていた私の両腕はビリビリと不快に痺れていた。

ノアくんがどこにいるのかは分からないけれど、直ぐに痺れが取れている辺り、サポートは存分に行なってくれている。

・・・・やっぱりノア君はサポートとしてめちゃくちゃ優秀だねー。


私がそんなことを考えていると、アイツがニタァと笑いながら話しかけてきた。


「どうだ? 驚いたカ?」


「そりゃあ、いきなり移動した場所にまで反応されたらね」


「じゃあ、もう一つお前に驚くことを教えテやる。オ、俺の能力は成長ダ。」


能力?! コイツ今能力って言った? モンスターが能力を持っている??!!


モンスターは能力を持たないことはこの世界の常識だ。まぁ確かに、マジックゴブリンなどは不可思議な魔法を使ってきたりするし、他にもそんなモンスターは沢山いる。

しかし、それらは私たちの持つ能力とは全くの別物なのだ。能力は人だけが持つことができる。そもそも、能力というものは人体のブラックボックスと言われている脳の力が覚醒したことによって生まれたものだ。そして、モンスターは脳を持たない。いや、正確には脳の様な器官はあるが、それはモンスターの核や魔石などのいろいろなものが混ざって固まったもので、人間のような純粋な脳では無い。

だから、能力を持てるわけがないのだ。この事実に私はある一つの答えが生まれたことに気づいた。このモンスターはもしかしたら、人間かもしれないということに。

いや、そんなはずない。コイツは変異種だ。だから、何かしらの要因で脳が生まれたか、能力の様なものが後付けされただけだ。そうだ。絶対にそう‥‥。


私が目の前のコイツは人間ではないと言い聞かせようとしていると、アイツは私に話し続けた。


「成長について教えてやル。この能力は文字通り俺が成長する。 だ、だから俺は戦えば戦うほど強くなれる。今の俺はお前の移動に対応できるということだ。それに、俺の言葉も流暢になってきてるだろ? それも成長の力ダ。」


アイツは私が打つ手がないと思ったのか、ニヤァと笑いながら私へ嬉々として能力について語った。


「どうだ? 絶望したか? お前は俺に勝てないだろ?」


「確かに、今のままじゃ勝てないねー。でもさぁ、これぐらいの異常事態であたふたするほど私は未熟じゃないんだよねー。能力が成長? そんなの、取るに足らない能力だよ。私が今まで、誰に鍛えられてきたと思ってるの?」


普通の冒険者だったら、モンスターのはずなのに能力を持っていることや、戦えば戦うほどに強くなることを知ったこの状況は十分に絶望に値するはずであった。

けどさ、相手が悪いよね。今ここにいる冒険者()は始動 レナだ。この冒険者はもう既に、何度も何度も何度も絶望をこの目で見ている。こんなのが絶望って言えるほど生易しい生き方はしていない。

そんな私に対して、この程度のイレギュラーは許容範囲内のことであった。


私は笑みを顔に浮かべながら、そう言った。そして、腰のポケットから、通信用の魔道具を取り出してノア君へ連絡を取った。


「ノア君、私が戦い始めたら、ずっと能力を私に掛け続けて」


「え、まさか!あれをやるんですか?! でも‥‥」


「やってくれるよね?」


ノア君はないか言いたげだったけど、それを遮って私は言った。


「‥‥わかりました」


「よし」


そうして私は通信用の魔道具をポケットへしまい直した。そして、私は一度深呼吸をした。


もう、モンスターが能力を持ってるだとかなんてどうでもいいや。人間だろうとモンスターだろうと関係ない。目の前の敵を殺そう。全力で。


「じゃあ、今から君を殺すね?」


「やれるものならやってみろ。お前じゃ、俺に勝てないだろうがな」


さっきまでとは違いアイツはもう自分の勝ちを確信している様だった。そして、私の力の全てを見たと思っているためかさっきまでとは違って、楽しんで戦っている様子はなかった。


「じゃあ、行くね」


今までとは違い、私から、アイツの元へ走り出した。私が走り出すとその場には、何体もの私がいた。それは私が能力を何度も使うことにより、残像を残しているためだった。


「残像? 確かに、今はスピードではお前に勝てない。だが、お前は俺に攻撃を与えられないだろう? 俺の皮膚を切れないだろう?」


「関係ないよ」


そう言って私はアイツの懐へ入ると剣をしまい、拳を握りしめた。そして、アイツの顔面へ思い切り叩き込んだ。

バゴンという音と共に拳を叩き込まれたアイツは玉座のあるところまで吹き飛び、玉座とアイツが衝突して、玉座は粉々に崩れた。

ガラァという音がしてアイツが壊れた玉座を振り払いながら、立とうとしたところで、私はアイツに近づいてもう一度拳を叩き込んだ。私の拳は血だらけになり、所々が青くなっている。多分、手のどっかの骨が折れたんだろう。しかし、ノア君によってその拳はすぐに完治した。アイツを見ると、アイツの顔も血だらけになっていた。


「?? な、何故お前が俺にダメージを与えられる?! さっきまでは傷すらつかなかったというのに!!」


「はは、だから言ったじゃん。まだ全力じゃないってさ」


「‥‥グッ、だったらそこまで成長して対応すればいいだけだ!!」


「アッハハ、君じゃ無理だよ。それにやめといたほうがいいよ」


そういうと、私はまたアイツの懐へ潜り込み、今度は腹部に拳を叩き込んだ。そして、能力を使いながら、四方八方、三百六十度あらゆる角度あらゆる部分に拳を叩き込んだ。しかし、そこまでの攻撃をして、私の体が無事なわけはなかった。少しずつ、ノア君の回復が傷がつく速度に間に合わなくなっていった。だんだんと私の拳に裂傷が増えていった。


「・・・・僕の回復が間に合わない! 頼む、レナさん。早く決着を‥‥」


アイツは私とは違って、傷が治ることは無かった。しかし、何度殴られても倒れずにそれどころか私の動きに対応し始めていた。

そして、ついに、私の右拳とアイツの左拳が同時に撃ち合った。私の右腕と肩甲骨が折れた。本来なら痛いんだろうけど、アドレナリン出まくりだし、骨折自体も、すぐにくっ付いて治るから特に気にすることは無い。


「どうだ? お前の全力も、意味がなくなってきた様だな?!!!」


私から絶望の表情なんか出るはずもなく、フッと笑った。


「誰がさっきのを全力って言ったのかな?」


そういうと、私はまた速度を上げた。


「は?」


アイツはやっと辿り着けたと思ったところからさらに先があったということに動揺していた。そして、その隙に私は左拳を、アイツの腹部へめり込ませるほどに撃ち込んだ。


「ゴッッハァ!!!!!!」


アイツは血を口から吐き出し、そのまま後方の壁に体を思い切り打ち付けた。


それでも、アイツはすぐに壁から起き上がると、私へ向かって突進してきた。そのまま私たちの撃ち合いは続いた。しかし、戦いの終わりは唐突だった。私の右足の筋肉からブチィという音がした。私の足の筋肉が切れた音だった。私はバランスを崩し、アイツの目の前で倒れてしまった。


「レナさん!!!!!!」


ノア君が叫ぶ声が聞こえてきた。目の前を見上げると、アイツはニタァと笑うと、拳を私へ振り下ろした。




———そしてこの後、この戦いは幕を下ろした。


すみません。更新が遅れました。

次回は明日か、明後日に行います。

ちなみに、レナサイドの話は次回で終わりです。

感想やコメントなどお待ちしてますのでよろしくお願いします!

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