二十四話 シルバーダンジョンとレナ ①
そして、私たちは組合を出て少し歩いたあと、シルバーダンジョンへ行った。
「それにしても、外はあっついねー」
「そうですね。まだ六月なのに」
「本当に嫌になるよねー」
「そういえば、レナさん。なんで急に僕とダンジョンに行こうとしているんですか?」
「あーそれはね、私がパーティーを組んだからだよ〜」
「えっ、レナさんが!? そ、そ、そうなんですか。ちなみにどんな人なんですか?」
「面白い子だよー。・・・・それに、私にとってとても大切な子」
私は僅かに神妙な顔つきをして、そう言った。
「そうですか‥‥。今度僕にもその人に合わせてくださいね!!」
「今度ねー」
私たちが会話をしながら歩いていると、前には冒険者が多く集まっていた。
「やっと着きましたね、レナさん」
「流石に人が多いねー。私目立つのは嫌なんだけどなー」
「じゃあささっとダンジョンへ行きましょう」
私たちは、ダンジョンの前でたむろしている他の冒険者たちを避けながらダンジョンの入り口へと着いた。私は金級のプレートを入り口にいた門番へ見せると、少しした後、ダンジョンに入る許可が下りた。
私たちは許可が出て直ぐに、ダンジョンの入り口から階段を降りて行った。
階段を降りた先の上層は薄暗い場所となっていた。中は、外とは違って日陰になっているからか涼しかった。
「じゃあ、攻略を始めようかー、ノア君」
「ハイッ!」
そして、私たちは攻略を始めた。まずやるのは、中層へ降りるために階段を探し始めること。
本来ならば、地図があるはずだけどこのダンジョンはまだ出現してから日が浅い。だから、私たち自身で探し出すしかなかった。陣形は私が前衛で、ノア君が後衛だ。
まぁ後衛と言っても、ノア君は基本戦わないけどねー。
「やっぱり地図がないのは面倒ですね」
「まぁでも高ランクのダンジョンはそれが普通だからねー。もう今更って感じかなー」
「このダンジョンが広くないことを祈るしかないですね」
「そうだねー。あっ、ノア君。準備して、前から来るよ」
ノア君は私の言葉を聞いて頷くと、異空鞄から、小さい杖を取り出した。
異空鞄というのは、宮家財閥が作ったもので、その名の通り、バッグの内側が異空間となっている。その見た目からは想像できないほどの量を入れることができる。
この鞄は次元や空間に干渉するモンスターの素材が使われている。そういうモンスターは割と強かったり、面倒な相手のため、異空鞄はそこそこの値段がする。
確か、容量が少ないのでも、一個五十万くらいだったかな。とにかく、とても高価なものには違いない。
ノア君が杖を取り出し、構えるのを見届けると、私も腰のホルダーから、二対の剣を取り出した。まぁ、剣とは言っても、ダガーの様なものだけど。
私の戦闘スタイルは、双剣を使った敏捷力をメインにした戦い方だ。だから、一撃の重さはそこまで高くないけれど、それを手数で補うものだ。
ま、一撃の重さは重くないとは言っても、それはあくまで金級の中ではってだけで、冒険者全体として見れば平均よりは全然上ではあるんだけど。
ともあれ、私が構えると、前から緑色の皮膚を持ち、人間の子供くらいの大きさのモンスターが現れた。俗にゴブリンと呼ばれるものだ。数は六体。それぞれが棍棒を持っていた。ゴブリンたちは私たちの姿を目視すると、走り出し、私たちへ襲いかかってきた。
「じゃあノア君、サポートはよろしくー」
そして、私は襲い掛かって来るゴブリンたちへ向かった。ゴブリンたちは六体全てが前方から速度を緩めることなく向かってくる。
私はその先頭のゴブリンの棍棒が当たる寸前に、そのゴブリンを切り捨てた。この程度なら、能力を使うまでも無い。残りのゴブリンは仲間の死に動揺することもなく、変わらずに突っ込んでくる。それらを私は一つ残らず切り捨てた。
あるものは袈裟斬りに、あるものは胴切りに、あるものは胸部をバツ印に切り捨てた。私が全てを切り終わった瞬間、奥から炎の塊が飛んできた。私がこれを避けたら、間違いなく、後ろのノア君に当たる軌道のものだった。
「まぁ、避ける必要ないんだけどねー」
私の愛剣はオーダーメイドの特注品だ。二本の剣の内、一つの力は、魔法などといったものを切り裂く。そして、右手に持っていた剣を振り下ろし、普通なら切れないであろう炎の塊を切り裂いた。切り裂かれた炎の塊は分裂すると、勢いが消え、すぐに消滅した。そして、
「空間跳躍!」
私はその炎の塊を飛ばした張本人がいる場所へと一瞬で跳躍した。そこには緑色の皮膚ではあるが、他とは違い、ローブとロッドを持ったゴブリンが一体そこにいた。
跳躍した勢いそのまま、剣を振りかぶり、状況を未だ把握し切れていないそいつの首を跳ね飛ばした。そいつの首から鮮血が吹き出し、倒れた。
「・・・・マジックゴブリンが上層にいるのかー。こりゃここのボスはめんどくさいやつだなぁー」
今倒したゴブリンはマジックゴブリンと呼ばれるもので、普通のゴブリンよりも知能を有し、魔法を使用してくる。
こいつはまだ低級のマジックゴブリンだったけど、上級のマジックゴブリンとなると、炎の塊を飛ばすなどの単純なものでなく、体を麻痺させるものや毒をかけるっていう迷惑極まりない魔法も使ってくるモンスターだ。
・・・・そして、マジックゴブリンが上層にいるダンジョンはほぼ確定でボスがアイツだ。アイツは、全てのゴブリンを統べる王。つまり、ゴブリン•キングだ。
そんなことを考えていると、後ろから、ノア君が走ってきた。
「レナさん!! 大丈夫でしたか? ってもう倒しちゃったんですね・・。あーマジックゴブリンがいるってことは、ボスは‥‥」
「うん、十中八九ゴブリン・キングだろうねー」
「うわー、だいぶ面倒ですね 」
「うーん、でもまぁ大丈夫かなー。それぐらいなら、切り倒せるしね.それに怪我をしたとしても、ノア君が回復してくれるしねー」
「そうですね、じゃあこいつらから魔石だけ取ったら、階段をまた探しますか」
「うん、そうしよう」
そして、私たちはゴブリンから心臓の位置にある魔石を取り出し、階段の探索にまた始めた。ちなみに、殺したモンスターの体はダンジョンに吸収される。だから、放っておいたとしても、死体は残らない。まぁ、吸収には少し時間がかかるけど。
そして、吸収の時間は大きさに比例する。だから、魔石を取り終えたモンスターの死骸は放置される。
そして、それから三十分後、私たちは中層へ続く階段を見つけた。見つけるまでに、ゴブリンや灰色の毛皮の狼が襲ってきたけど、特に危なげもなく、撃退した。
そして、上層から中層の階段までの道のりのマッピングも大方終わった。マッピングは冒険者の義務の様なものだ。例え自分がそのダンジョンを攻略する気だったとしても、マッピングは義務付けられている。
理由はボスを倒したとしても、ダンジョンが消えなかったりした際にマッピングをしていない場合、そのダンジョンに潜った意味がなくなってしまうから。
それにダンジョンにおいて情報は何よりも重要なものだ。だから、地図は高値で売れることもマッピングをする理由だった。
私たちは十分程度中層への階段で休息を取ってから、中層へと向かった。
中層は上層と変わらず、薄暗い所だった。しかし、先ほどまでとは違い、天井が三十メートル以上あり、とても広い空間だった。中層を探索していると、分かれ道を右に行ったところで、行き止まりの大きな部屋に出た。そこには、宝箱が存在していた。
「レナさん!!宝箱がありますよ!」
「ん? あー本当だ。じゃあ、開けに行こう」
「はい!」
ダンジョンには宝箱が存在する。ゲームの様にモンスターを倒すと、アイテムがドロップのような便利、と言うことはないけど、ダンジョン内にアイテムや武器が入っている宝箱はある。
そして、その中に人智を超えた技術で作られたもの、魔法を放つもの、果ては、聖剣や妖刀などと呼ばれるものまでが入っている。
過去に、ヨーロッパでは有名なアーサー王伝説に登場するエクスカリバー、日本では天下五剣の一つ鬼丸国綱なども見つかっている。
なんで、そんなものがダンジョンに、景品とでも言うかのように、宝箱に入っているのかは未だ解明されていない。
しかし、そういったものが入っていると言う事実がそこにある。そして、中に入っているものがエクスカリバーや鬼丸国綱だとわかる理由は宝箱を開けると、中にはその物ともう一つ、チープな紙が入っている。
ご都合な事に、そのダンジョンの存在する国の言葉で。そして、その紙には、その物についての説明と名前が書かれているのだ。
しかし、その紙に関しても、誰が書いたのかはもちろん、その紙自体が何で出来ているのかすらも解明されていない。しかし、細かいことはわかっていなくてもそういった事例があるということはより多くの冒険者を増やすことに繋がっている。
私たちは宝箱にある部屋に入って周りを見渡した。しかし、中には宝箱以外には何もなく、モンスターが出てくる気配もなかった。そして、私たちは宝箱を開けた。
「モンスターもいないみたいだねー。じゃあノア君、宝箱を開けていいよー」
「開けますよ!!」
ガパッという音と共に宝箱を開けると、そこには一つの液体が入った試験管のような物が入っていた。そして、一緒に入っていた紙にはこう書かれていた。
——— 龍血———
龍の血液。人間、モンスターに全てにおいて、適応する者以外は肉体の異常な細胞分裂に耐え切れず、全身が壊死し、死に至る。しかし、適応することができれば、その者は龍の眷属と化す。また、薬としても活用が出来る。
「なんでしょうね、これ。龍血? 僕は聞いたことないですけど、レナさんは何か知ってますか?」
「いやー、私も聞いたことないね」
「これ、どうしますか?」
「うーん、とりあえず、異空鞄を持ってるノア君が持っておいてよ。そこに入れておけば割れる心配もないし」
「そうですね。じゃあ、僕が持っておきますね」
「うん」
「じゃあ、下層への探索に戻りましょう!」
「だね、じゃあ行こっか」
そうして、私たちはこの部屋を出て、下層への階段への探索を続けた。
少し遅くなりました。まだレナサイドの話が続きます。次には多分終わると思います。いやー、でも、レナかっこいいですねー。双剣って憧れますよね。僕もやってみたい。まぁ、無理か・・・・。
とりあえず次回は、水曜日までに登校します。
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