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二十二話 地獄

sideゼロ


レナが僕と別れた後、僕は師匠と修行の素振りを始めた。そして、僕が素振りを始めてかれこれ二時間。刀を振った回数は一万回に達していた。もうこれだけで、僕の腕はパンパンになっていた。しかしそれでも師匠は厳しいままだ。


「おい、ゼロ! 腕が下がってきているぞ! 頭の位置まで腕を振れ!!」


「・・・・もうニ時間ですよ?!! どんだけ素振りだけをやらせるんですか!!」


「まだ足りないぞ。お前は、刀の持ち方や振り方がまるでなっていないからな。要するに基礎が全くなっていない。だから、体に覚え込ませているんだろうが。口じゃなく、腕を動かせ」


「グッ・・・・」


しかし、師匠が言っていることは正しかった。僕は剣道や剣術をやっていたわけじゃない。僕の剣筋はダンジョンで戦っているうちに形作られたもので、刀の振り方や体の移動の仕方など、基礎に関して一つも出来ていなかった。師匠曰く、それを覚えるだけで、威力や抜刀などが格段に速くなるらしい。だけど、面白くは無いし、全身をずっと使うから疲労が凄い。

それでも、師匠に逃げないと言ったからにはやるだけやるしかない。


「フッ! フッ!フッ!」


あまりに、シュールすぎる。ただひたすらに刀を振るだけ、第三者が見たらどう思われるんだろう。


「よし良いぞ、その調子だ。正しい姿勢を体に染み込ませろ。そして、ただの素振りと思うな。イメージしろ。前にいるモンスターを切り裂くイメージをしながらやれ」


「はい! フッ! フッ! フッ!」


それから二時間、合計四時間も素振りだけをひたすらに続けた。もはや、腕が痛いとか言う感覚はとうの昔に感じなくなり、腕の感覚がふわふわとしてきたところで師匠が言った。


「よし、素振りをやめて良いぞ。次は俺に切り掛かってこい。殺すつもりでいい」


「え? まだ終わりじゃない?」


「グダグダ言うな。さっさと来い」


「チッ!! ぶっ殺してやる!!!!!!」


「ハハ、気迫だけは良いな」


僕は素振りだけをやらされて、溜まったストレスを師匠はぶつけようと切り掛かった。僕はちょっとだけ、この四時間の素振りで僕は強くなれたと思った。そんな訳ないんだけれど。

しかし、僕が振り降ろした斬撃を師匠はいとも容易く受け流し、刀の峰で僕の胴を斬った。


「グッフッ!!!!」


「まだまだだな、ゼロ。・・・・それと、師匠に向かって殺すとはなんだ。次行ったら、峰打ちじゃ済まさないからな?」


師匠から圧を掛けてそう言われた。刀の刃の光が嫌に怖く見えた。


「うっ、、はい。それにしても、四時間も素振りやったのに全く意味ないじゃないですか!!」


「そんなもの一日二日で成果が出るわけないだろうが。積み上げなければ強くなれるわけがないだろう」


「そりゃそうですけど‥‥」


「安心しろ一ヶ月以内に、目に見えてお前を強くしてやる。お前が真剣にやれば一ヶ月後お前は今とは比べられないほどに強くなれる」


「今はあんまり実感が湧かないですけど、」


「まぁともかく、今日はこれで終わりだ。帰るぞ。いつまでも地面に寝てないで起きろ」


「わかりましたよ‥‥」


時計を見るともう既に時刻は五時であった。思ったよりも師匠の攻撃は痛かったが、よろめきながら、立ち上がった。

刀の振りすぎで腕はピクピクとしていた。僕はゆっくりと歩きながら、師匠の家へと向かった。師匠の家へとなんとか辿り着くと、師匠からバスタオルとフェイスタオルを渡された。

そして、重い足取りのまま風呂へと向かった。脱衣所で服を脱ぎタオルを持って風呂の扉を開けると、風呂は温泉であった。床は石のタイルで、檜風呂になっていた。それに加えて、水風呂とサウナまで付いていて、そこら辺の銭湯と比べても見劣りしないどころか、こちらの方がいいと言うレベルであった。


「すっご!!」


——ほぅ、これは中々だな


「すっごいなこれ。いったいいくらかかるんだ?これ」


——百万は下らないだろうな。おい歩、しかもただの温泉じゃないぞこれは低級の回復薬と温泉が混じったものだ


「え?」


——この湯船に浸かっていれば、筋肉疲労などは取れるだろうな


「それってとんでもないことなんじゃ‥‥」


——まるで本当に旅館だな


「ですね‥‥」


師匠の家の凄さに改めて驚きつつ、僕は回復薬が混じった風呂へ入った。


「あーー、疲れが取れるーー」


風呂は程よい温かさで僕の体を芯から温めてくれた。そして、風呂をじっくりと堪能した後、風呂を出ると既に菫さんが夜ご飯を作ってくれていた。

そして、その日はそのご飯を食べた後、すぐに眠りについた。

そんなスケジュールが次の日も、次の日も、次の日も、次の日も、次の日も 同じ日が続いた。僕はずっとただひたすらに素振りをし続けた。一日約十二時間程も。僕の掌はタコを通り越して皮膚が爛れていた。

それでも、僕はただひたすらに師匠が言う通りに刀を振り続けた。

そして、刀を振り続けるうちにわかったことがあった。今まで僕は刀を腕の力だけで振っていたけど、刀を振るときに、腕だけでなく、腰や足を使えば威力が高くなること。刀を持つ位置によって、剣撃に色々な種類を持たせることができることなど多くのことがわかった。

多くのことを知るうちに、今まで僕がどれだけ未熟であったかを思い知らされた。

けれど、毎回その日の修行の最後に師匠と戦うが、師匠に一太刀も浴びせることはできないでいた。そして、そんな日が続いて一週間と二日後のことだった。


「・・・・ゼロ、もう素振りをやめろ。今から、本当の修行を始める。よく頑張ったな」


素振りをしていた僕にそう師匠は話しかけた。


「やっとですか、師匠」


この時ばかりは師匠も純粋に、僕のことを褒めてくれた。しかし、本当の地獄はここからだった。


「これから、柳生新陰流の『一刀』の技を全てお前に教える」


「それって、師匠と初めて会った時に、使っていた技ですか?」


ボコボコにされた時のあまり思い出したくは無い時の事を頭に浮かべた。

確か、神速だとかっていう技だったはず。


「そうだ。あれを含めて全部で八つある」


僕は期待に胸が高鳴った。技を使っている自分を頭の中で思い描くと、必然的に気分が上がる。


「それを覚えれば僕は、ゴールドダンジョンへ行けるまで強くなれますか?」


「全てを扱えるようになれば、ゴールドどころかブラックも通用するまでにはなるだろう。だから、気合を入れろ」


「はい!!」


「それじゃあ、一式から始めるぞ。まずは俺が手本を見せてやる」


師匠はそう言って、試し切り用の鎧を持って来ると、それに刀を向けた。


「柳生新陰流 一刀 一式 虚空(こくう)


師匠が振り下ろした刀は、鎧を縦に切り裂いた。それだけで済むことはなく、師匠の刀の余波がその先の壁を切りつけ、壁を縦に傷付けた。

そう、師匠は斬撃を飛ばしたのだ。


「理解したか? ゼロ。これを今から身につけてもらう」


まるで、漫画やSFの中の出来事を目の当たりにした僕は心底、驚いていた。しかし、それと同時にこれを覚えれば、僕は間違いなく、今よりもはるか高みへ行けることを実感した。


「・・・・はい。死ぬ気でやります」


「よし、いい眼だ。そうだ・・・・、一つ忘れていた。これからの修行は死ぬ可能性もあるから、気をつけろよ?」


「は? ・・・・っ、、やってやりますよっ!!」


「じゃあ、始めるぞ」


僕の本当の修行が今始まった。そして、僕が全ての技を体得したのは、この日から、三週間後のことだった。


すみません。新陰流の技全てと、宗一郎の能力はまだ出せません。この前までは出すつもりだったんですけど、、、、。

色々と変更しました。もう一つ謝罪です。二十一話で宗一郎が歩に仮面をつけている理由を聞いているんですけど、その描写が抜けていました。本当にすいません。ちなみに、今は仮面を外して、修行をしてます。二十一話もすぐに変更するので、そちらもご確認ください。誠に申し訳ありませんでした。

次回は今週中です。

感想やコメントなどお待ちしてますのでよろしくお願いします!

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