二十一話 しばしの別れ
僕達は今、旅館のような部屋にいた。しかし、場所を移動したわけではない。場所はさっきまで、師匠と闘っていた場所と変わらない。なのに、そこには先ほどまでの殺風景なトレーニングルームから、見事なまでの和室になっている。話は十数分前に遡る。師匠と握手をした後、師匠に、これからどうするのかと尋ねられた。僕は、これからダンジョンへ向かおうとしていること、仲間を探していることなどを話そうとした。しかし、話が長くなりそうなのを師匠が感じてか僕へと言った。
「立ち話もなんだから俺の家に来い」
そう言った後、、師匠がスマホを取り出して何やら操作をした。すると、トレーニング室の奥の壁が自動ドアのように開いた。その奥には、大きい家があった。
「よし、行くぞ」
そう言って師匠がその現れた家へと歩き始めた。僕がその状況を目の当たりにして、びっくりしていると、横からレナが話しかけてきた。
「ゼロ君、びっくりしてるね〜。私も初めて見た時はそんな感じだったよ」
「レナはこれ知ってたの?」
「何回か来たことあるから知ってるよ〜。宗一郎さん曰く、星桜財閥が作った柳生宗一郎専用の家らしいよ」
「あー、星桜財閥かぁ」
星桜財閥は、前に少し話したけれど今日本にある四大財閥の一つだ。四大財閥は、星桜財閥、狐丸財閥、宮家財閥、市山財閥とある。中でも、星桜財閥は四つの中で一番力が強い財閥だった。テレビのCMや街中で、星桜財閥関連のものを見ないことは無いほどに有名だ。しかも、星桜財閥は、冒険者への支援に関しても力を注いでおり、民間人はもちろん冒険者からの支持もとても高い財閥だ。そして、星桜財閥は柳生宗一郎のスポンサーであり、宗一郎はここに所属していると言うのは有名な話だ。つまり、星桜財閥は名実ともに四大財閥の中で、トップの財閥であった。ちなみに、他の財閥は狐丸財閥から順に、狐丸財閥は銀行などの金融機関を取り仕切っている財閥で、民間人から支持が群を抜いて高い財閥だ。力としては星桜についで二番目となっている。そして、宮家財閥は元々、平安時代からある貴族の家でありダンジョンが出現してから、冒険者への支援や魔道具などの製造を担っている。ポーションなどもこの財閥が一番最初に作り出した。力は三番目となっている。そして、最後は市山財閥。正直、この財閥に関してはあまり良い噂は聞かない。詳しいことはよく分からないが、ヤクザや裏の仕事などの元締めとなっているらしい。そして荒くれや血気盛んな奴らが多いとも言われている。
「やっぱ黒級って、優遇されるんだね」
「まぁ、黒級は一つの軍隊みたいなものだからね〜。それこそ、黒級を持っているか持っていないかで国際的な面でも影響が出るほどだからね」
「まぁ確かにこれぐらいが妥当なのかな。むしろこれじゃ足りないぐらいか」
レナとそんな話をしているともう既に家の扉まで着いていた師匠が僕達の方を振り返って行った。
「おいお前ら、何してるんだ。早く来い」
そう言われて、僕はさっき師匠に吹っ飛ばされた時に外れた仮面を取ってから、師匠の家へと向かって行った。師匠が扉を開けると、玄関は派手すぎないけれど趣深く、まるで高級旅館を彷彿とさせるようなところであった。僕達が靴を脱いでいると、奥から女性が出てきた。
「お帰りなさい、あなた。それに、レナちゃんも」
「ああ、今帰った。ゼロ、紹介する。俺の妻の 柳生 菫だ。そして菫、こいつが俺の弟子になった 無明 ゼロだ」
どうやらこの女性は師匠の奥さんだった。師匠の奥さんは、白い着物を着ていて、凛とした佇まいをした綺麗な人だった。僕は慌てて、奥さんは挨拶をした。
「無明 ゼロです。宗一郎さんの弟子になりました! よろしくお願いします!」
そう言って、頭を下げると奥さんは笑って言った。
「丁寧にどうも、柳生 菫です。ゼロ君、この人、口下手だけどよろしくね」
「はい!」
「後、洗面所は右奥の所にあるから、手はそこで洗ってね」
そう言うと、菫さんは玄関の前にある扉を開けて、奥へと戻って行った。手を洗った後、僕達は師匠の部屋へと行った。師匠の部屋は一面中畳で中心に机と座布団が置かれており、その反対側に大きな液晶テレビが置かれていた。そして、奥の壁は、一面中本棚で、小説などがたくさん置かれていた。そして、時間は今へと繋がる。
「ゼロ、さっきの話の続きだが、お前達はダンジョンに行くんだよな?」
「はい。シルバーかゴールド辺りに行こうかなとは思ってます」
「そうか。ゼロ、今はまだゴールドはやめておけ。行くんならシルバーまでにしておけ。今のお前だと、ゴールドは少しきつい。レナがいるが、サポートにも限界はある。」
「そうですか‥‥」
「何、心配するな。お前ならすぐにゴールドレベルまでは行ける。お前は、一つ一つの行動は荒削りだが、剣筋や力、反応などが良い。すぐに、もっと強くなれる」
「はい!」
「それと、ゼロ、お前の刀は大丈夫だったか? 相当強く行ったから、折れたりしてないか?」
「それに関しては大丈夫です。良い刀を作って貰えましたし、折れるどころか傷一つ付いてないです」
「そうか」(「多分、ゼロの能力は固定するとかの能力だろう。さっき切った時にそんな感触だったしな。しかし、それを抜きにしても、あの刀はとてつもなく良いな。俺も欲しいくらいだ」)
師匠がじっと僕の刀を見ていたが、思い出したように、僕に問いかけてきた。
「それと、ゼロ。お前はなんで仮面を着けている?」
「これは‥‥、その、色々あったんです。だから、僕の顔が他の人にバレると面倒などになってしまうので」
「そうだよ、宗一郎さん。でも、ゼロ君が悪いことをしたわけではないよ。それは私が保証する」
「そうか、この件については俺は追求しない。ただ、ここにいるときくらいはその仮面を取っても良いだろう?」
「確かに、そうですね。じゃあそうします」
そう言って、僕はオーガの黒い仮面を外した。
「ああ。それとレナ。お前はこれからどうするんだ?」
「私? 私はゼロ君のパーティーメンバーだからな〜。ゼロ君がいないなら、私もダンジョンは行かないかな〜なんて」
「いや、お前はダンジョンに行ってこい。最近ずっと一人でダンジョンに行っていたんだろ? ゼロが修行してる間に、一人の癖を取ってこい」
「チッ、絶対言うと思った。はいはい、どうせ私に拒否権ないし。行ってきますよー」
レナはあからさまに師匠へ舌打ちをした。師匠はやれやれという感じであった。すると、レナが僕の方へ寄ってきた。
「ゼロ君は寂しくない? ゼロ君が修行してる間、私が居なくても」
「まぁ、うん」
「ひどいな〜ゼロ君。私はゼロ君と離れたくないのに」
「でも、僕は一刻も早く強くならないといけないから」
「そうだったね。じゃあゼロ君のために、私も頑張ってきますか」
「そういえば、ずっと気になっていたんですけど、なんでレナは師匠と繋がりがあったんですか?」
「なんだレナ。それも言ってなかったのか。全く、、、じゃあ俺から言おう。レナは俺の一番弟子だ。もちろん、冒険者としての意味だけどな」
「えっ、じゃあレナのあの強さは師匠の教えの結果なんですか?」
「いや、それはどうだろうな」
「まぁまぁ、ゼロ君。私も色々あったんだよ。それは置いておいて、宗一郎さん、ゼロ君の修行はいつから始まるの?」
あからさまにレナが話を逸らした。いつも陽気なレナらしくない行動に、少し躊躇した。だから、聞きたい気持ちはあったけれど、深くは聞かないでおいた。
「修行? そんなの今からだろ。昼飯を食べたら、修行を始めるぞ。あと、ゼロ。お前はここに泊まれ。そっちの方が修行の効率がいいからな」
「えっ? そんなの聞いてないんですけど」
「ああ、今言ったからな」
この時、僕はレナと師匠が似ていると思った。言葉足らずでメチャクチャなことを急に言い出す辺り、とても似ていた。
「頑張ってねゼロ君! 私も頑張るからさ!」
レナは意外にも、僕がここに泊まることに関して特に何も言わなかった。どうやら、僕に拒否権はなかった。だってこの中で一番弱いし。だから僕は頷くしか選択肢がなかった。
「はい‥‥」
そして、僕の地獄のような修行の日々が始まろうとしていた。
——応援しているぞ歩。頑張れよ
(「他人事ですか!」)
——実際他人事だしな。私も手助けはしてやるから、頑張れ
(「はい‥‥」)
そして、昼ごはんを菫さんが作ってくれて、美味しくそれを食べた後、レナはダンジョンに、僕と師匠は修行が始まった。そして、僕の最初の修行は、なんの変哲もない素振りだった。
と言うことで、歩の修行が始まります。これは、レナ視点と、歩視点が同時に進んでいくので、時々時間や場所が急に変わります。わかりにくかったらすみません。
ちなみに、宗一郎の家は馬鹿でかいです。値段は億を軽く超えてますが、財閥が全負担したので実質無料で買えてます。その代わりに作った当時、宗一郎はめちゃくちゃダンジョンへ行って財閥に貢献してます。でも、冒険者の中ではそんなに珍しいことじゃないです。むしろ割とよくあることです。
次回で、宗一郎の能力と、技のほとんどを解禁するつもりです。
次回は水曜日までに更新します。
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