07.ステート派からの脱出!
俺の名前は千里透真。
超能力者同士の戦い、サイカーバトルに出会った俺は、その戦いに巻き込まれていく。
化け物との戦いの中で、ステート派の比護守が現れた。
彼の指示で無事化け物を倒すも……まさかの逮捕!?
俺と鑑見さん、知念心の3人で脱獄を目指すも、あっけなくバレて…
俺は、ステート派からの勧誘を前向きに検討し、2人を置いて比護守と同行することとなった。
「ステート派って国の組織だろ? 簡単に俺を入れていいのか?」
小綺麗な部屋に案内された俺はそう聞いた。リヴァイバル派以外の全派閥から勧誘されている。無所属のサイカーってそんなに貴重なのか…?
「これは私の個人的な勧誘だ。君について調べていたんだけど、興味深いことに気づいてね…」
えっ俺調べられてたの!? 確かにあの戦いの時、俺の名前知ってたな…
「この15年間で唯一、東京への移住が認められた男。そして東京の外でたった1人のサイカー。
君自身も自分が何者か分かっておらず危険性もない。
なら、私の1番近い位置に置いておくべきだと思ってね。」
ん? 東京への移住が認められた? もしかして、東京に侵入したつもりが全部バレた上で許可されてたってこと!?
……天才でイケメンで紳士かつサイカーな俺はやっぱり特別だったってわけか。俺が東京に来るのは必然だったらしい。
「とか言って、人気も欲しいくせに。」
水色の髪の男がそう言いながらやってきた。確かこいつは…速水瞬だったかな。
「ああ。確かに私たちステート派は他の派閥に対して人気がない。国民から注目されている彼がステート派に来ると、支持も得られるだろう。」
人気、か……確かに、大学で見たサイカーバトルではリヴァイバル派やガーディアン派は応援されていたが、ステート派を応援する声は無かった。
ってか俺が注目されてるってまじ? 全然知らなかった…
「守ってほんと欲張りだよねー。まあ僕は、どうでもいいんだけど。」
速水瞬が俺を品定めするかのような目で見てくる。こいつには若干嫌悪感がある。
俺の中で、比護守の評価は高い。
化け物を倒しつつ俺たちを戦わずして捕らえた手腕。それでいて俺たちを助ける正義感。俺を勧誘する理由もこちらに開示してくれる。
正直、この男だけならステート派に入ってもいい。
だが…今は亡き吾妻雷太や、目の前の速水瞬はどこかチャラチャラしている。
国が力を管理するということは、力が国に集中することを意味する。その状況下で正しいことに力を扱えるのは、比護守だけだろう。
「…悪い。俺はステート派には入れない。」
俺はそう言った。最悪国が破滅しかねないからな。
その時、突然大きなサイレン音が鳴る。うるせぇ。
「何事だ!?」
比護守は直ちにスマホを取り出した。どこかと連絡を取っている様子。
「なんだと!? ブースターが盗まれた? 全く警備が雑すぎる!」
比護守はそう言ってすぐに外に出る。速水瞬も続いた。
鑑見さんと知念心がなにかしたのか? とりあえず、俺も行くとしよう。
◆◆◆
歩いていると、突然何も無いところで腕を引かれた。
めっちゃびっくりしたけど、口も塞がれて声が出せない。
「ようやく見つけた。」
その声と共に、何も無い所から人が現れる。透明化が可能なサイカー、玻璃美澄だ。ブースターを腕につけている。
「なんでお前が…?」
ブースターを盗んだのは玻璃美澄なのか? ここにいるはずのない彼女を見て驚いた。
「しー。任務中は雑談禁止。ついてきて。」
玻璃美澄は俺の腕を掴んで連行する。前もこんな感じだったな…
いとも簡単に外に出れた。玻璃美澄に案内された場所には、鑑見さんと知念心もいる。
「ありがと、みすみん。」
鑑見さんがそう言った。みすみんって呼ばれてるんだな。俺もそう呼ぶか。
「…それが任務だから。さあ、逃げて。」
みすみんはそう言って持っていた1台のブースターを鑑見さんに投げ渡した。
この2人は顔見知りなのだろうか? とりあえず今は、ここから逃げよう!
そう言って俺たちが出ようとした時、ビュンっとすごい音がした。目の前に速水瞬が現れる。
「脱獄なんて悪い子だねー。大人しく捕まった方が見のためだよ?」
速水瞬の腕にはブースターがついている。
「…これも任務。私が相手。」
みすみんがそう言って前に出た。彼女1人に任せるわけにはいかない。
俺は鑑見さんの方を見る。鑑見さんは頷いて、俺にブースターを渡してくれた。
「ブーストアップ!」
俺はブースターを腕につけ、叫ぶ。そして速水瞬を見た。
こいつの能力は、高速移動。それ以上でも以下でもない。
みすみんの透明化は通用するとして…もう1つ、知念心の念動力ならこいつに対処できるかもしれない。
俺がそのことを知念心に伝えようとした時、地面に黒い泥が現れた。
「戦え…そして進化しろ。」
抑揚のない謎の男の声がする。そして泥から化け物が現れた。
1対のハサミに、4対の足。硬そうな甲羅を持つそいつは、カニのようだ。
俺はカニ型の化け物を見る。甲羅にはどんな攻撃も通用しない。だが逆に、お腹側は弱いみたいだ。
「あー化け物かー。僕は雷太の二の舞はごめんだよ。じゃあね。」
速水瞬はそう言うと高速で走り、どこかに消えた。化け物を野放しにするなんて国としてどうなんだ。やっぱステート派に入らなくて正解だったな。
「視える。お前の全てが。…こいつの弱点は、お腹だ!」
俺は見た情報をみんなに伝えた。俺の能力で出来ることはこのくらいだ。
「分かった。私なら簡単に近づける。今回の任務じゃないけど仕方ない。」
みすみんはそう言った。以前、蜘蛛型の化け物を倒した時もそうだが、逃げずに戦っている。
「…いや、ダメだ。こいつに透明化は通用しないかもしれない。」
俺はこの化け物についての情報を見ていたが、1つ気になるものがあった。こいつは振動に敏感らしい。目は誤魔化せても、他でバレるのではないか…
いや待てよ、振動…? なら、答えは出てるか。
俺はブースターを取り外し、知念心に渡した。
「知念の念動力でみすみんを浮かせて、そこから仕掛けろ。」
俺がそう言うと、知念心はブースターを装着した。
「…みすみんって呼ばないで。」
みすみんがそう言った。鑑見さんは良くて、俺はダメなのか…
紳士たるもの、人が嫌がることはしない。仕方ない、みすみん呼びは心の中だけに留めておくとしよう。
「いきますよ! 玻璃さん!」
知念心がみすみんに手をかざすと、みすみんの体が浮き上がる。そしてみすみんは透明となり、姿を消した。
『ブラッドインジェクト。出力レベル2。』
化け物の腹が破裂した。みすみんがやってくれたのだ。
俺の能力で弱点を見て、そこを透明化できるみすみんが攻撃する。俺たちの能力は相性がいいのかもしれない。
化け物は消滅していった。速水瞬もいないし、これで家に帰れる!
俺たちは急いでその場から立ち去るのだった。
◆◆◆
大学付近まで、4人で逃げてきた。1人だと駅で迷子になっていただろうが、人がいると安心だ。
「よし、任務完了。これはあなたに。」
みすみんはそう言ってブースターを俺に渡した。
「いいのか?」
俺はそう聞く。イレイス派にとってはブースターも欲しいはずだ。
「それは今回の任務じゃない。それに、ステート派から奪ったものだから。」
そう言ってみすみんは立ち去った。ステート派に取られたブースターは全部で3台。そのうちの2台を取り返せたと言うわけか。
「待ってよみすみん!」
鑑見さんはみすみんを追いかけてどこかへ行ってしまった。彼女もブースターを持っていないけど、いいのだろうか。
「…では、僕もこれで。いつでもガーディアン派に遊びに来てくださいね。」
知念心も去っていく。俺たちは決して仲間という訳ではないからな。共闘こそすれど、立場は違う。
にしても、なぜみすみんは俺たちを助けてくれたのだろうか。それが任務と言っていたが、イレイス派にとっても俺たちが捕まっていた方が好都合のはず…
疑問は残るが、とりあえず俺も家に帰ろう。ここ数日帰れていないから、たまにはゆっくりしたい。
……迷子にならずに帰れますように。




