06.力を管理、ステート派
俺の名前は千里透真。
超能力者同士の戦い、サイカーバトルに出会った俺は、その戦いに巻き込まれていく。
リヴァイバル派からの帰り道、俺は化け物を生み出す謎の男と出会った。
この男を倒せば、化け物はもう生まれなくなるかもしれない。
俺はこの男と対峙することを決めた。
「貴様はなぜ、この地に現れた。」
謎の男がそう言い、こちらへ迫る。紫色の剣を生み出し、手に持っていた。
…剣って、流石にやばくね? 俺は振るわれた剣をなんとか躱し、謎の男に対して拳を振るう。
だが、それは簡単に避けられた。俺は続けて蹴りを放つ。それも避けられる。
相手が剣を振るう。俺はそれを躱した。
…こいつ、俺と本気で戦う気が無さそうだ。こちらへの攻撃は、全て俺でも避けられるようなものばかり。何かを探っているのか?
「この地を立ち退くか、永遠の眠りか…選ぶがいい。」
謎の男がそう言ってくる。だが生憎、俺は東京から出る気はない。
「俺はまだ、ここでやることがある。まずは化け物を…お前を倒す!」
俺はブースターのボタンを押す。
『ブラッドインジェクト。出力レベル2。』
最大出力のブラッドインジェクトだと、倒れてしまう。だが、出力を抑えることでそのリスクも減るはずだ。
俺は拳に力を込め、振るう。
「邪魔が入った。命拾いしたな。」
謎の男がそう呟き、消えた。俺の拳は空を切る。
邪魔が入った? ここには誰もいないような…
「千里さん! 化け物が出たって…」
後ろから声が聞こえた。後ろを向くと、知念心がいる。
あの男は知念心が来ることを察知して消えたのか…俺と鑑見さんの前には姿を現したが、なるべく他の人に姿を見せないようにしているのか?
…というか、化け物。鑑見さん1人に任せてしまったが、大丈夫だろうか。
俺は化け物の方へ駆けていく。知念心もそれに続いた。
◆◆◆
「くっ…手強い…」
鑑見さんが地面に這っていた。こいつに限らず化け物は、かなり手強いものが多い。
俺はカマキリ型の化け物を見る。こいつの弱点は…首か。だが、首に辿り着くには、2本の鎌を回避しなければならない…
「鑑見さん! 後は任せて!」
俺はそう言う。勝てる見込みはないけど、勝つ。
「僕も手伝います!」
知念心はブースターを装着し、ブーストアップと唱えた。複数人なら、まだチャンスはある。
「私も…戦う…」
鑑見さんが立ち上がった。無茶はしないでほしい。
「ちょっと、血が足りないだけだから…」
鑑見さんは立ち上がる。以前タコ型の化け物から逃げなかった時も思ったが、なかなか度胸がある。
「ただ、負けず嫌いなだけだよ…!」
鑑見さんがそう言う。俺に触れてないけど、ブースターを使ってるからか心を読めるのか…?
とりあえず、今はあいつに近づく方法を考えよう。2つの鎌に対して、俺たちは3人。なら、2人がそれぞれ引き付けて、残った1人が決めればいい。
「知念! 首を狙え!」
俺は知念心にそう言った。俺はさっきブラッドインジェクトを使ったし、鑑見さんも消耗している。化け物に攻撃するのは知念心が適任だろう。
知念心は頷き、前を向いた。鑑見さんも俺の考えを読んだのか、既に動き始めている。
「いくぞ!」
俺の前に鎌が振るわれる。俺は必死に躱した。
今だ、決めろ…知念!
知念心がブースターに手をかける。だがその時、化け物が飛び立った。
思わぬ行動に、3人とも吹き飛ばされ、1箇所に纏まる。特に鑑見さんはダメージが限界なようで、ブースターが地面に転がった。
そこにすかさず、化け物は鎌を振るった。
……まずい!
「ブーストアップ!」
ガキーンと物凄い音が響く。突然目の前に走ってきた男が、落ちていたブースターを拾って装着。俺たちを守ったのだ。
「…間に合ったな。」
その男を見ると、情報が流れてくる。比護守…バリア能力を持っているようだ。
茶髪の七三分けに、メガネをつけたスーツの男。
「知念が最大出力でブラッドインジェクトを千里に使え。念動力の反発を使い一気に相手の懐へ潜り込み、そこを千里が決めろ。私が押さえている今のうちだ。」
比護守がそう言った。今はその作戦に従うしかない。
「分かりました! 行きますよ!」
知念心がブースターのボタンを押す。
『ブラッドインジェクト。最大出力です。』
俺に手をかざすと、俺がもの凄い勢いで飛ばされる。
うわっこれは酔いそうだ…
化け物に激突する直前に、俺はブースターのボタンを押す。
『ブラッドインジェクト。出力レベル2。』
俺は拳に力を込め、化け物の首を殴った。化け物に無事命中し、断末魔をあげて消滅する。
なんとか…勝てたな…
俺は比護守の元へ降り立った。鑑見さんと知念心は倒れている。
俺も、クラクラしてきた。
「よくやった。ステート派の名において、お前たちを逮捕する。」
比護守がそう言うが、俺はよく分からなかった。なにも、考えられない…
◆◆◆
「はっ! …ここ、どこだ?」
目が覚めると、牢屋の中にいた。一体何がどうなってる?
「あ、目が覚めた? どうやら私たち…捕まっちゃったみたい。」
鑑見さんがそう言った。あの戦いのあと、比護守に捕まったのか…
所持品を確認するが、ブースターはなかった。
「ステート派…ブースターは国が管理するべきという派閥です。」
知念心が俺にそう言った。ステート派。確か、吾妻雷太の所属していた派閥だったはずだ。
その時、牢屋の外から声がする。
「その通り。力は個人が持つものではない。僕たち国家が管理し、正しく使うんだよ。」
そちらを見ると、水色の髪の男がいた。
「…速水瞬。ステート派の1人で、高速移動の能力を持っている人です。」
知念心が解説する。速水瞬は「はーい」と手を振った。
力は国が管理するべき…その意見も分かる。だがそれは、国が絶対的に正しい場合に限る。
俺は吾妻雷太を思い浮かべる。あの時の彼は、ブースターに執着していた。自分をエリートだと言うプライドもあった。
…正直、そんなやつにブースターを持たせるような派閥は信用できない。
「君たちからブースターは回収したから、囚人生活頑張ってね! 死刑じゃないだけありがたく思いなよ?」
速水瞬はそう言ってスキップをしながらどこかへ行った。
このままずっと牢屋の中はごめんだな。透視と念動力と読心。ブースターはないが、3人の力でなんとか脱獄するしかない。
◆◆◆
俺たちの脱獄計画はこうだ。俺の透視能力で見つけた最短の脱獄経路。その経路には鍵が必要だから警備員から知念心が念動力で取る。
警備員の来る時間帯は、食事の時間に鑑見さんが警備員から聞き出した。触れた者の心を読む能力で察知したのだ。
時刻はもうすぐ21時。そろそろ警備員が巡回に来る時間だ。
トントンと足音が聞こえる。よし、やって来た。
警備員が通り過ぎる直前、知念心が手を突き出す。警備員のポケットから、鍵がふわりと浮かび、こちらに来る。音1つ立っていないため、警備員は気づいていなそうだ。
そして、24時。脱獄の時間だ。知念心が念動力で、外側から牢屋の鍵を開ける。
そして監視の目を掻い潜りながら、ある扉を開けた。
そこを通過すれば外に出られる。そしてマンホールから下水道に行けるはずだ。
ガチャリ。
ドアを開けて、そこに入ろうとする。だがそこに、比護守が待ち構えていた。
「いくらサイカーとはいえこうも簡単に脱獄するとは。警備体制に問題ありだな。」
比護守はそう言った。
「俺たちを捕らえるやり方が卑怯だぞ。」
俺はそう返す。先程の戦いで比護守に助けられたのは事実だが、捕まえるのは話が違う。
「私もそう感じていた。だが、ブースターを奪うためなら仕方ない。」
比護守はそう言う。争奪戦という体で見れば、かなり理にかなっている。
「それと…千里透真。吾妻を助けようとしてくれていたと聞いた。感謝するよ。」
比護守がそう言った。そんなことまで伝わっているとは…
「私、帰らなきゃ。お店の手伝いがあるんです。ここから出してくれませんか?」
鑑見さんがそう懇願する。元々彼女は俺の護衛のために来ていた。せめて彼女だけでも…
「リヴァイバル派は1番危険だ。大人しくしていてくれ。」
国としての立場があるステート派にとって、力で世界を支配しようとするリヴァイバル派は敵視されてもおかしくない。
「ガーディアン派もだ。力は個人が持つべきものでは無い。大人しく国に従うんだ。」
ガーディアン派の思想は力によって人々を守ること。ステート派とは親和性がありそうだが…
「俺は? どこにも属していないんだけど。」
俺だけは別なはずだ。力をどう使うとかではなく、ただ真相を知るため、そして化け物を倒すために動いている。
「お前は、私たちの元へ来るといい。吾妻を救おうとした行動は国からも高い評価を得ている。」
比護守がそう言った。だったら最初から牢屋に入れるなよ…
それはそうと、ステート派の実態次第では加入を検討してもいいのかもしれない。
吾妻雷太の印象こそ悪かったが、この比護守は至極真っ当だ。更に、国としての立場を築ければ、親父を探しやすくなるはずだ。
「…分かった。前向きに検討する。」
俺はそう言って比護守について行くことにした。鑑見さんと知念心は警備員に連行される。
紳士たるもの、顔見知りを見捨てはしない。2人には借りもあるしな。俺は別れ際、鑑見さんの手を握って絶対助けると念じておいた。




