04.力は不要、イレイス派
俺の名前は千里透真。
超能力者同士の戦い、サイカーバトルに出会った俺は、超能力を強化する装備…ブースターを手にして戦いに巻き込まれる。
装備は人々を守るために使うというガーディアン派の勧誘を断り、ガーディアン派の1人、癒川快斗と戦いが始まった。
そして、俺たちは突然現れた化け物相手に一時休戦。そこに透明化の超能力を持つ女性、玻璃美澄が現れ、化け物を倒すと俺をイレイス派へと連行するのだった。
「なあ、イレイス派の目的ってなんなんだ?」
無表情な女性、玻璃美澄に腕を引っ張られながら俺は街を歩いている。そんなことしなくても逃げないというのに、用心深い。
「雑談は任務には含まれてない。大人しくついてきて。」
玻璃美澄はこちらを見もせずにそう言った。なんて融通が効かないやつなんだ。
ブースターの使い方を巡って、サイカーたちは4つの派閥に分かれた。ガーディアン派は人々を守るために力を使うという考えだったが、イレイス派はどうなんだろう。
そんなことを考えながら歩いていたら、ある建物の前で玻璃美澄が立ち止まった。
「ここがイレイス派の基地。さあ、入って。」
流石は東京。ビルもでかい。俺はそのビルへと足を踏み入れた。
◆◆◆
「おお、来たか。こいつが新しいサイカーかな?」
俺を出迎えていたのは、左目を黒い眼帯で覆った前髪の長い男。明らかに偉そうな立ち振る舞いから察するに、こいつがリーダーだな。
「これで私の任務は完了。では、私はこれで。」
玻璃美澄はそう言うと立ち去ろうとする。無愛想な仕事人間って感じなのだろうか。
だが、その出口をある女性が塞いだ。
「あらあら…みすみん、もう帰るの? せっかくだし、もう少し居たらどうかしら?」
着物を身につけて扇子を持った女性。時代錯誤なその服装に、一瞬困惑する。高貴な身分なのだろうか。
「…みすみんって呼ばないで。私の仕事はこれで終わり。今日はもう帰る。」
玻璃美澄はそう言うと、ブースターを着物の女性に渡した。
「よい、予兆。雇われのサイカーはこの場には不要。帰してやれ。」
眼帯男が偉そうな態度でそう言う。雇われたサイカー…そういうのもあるのか。
玻璃美澄は部屋を出ていった。最後にチラッと見えた顔は若干笑っているようにも見えた。
「んで、俺を連れてきたのには何か用があるんだろ?」
眼帯男と着物女、どちらもただ者では無さそうだ。
「おうおう、単刀直入に言うが…お前、イレイス派に雇われないか? 金は弾むぞ?」
眼帯男がそう言った。なるほど、面白い。玻璃美澄もこうして雇われたってわけだな。
「まずは情報が無いと決められないな。イレイス派の目的とは一体なんだ?」
この状況なら、情報は全て聞き出せるはずだ。眼帯男が口を開いた。
「よかろう。…俺は影宮幽。このイレイス派とは、ブースターを全て集め、破壊することを目標にしている。」
眼帯男の名前は影宮幽…よし、覚えた。ブースターを破壊するという理念も、イレイス派の名前通りだな。
「妾は予兆未来。汝もイレイス派に来るといい。なかなか楽しい職場だぞ?」
着物女…改め、予兆未来がそう言った。表情は笑顔だが、目は笑っていない。いい職場には見えないな。
「ブースターを破壊する、か。一体なぜだ?」
俺は影宮幽にそう聞く。化け物の脅威がある今、ブースターがないとどうしようも無い。
「力とは、争いを生む。なら、その根本となる力を無くせば良い。真に平和を願うならな。」
影宮幽はそう言った。理屈としては分かるが、化け物がいる今、それは悪手ではないか?
「汝の業務内容は1つ。化け物どもと戦え。あの化け物が、サイカーバトルを邪魔しておる。」
予兆未来が扇子を閉じ、こちらに向けた。別にブースターを取ってこいとは言わないんだな。
「化け物どもはいずれ消えるであろう。15年前、突然やつらは消えたみたいだからな。」
影宮幽がそう言う。15年前にも化け物がいたのか…15年前、俺は何をしていたかな。
よく思い出せない。3歳の頃なら忘れててもおかしくないか。
「化け物について、詳しく教えてくれないか?」
俺はそう聞く。ここで聞けるだけのことは聞きたい。
「うむ…少々調子に乗っておるな。妾たちは、決して情報屋ではない。」
予兆未来が不機嫌な顔をした。しまった、少し聞きすぎたか。
「ここに来た時点で、お前の運命は2つだけだ。俺たちに雇われるか、ブースターを残し、ここで命を落とすか。
そろそろ、結論を出してもらおうか?」
影宮幽がそう言う。こいつはなんでも話してくれそうだったが、予兆未来に邪魔をされたな。
ここは雇われるフリをして抜け出そう。嘘をつくのは紳士らしくないが、仕方ない。
そんな風に考えていると、予兆未来がブースターを腕につけた。
『起動コードを入力してください。』
「ブーストアップ。」
『認証完了。』
突然、予兆未来はブースターを使用してこちらを見た。そしてニヤッと笑い、声を出す。
「こやつはいずれ裏切る。そう未来が見えた。」
予兆未来がそう言った。なるほど、未来予知か。
「ほう? なら、消しておこう。」
影宮幽が右手を横に伸ばすと、予兆未来がそこに自分のブースターを投げ渡す。
影宮幽はそれをキャッチし、左腕に装着する。
「ブーストアップ。」
影宮幽もブースターを使用した。戦いは避けられなそうだな。
俺もブースターを腕につける。ブーストアップと唱え、影宮幽を見る。こいつは…影を操る能力者らしい。
「場所を変えようか。」
影宮幽がそう言った。すると、俺と影宮幽の影が2人を飲み込んだ。気づくと、広場に移動していた。
さて、どう対処するか…俺は考える。そして再び影宮幽を見る。
すると影宮幽は、自身の影に入って姿を消した。あれ、どこ行った?
「ふっ、所詮は素人だな。」
背後から声が聞こえると共に、背中に痛みが走る。俺の影に移動し、攻撃したのか。
影の間を移動するなら…近づいたところを、ブラッドインジェクトで決めるしかない。
「面白そうなことやってんじゃねぇか! 俺も混ぜてくれよ!」
急に横から人がやって来た。以前見たワイルド男だ。そちらの方を見ると、彼の名は義炎爆という情報が見える。
義炎爆はブースターを身にまとい、ブーストアップと大きく叫んだ。
凄まじい爆発音と共に義炎爆がこちらに迫る。
「お前、鑑見と一緒にいたヤツだろ? まさかお前も、サイカーだったとはな!」
火の玉を握りつぶし、拳に炎を纏う義炎爆。あまりの迫力に、俺は為す術もなく吹き飛ばされた。
「ぐっ…強い。」
炎を操るというシンプルな能力だが、使い手が強すぎる。以前、吾妻雷太を圧倒した時にも感じたが、こいつは強い。
「リヴァイバル派は1番の危険因子だ。ここでお前を倒すとしよう。」
影宮幽がそう言って義炎爆に手をかざした。義炎爆の影が彼を掴み、離さない。
すかさず影宮幽はブースターのボタンを押した。
『ブラッドインジェクト。出力レベル2。』
影宮幽が自分の影に入り姿を消す。
「その程度で、やられるかよ!」
義炎爆はそう言うと、炎を体から吹き出した。全方位に炎が噴出され、影が消える。
そして地面から飛び出た影宮幽に対して、回し蹴りをした。
なんてハイレベルな戦いなんだ。これが、サイカーバトルなのだろう。
「くっ…ここは撤退とするか。」
影宮幽はそう呟いて影に溶け込み、消えた。
義炎爆がこちらに迫ってくる。
「分かっただろ。お前に戦いはできない。さあ、ブースターを渡しな。」
そう言って俺の腕を掴み、ブースターを取り外した。
俺の戦いはこれで終わり…こんなに強いやつがいる中で、ただの田舎者が戦えるわけも無かったんだ。
「ちょっと爆、いきなりそれは酷いよ!」
声がした。その方を見ると…美少女、鑑見さんがいる。
「話を聞くに、確かにこいつは、なかなか度胸がある。良いだろう、俺たちと共に来い。」
そう言って義炎爆がどこかへ行く。鑑見さんはこちらを見て、手を差し伸べる。
「ごめんなさい。よかったら、私たちの…リヴァイバル派に、一度来てください。」
鑑見さんがそう言った。え、彼女もサイカーだったの!?
…とりあえず、ブースターを取られた以上、行くしかない。鑑見さんに聞きたいこともある。
俺は、義炎爆の背中を追いかける形で、鑑見さんの手を取り、一緒にリヴァイバル派へと向かうのだった。
…美少女の手を握っているから嬉しいなんて気持ちは、これっぽっちもないからな!




