03.力で守れ! ガーディアン派!
俺の名前は千里透真。
超能力同士の戦い、サイカーバトルを観戦していたら、突然そこに化け物が出現した。
俺はある不思議な腕輪を使ってその化け物と戦い、勝利したのだ。
戦いの後に眠気に襲われた俺は、知念心というサイカーによってここ、ガーディアン派に運ばれたのだった。
「俺は千里透真だ。助けてくれてありがとな。」
知念心という男が俺の事を心配してくれていたので、そう返す。
「いえ、お気になさらず。ところで貴方は、サイカーですか?」
知念心がそう聞いてくる。東京には、超能力者が何人もいてサイカーと呼ばれているらしい。
「ああ、どうやらそうらしい。だが俺はバトルについて何も知らないんだ。詳しく教えてくれないか?」
あのブースターとか呼ばれてた腕輪を使って、化け物を倒せた。透視能力もあるし、俺も恐らくサイカーなのだろう。
「新しいサイカー…? まだそんな人がいたなんて。」
知念心が声を漏らす。東京に来たばっかりだからな。
「いーじゃんいーじゃん! 心っち、こいつをうちに引き入れようよ!」
急に陽気な男の声がしたと思ったら、1人の男がスキップしてやってきた。
俺がここで目覚めた時に話しかけた男だろう。オレンジの髪に白衣を着ている。
「引き入れる? ガーディアン派に来いってことか?」
俺はそう聞いた。そもそもサイカーバトルの目的ってなんなのだろうか。派閥があるみたいだけど…
「おーっと失礼失礼。俺は癒川快斗。このガーディアン派のサイカーさ。」
陽気な男…癒川快斗がそう言った。各派閥に複数サイカーがいるのだろうか。
「何も知らない人に急にスカウトなんて、快斗さんぶっ飛んでますね。まずは説明しないと。」
知念心がそう言って俺を見る。今なら、質問に答えて貰えそうだ。
「そもそもサイカーバトルとはなんなんだ? なぜ派閥に別れて戦っている?」
サイカーバトル。東京では普通に行われているようだが、地元では見たことも聞いたこともなかった。
「それは…」
「説明しよう!サイカーバトルとは…」
知念心が言いかけたのを癒川快斗が遮って説明を始める。白衣を着て、いかにも説明役って感じだ。
「超能力を強化するサイキック・インジェクターを奪い合う、命懸けの戦いさ!」
癒川快斗が手を広げてそう言った。サイキック・インジェクター?なんだそりゃ
「一般的にはブースターって呼ばれています。世界に4台しかない、貴重な腕輪で…うちにはこれしかありません。」
そう言って知念心が自分の腕輪を見つめた。超能力を強化する…だから、これを使うと透視だけでなく、相手の情報まで見えるようになったのか。
…てか、世界に4台!? めちゃめちゃ貴重だな。
「3年前に突如現れたこの腕輪の扱いをどうするかで、サイカー達は4つの勢力に分かれた。」
癒川が説明を続ける。この腕輪…ブースターを使った時のパワーは凄まじかった。力というのは、往々にして争いを産むものだ。
「そして僕たちガーディアン派は…腕輪の力で、人々を守ろうと考えた派閥なんです。」
力を守るために使う…それがガーディアン派か。名前通りだな。
確かに、あんな化け物みたいなやつが現れたらブースターがないと対処できないかもしれない。
なるほど…理解してきた。各派閥は、4つのブースターを手に入れようとして戦っている。それがサイカーバトルというわけだ。
「そうそう。もし君さえ良ければ、ガーディアン派に入ってくれない? ちょうど、欠員もいる事だしさ。」
癒川快斗がそう言って俺の肩に手を乗せる。急に宗教の勧誘を受けている気分だ。
「…助けて貰ったところ悪いが、断る。まだよく知らないしな。それに、俺は俺でやるべき事もある。」
他にも派閥はあるはずだから、1つの派閥の意見だけ聞いて決める訳にはいかない。
そもそも俺は、超能力の起源と父の行方を知りたいだけだ。化け物は狩るが、ブースター争奪戦に巻き込まれたくはない。
「残念です…気が変わったら、いつでも教えてくださいね。」
知念心がそう言う。知りたいことは大体分かった。
とりあえず、ここにいる理由はもうない。考えを整理するためにも、1人になろう。
俺はガーディアン派の基地を立ち去ろうとする。
「それから!」
うわっびっくりした。急に後ろから話しかけられた。
「遡先現…もしこの名前を聞いたら、すぐに連絡してください!」
知念心がそう言った。遡先現…さっき言ってた欠員とやらだろうか? 一応、覚えておこう。
俺はガーディアン派を出て、考えをまとめる為に歩き回るのだった。
◆◆◆
サイカーバトル…派閥同士の争い…ブースター…そういえば、鑑見さん何か知ってそうだったな…
鑑見さんに会えたら何か聞きたいけど、校舎が破壊されたから大学もしばらくないみたいだ。
俺の楽しい学園生活は、しばらくお預けだな。
そんなことを考えていると、トントンと肩を叩かれた。
後ろを向くと、癒川快斗がいる。
「どうしたんだ? 忘れ物でもしていたか?」
なにか忘れてたっけな…でも、届けてくれたならありがたい。
「心っちはああ言ったけど、ブースターを持っている君を野放しにするなんて俺的には有り得ない。
ガーディアン派に属する気がないなら、そのブースターは貰うよ!」
そう言って癒川快斗はブースターを腕につけた。知念心の使っていたものだろう。
驚いた。人々を守るためにブースターを使うと言っていたガーディアン派が戦いを仕掛けてくるとは。
ブースターを持つってことは戦いを仕掛けられるってことなのか。
俺もブースターを腕に装着する。
『起動コードを入力してください』
2人のブースターから無機質な声が響く。起動コード…確か、アレだな。
「「ブーストアップ!」」
俺たちは同時にそう言った。左手に痛みが走る。
俺は癒川快斗を見る。彼の情報が頭に流れてきた。
へぇ、こいつの超能力は、回復能力なんだな。戦いには向いていないように思えるが…
俺たちは睨み合う。戦いに向いていないのは、俺も同じ。炎や雷を出せたり、念動力が使えるわけではないからな。
ブースターのボタンを押すと強力な技が出せるけど、この前はあれを使った直後に倒れたから…どんなリスクがあるかも分からない。
「変数は、消え失せるがいい。」
俺たちの間の緊張を、抑揚の無い声が破った。
この前、サイカーバトルで聞いた声と同じだ。
俺たちの間に黒い泥のようなものが現れる。また化け物が生まれるようだ。
俺は周囲を見たが、辺りには癒川快斗以外は誰もいない。あの声の主は誰なんだ?
泥から化け物が生まれた。以前はタコだったが、今回は蜘蛛みたいだ。
癒川快斗は化け物に向かって走る。俺よりは化け物を倒すことの方が優先なようだ。俺も同意見だ。
蜘蛛型の化け物の情報を見る。糸に絡まれると身動きが取れなくなる。そして、毒を吐くみたいだ。
化け物が癒川快斗に毒を吐くが、癒川快斗はそれをものともしない。食らってすぐに回復しているのだ。
回復持ちが故、ダメージを食らっても大丈夫という考えだろうか…自分を大切にしないやり方は、紳士とは程遠いな。
そして癒川快斗は化け物の背後へ回る。口から吐く毒は、背後には届かない。
だが、上手くはいかない。突然、化け物はお尻から糸を出した。いくら回復持ちでも糸はどうしようも無い。
「危ない!」
咄嗟に体が動いていた。俺は癒川快斗を庇った。糸に絡め取られ、身動きが取れなくなる。
自分を大切にしないのは、俺も同じかもしれないな。
「なんで庇うんだ! 君が犠牲にでもなるつもり? そんなの、絶対認めない。」
感謝されるかと思っていたが、癒川快斗は怒っている。犠牲を認めない、か…
「大丈夫だ。なんとかなる!」
俺はベタベタする体をなんとか動かし、ブースターのボタンを押す。
『ブラッドインジェクト。最大出力です。』
ブースターから無機質な声が鳴る。出し惜しみしてられないな。
力が漲る。俺は糸を引き裂いた。よし、このままやつを倒そう。
俺は1歩踏み込む。だが、突然目の前がクラっとした。体に力が入らない…
「ああもう! そんなに簡単にブラッドインジェクトを使うな! あれは血を使いすぎる!」
俺の横で癒川快斗がまた怒っている。薄々感じてはいたが、やっぱり血を使うんだな、これ。
癒川快斗は、自分のブースターのボタンを押した。
『ブラッドインジェクト。最大出力です。』
そして俺に手をかざす。俺はみるみる元気になっていった。
……って、使ってんじゃねぇか。人には使うなって言っておいて。
元気になった俺は起き上がってそう言おうとした。だが、今度は癒川快斗が倒れる。
ああもう、自己犠牲の椅子取りゲームかよ。…でも、俺とこいつは似てる。
「後は任せろ。ゆっくり休んどけ。」
俺は癒川快斗を横目に化け物を見た。こいつの弱点は…腹か。毒と糸をかいくぐりながら、腹へと辿り着けばいいわけだな。
「…視える。お前の最期が。」
俺はかっこいい決めゼリフを言った。さっき考えた、俺の決めゼリフ。
まあそれは置いといて、とにかく王手だ。
俺は化け物の周りを走りつつ、糸や毒を吐かせる。いくら化け物の糸と言えども、吐く量に限界はあるからな。
蜘蛛型の化け物のお尻から出ていた糸が途切れた。よし、これで腹に近づける。
俺は化け物の腹の方へ駆けていく。これで決まりだ。
ブフッ
凄い音と共に、俺は地面にへばりついていた。僅かに糸が残っていたらしい。
使い切る直前のマヨネーズみたいな感じか。完全に油断していた。
「はぁ。仕方ない。」
『ブラッドインジェクト。出力レベル1。』
突然、女性の声とともにブースターの音が響く。そして、化け物が吹き飛ばされて消滅した。
俺の体にへばりつく糸も同時に消え去る。
一体誰が…4人目のブースター持ちか…?
俺はそう思いながら起き上がる。すると、突然その手が握られた感覚がした。
「!? 誰だ!」
俺は咄嗟に構えを取る。だが、誰も見当たらない。
「来てもらう。私たちイレイス派に。」
その声と共に目の前に人が現れた。無表情な、黒いショートヘアの女性。彼女を見る。玻璃美澄…能力は、透明化。
「待て! そいつには用が!」
倒れている癒川快斗がそう言った。玻璃美澄はそちらを一瞥する。
「今なら簡単にブースターを奪えそう。でも、それは今回の任務とは違う。」
俺は玻璃美澄に引っ張られる。イレイス派…知らない派閥だ。何か有益な情報を持っているかもしれない。
俺は、大人しく彼女について行くことにした。




