02.化け物誕生!? 俺が戦う!
俺の名は千里透真。
田舎から東京の大学に来た俺は、超能力者同士の戦い、サイカーバトルに出会った。
今は偶然知り合った美少女、鑑見さんと共に、サイカーバトルを見物している。
「その装備は、渡さないぜ…」
吹っ飛んだ金髪男…吾妻雷太は、立ち上がって腕輪を拾おうとする。その時、彼と腕輪の間に黒い泥の様なものが現れた。
「弱き者に、生きる資格はない。」
どこからか男の声が聞こえる。暗く、抑揚のない声だ。
その声と共に、黒い泥から何かが生えてくる。これは…生き物?
巨大なタコのような生き物が泥から現れた。これもサイカーバトルの演出なのかな。
「逃げて…あれは…」
鑑見さんがそう言った。その直後、巨大タコが暴れだし、校舎を破壊する。
ああ、これからの俺の大学生活が……って、そんなこと思ってる場合じゃない。
「くっ…モンスター! ガーディアン派の名にかけて、お前は僕が倒す!」
なよなよ男がそう言ってモンスターに立ち向かおうとする。
天才でイケメンな俺は、普通じゃないその光景を見て、観客たちの避難を誘導した。
紳士たるもの、こういった時はまず人々を助けるべきだ。未来の学友たちの安全は俺が守る。
「ぐああ!」
避難誘導していると、急になよなよ男が吹っ飛ばされて俺の横に来た。えっ、あの化け物そんなにやばいの?
今グラウンドには、タコ型モンスターと吾妻雷太、そしてワイルド男がいる。
そうだ、ワイルド男なら。あの強いワイルド男ならきっと、化け物を倒してくれるだろう。
「ちっ、ブースターがどっか行っちまったじゃねぇか。」
ワイルド男がそう呟いて、姿を消した。え、助けてくれないんすか!? このままじゃ、相当やばいんじゃ…
「ひぃ! 助けてくれ! そうだ、ブースター…どこだ! 俺のブースター!」
吾妻雷太は、情けない声をあげて何かを探し出す。ブースター…腕輪のことだろう。
転がった腕輪は、どこかへ行ってしまった。校舎の瓦礫の下かもしれない。
「鑑見さんも早く逃げて! 俺はあの人を助ける!」
やはり俺は紳士だな。こういう時でも人を助けようとしてしまう。
とりあえずあのモンスターに近づいて、引きつけるか…
「…私も行きます。あの人を助けたいです。」
鑑見さんがそう言った。着いてこようとするとは、驚いた。
…でも、勇気は認めるけど流石にそれはダメだ。勇気と無謀は違うからな。
俺は鑑見さんの声を無視して吾妻雷太の元へと走った。
「やだ…来るな、来るな!」
吾妻雷太がそう言ってピリピリと雷を出している。先程纏っていた凄まじいものと比べて、だいぶ弱っちい。
俺は化け物の方へ近づいた。よーし、いっちょかますか。
「おい、化け物! ここに美味そうなイケメンがいるぞ!」
俺は両手をクネクネしてタコの真似をする。すると化け物はこちらを向いた。よし、上手くいったな。この隙に逃げてくれよ。
「どこだ! ブースター、どこにある!」
吾妻雷太は逃げるどころかこちらに近づいてきた。まじで何してるんだこいつ、早く逃げろって。
「腕輪なんかより命の方が大事だろ! 逃げろ!」
つい大声が出ちまった。だが、吾妻雷太はひたすらに探している。
「俺はステート派のサイカーだぞ! 誰にものを言っている!」
吾妻雷太が俺に逆ギレしてきた。なんなんだよほんと、せっかく助けてやったというのに。
ってか、モンスター引きつけてるのやばくね。いつ襲われてもおかしくない。
タコ型モンスターの足が動いた。ひぃ、怖い。
ドッシーン
モンスターが足を地面に叩きつけた。いって、衝撃で吹っ飛んじまった。
俺は尻を押さえながらモンスターの方を見る。…あれ、吾妻雷太がいない。
「嫌だ…俺は国のエリートだぞ…」
いた。タコ型モンスターの足に絡め取られている。そして、それがモンスターの口元に運ばれていく。
「おい! 俺の方が美味そうだろ! こっちだぞー!」
俺は咄嗟に叫んだ。このままだと本当にまずい。
だが、モンスターは俺に見向きもせず、吾妻雷太に齧り付いた。彼の残骸がボトッと落ちる。
助けられなかった。人の死を目の当たりにするのは初めてだ。こんなにもあっさりと、簡単に死んでしまうものなのか。
俺は、なんて無力なんだ…出しゃばるだけ出しゃばって、何も出来やしない。勇気と無謀は違うってことは、俺にも当てはまる。
ベチッと俺の前で音がする。正直、手が震えていた。だが化け物は、怖がる暇も、絶望する暇も与えちゃくれない。
あの化け物を、どうにかしなくては。これ以上犠牲が生まれる前に。
どうすれば止められる? 倒すしかない。でも、そんな力どうやって…?
…腕輪だ。俺にも超能力があるなら、きっと扱えるはず。今はそれを試すしかない。
俺は目を閉じて、大きく深呼吸をする。そして、目を開いた。
…見える。瓦礫の下に隠れている、あの腕輪が。俺は急いでそこへ行き、腕輪を手に取った。
「俺が、お前を倒す!」
俺は腕輪を左腕に装着した。
『起動コードを入力してください』
腕輪から無機質な声が響く。起動コード…そんなもの俺が知るはずがない。
「ブーストアップ!」
女性の声が響いた。鑑見さんだ。置いていったはずなのに、グラウンドまで出てきている。
『認証完了。』
その音と共に、左腕に痛みが走る。注射でも打たれているかのようだ。
それと同時に、腕輪から赤い血管のようなモールドが出現。それが全身を包むと、俺の中で何かが弾けるような感覚があった。
「…視える。お前の全てが。」
俺はサイカーとして、さっき戦っていたやつらのような戦う力を手にしたのだと、実感した。
化け物の方を見ると、様々な文字が出てくる。俺はそれらを即座に読んだ。
この化け物は、巨体によるパワーと再生能力を持っている。その弱点は、目と目の間にあるらしい。
目と目の間……一気にそこまで行くしかない!
俺は校舎の瓦礫の上にたち、化け物に手を振る。化け物がそちらに向かって足を打ち付けてきた。
よし、計画通り。俺はジャンプして回避する。化け物の足が瓦礫に直撃し、白い粉が舞う。
これで視界を塞いでいるうちに、化け物の足から顔の方へ近づいた。
俺は透視ができるから、相手の急所が正確に見える。
「ここだ!」
俺は化け物の目と目の間に、力いっぱい拳を振るった。その時、腕輪が赤く光る。
俺は迷わず腕輪のボタンを押した。
『ブラッドインジェクト。最大出力です。』
腕輪から無機質な声がなる。
「うおおおおおおおおお!!!!!!」
俺は全力で腕に力を込める。すると、化け物は爆散した。
やった…なんとか、化け物を倒せた…
でも、なんか凄く眠くなってきた。ちょっと、休もう…
◆◆◆
「はっ…! ここ、どこだ…?」
目を覚ますと、知らない天井が見えた。俺、何してたんだっけ…確か、化け物と戦っていたような…
「あ、お目覚めかい? すぐ心っちを呼んで来るから待ってて!」
目覚めて早々、陽気な男の声に話しかけられた。その声の方を向いたけど、誰もいない。
…俺の透視能力。あれもやっぱり超能力だったんだな。俺もサイカーであり、だからこそ化け物と戦えた。
あの化け物は一体なんだったのだろうか。鑑見さんも何か知っていそうだったし…あと、大学はどうなるんだろう。
「体は大丈夫ですか? 初めまして。僕はガーディアン派の、知念心と申します。」
俺が色んなことを考えていると、あの戦いにいたなよなよ男が俺に話しかけてきた。知念心…よし、覚えた。
彼が俺をここまで運んでくれたのだろうか。俺は彼から聞かなければならないことが沢山ある。超能力の起源と、父の行方。それだけでなく、化け物を倒すことも、俺の使命の1つ。
俺はこの場所…ガーディアン派の基地で、そう決心した。




