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17.大学再開! またまた化け物!?

 俺の名前は千里透真せんりとうま


 超能力者同士の戦い、サイカーバトルに出会った俺は、その戦いに巻き込まれていく。


 5月1日。今日は、大学の授業初日だ。化け物に校舎が破壊されてからちょうど1ヶ月。ようやくだ。


 俺は1ヶ月分の課題を1週間で終わらせ、ルンルンな気分で登校中。課題尽くしの毎日は地獄だったぜ…


 東京の路線図の見方もだいぶ分かってきた。乗り換えアプリなんかもあって、もう迷わずに済むかもしれない。


 ちなみに俺は、超能力の授業を取った。サイカーバトルのブームもあり、人気の授業だったけどなんとか抽選を勝ち抜いた。


 この授業で、もしかしたら超能力の起源を知れたりして…記念すべき一発目の授業、頑張るぞ!



 ◆◆◆



 授業のある教室に到着! ちょっとだけ迷ったけどなんとかなった。他の大学の空き教室だから、迷子にならない方が難しい…


 5月1日はゴールデンウィークじゃないかって? もちろんそんなものはない。だって1ヶ月間休みだったんだもの。今日行く大学は本来休みらしいけど。


 早めに来たからか、授業開始まではまだ時間がある。何しようか…教室には人が大勢おり、少し騒がしい。こちらを見てヒソヒソと話してる人も。人気者は辛いぜ…


 とりあえず、席を取ってから教室の外へ出た。静かでゆっくりできる所へ行きたい。


 俺はこのよく知らない大学を散歩することにした。


「あれ? 千里さん?」


 外を少し歩いていると、声を掛けられる。なんだなんだ?


「おお、知念ちねんか。なんでここに?」


 俺に声を掛けてきたのは、ガーディアン派のサイカー、知念心ちねんこころだった。外のベンチに座って、ノートパソコンを膝に乗せている。


「僕、ここの学生なんです。千里さんこそ、ここの大学だったんですか?」


 知念心がそう聞いてくる。なるほど、彼も同い年だもんな。


「いや、俺は別の大学なんだけど、校舎壊れちゃって。ほら、タコの化け物が出た時の。」


 思えばあの時が、俺と知念心の出会いだった。ブラッドインジェクトによって倒れた俺をガーディアン派まで運んでくれたのだ。


「あの時、僕の力だけではあの化け物には勝てませんでした。僕はもっと、強くならなくちゃいけない。千里さんは、どうしてそんなに強くいられるんですか?」


 強く、か。あの時の俺は、ただ守るために必死だった。それは知念心も同じだっただろう。


「超能力の相性が良かったのかもな。俺の能力は、相手の能力や弱点を見ることができるから。」


 ブースターを装着して戦い始めるまで、俺は自分の能力を透視だと思っていた。でも今なら分かる。それだけではない。


 恐らく、普通じゃ見えないものを見る力。透視はその1部に過ぎないのだろう。


「…それだけじゃないはずです。あなたは覚醒した。一体どうしてですか?」


 俺が覚醒した理由。正直俺にもよく分かっていない。単純に死にかけたからなのか、記憶を取り戻したからなのか、自分の強さを自覚したからなのか…


「紳士を、貫いたからかな。昔、俺に紳士でいるよう教えてくれた人がいるんだ。」


 紳士とは、諦めない強いヒーローのこと。俺は紳士として、諦めちゃいけない。


「凄い人なんですね…僕も紳士になりたいです。」


 知念心がそう言った。そういえば、遡先現そのざきあらわのことを調べてるんだったっけ。


「実は、その人が遡先現なんだ。彼は15年前、俺の先生だった。どこのなんの先生なのかは分からないけど。」


 15年前のことはあまり思い出せてはいない。でもなんとなく、東京にいたような気がしている。


 それを聞いた知念心は、ノートパソコンを開いて何やら打ち込み出した。


「先生…あの人は、僕の先生でもありました。その時の記憶は、僕もあまりないけど…」


 驚いた。15年前に同じ先生を持っていたとなると、俺と知念心は当時知り合いだった可能性が高い。


 となると、超能力の起源が15年前にあるのは間違いないのかもしれない。


 俺もメモしとくか…そう思いスマホを取り出した。…あ、やべ、授業始まる!


「ごめん、そろそろ行かなきゃ! また今度!」


 俺は大慌てで走り出した。初回からやらかす訳にはいかない。


「頑張ってください!」


 後ろから声が聞こえる。俺は手を振ってそれに応えるのだった。


 …そういえば、ゴールデンウィークなのになんで彼は大学に来ていたんだ?



 ◆◆◆



 授業にはなんとか間に合い、無事に受けることができた。


 超能力ってのは、昔から存在したらしい。なんか科学的な要素とかも入ってきて、あんまり有益な情報は得られなかった。まだ初回だし仕方ないか。


 授業が終わった俺は、帰路につく。今日はこの授業しか取っていなかった。


 その時、ドゴーンとうるさい音が鳴り響いた。グラウンドを見ると、化け物がいた。やばい!


 俺は急いでグラウンドへ向かう。ここの大学を、俺の大学の二の舞にはしないぞ…!


「…あなたが、正義を捨てるとは思えません!」


 グラウンドに近づくと、そう声が聞こえた。知念心の声だ。彼が戦っている。


「正義など、簡単に崩れ去る。そのために戦ったところで、世界は飲み込まれる。」


 今度は遡先現の声だ。2人が話しているのか?

 世界が飲み込まれる…それってどういう意味なのだろうか。


「あなたは、決して諦めない人でした。何があろうと、正義を諦めたとは思えない。」


 戦いの中で、遡先現に何があったのかの答えを見つけ出す。知念心は、今まさに探そうとしている。


 2人の姿が見えてきた。地面を這う知念心と、剣を向けている遡先現だ。


「しつこいやつだ。邪魔をするなら、消えろ。」


 遡先現が剣を振るおうとした。


「ブーストアップ!」


 俺はブースターをつけ、走る。だが、間に合わない…!


 ドンッ


 地面を叩く音が聞こえた。遡先現の剣は、地面に突き刺さっている。咄嗟に知念心が念動力で、自分の体を弾き飛ばして避けたのだ。


「千里さん、来てくれたんですね。」


 知念心がそう言う。腕にはブースター。ガーディアン派にあった1台を知念心が持っていてよかった。


「…またお前か。」


 そう言い残し、遡先現が姿を消した。なんで俺を避けるんだ…


 ウゴオオオ、と雄叫びが聞こえる。そうだ、化け物がいるはずだ。


 俺はその方を見る。巨大な二枚貝の化け物。硬い殻は、どんな攻撃も弾き返す、か。比護守ひごまもるのバリアみたいだな。


 弱点は…中の本体。これまたベタな感じだ。問題は、やつが一向に殻を開けないことか。


「立てるか、知念。やつの本体に攻撃を当てたい。力を貸してくれ。」


 念動力で、殻をこじ開ける。そうすれば無理やり攻撃できるはずだ。俺は知念心にそう頼んだ。


「分かりました。いきます!」


『ブラッドインジェクト。出力レベル2。』


 知念心がブースターのボタンを押す。俺は化け物に駆け出す。


『ブラッドオーバーフロー。』


 俺は飛び上がり、殻の中へ。そして化け物の本体に、強烈なパンチを食らわせる!


 化け物は悲鳴をあげて消え去った。殻の中の悲鳴はうるさすぎる。


 地面に降りた俺はブースターを外し、知念心の元へ。


「助かった。ありがとう。」


 俺はそう言った。彼の念動力には、何度も助けられている。


「いえ、助けられたのは僕の方です。僕、1つ決めました。」


 知念心がそう言う。彼の決めたこととは、一体…


「僕も紳士を目指します! 弟子にしてください!」


 知念心が深くお辞儀をする。で、弟子!?


「そんな急に弟子なんて…そもそも、紳士ってのは心の中に宿るんだ。教わるものじゃない。」


 俺はスマートにそう返す。


「はい! 師匠!」


 知念心が元気にそう言った。あの、話聞いてた?


 だめだこりゃ…ま、師匠と呼ばれて悪い気はしないし、いっか。


「そう言えば、遡先現については何か分かったのか?」


 俺はそう聞く。ずっと調べてるみたいだったけど…


「はい。1つだけ、確かなことがあります。あの人は決して、闇に堕ちてはいません。」


 知念心がそう言った。遡先現はおぞましい何かと融合していた。操られてるだけ…とかなのかな。


「多分、サイカーの覚醒を止めるために、殺すことを選んだんだと思います。正義のために戦っても、世界は飲み込まれる…あの言葉を聞いて確信しました。」


 覚醒したサイカーが5人集まると、何かが起こる。知念心も、快斗あたりから聞いたのだろうか。


 その何かが、世界を飲み込むことに繋がっているのなら…遡先現は、それを阻止するために?


「どの道、そのやり方は紳士ではないな。

 …それに、あいつはバトルで負けたサイカーだけを殺している。ただ単に、覚醒しなそうなやつだけ殺している可能性もあるからな。」


 吾妻雷太あずまらいた影宮幽かげみやゆう。2人とも、バトルで敗北した直後に死んでいる。


 それに、覚醒したサイカーを5人集めることを阻止するなら、既に覚醒している俺を殺しにくるはずだ。だが、あいつは俺を避けている。別の目的があるんじゃないか?


「…それでも、僕はあの人を信じたい。今日大学に来たのも、遡先さんの目撃情報があったからです。」


 知念心はそう言うと去って行く。知念心は、明らかに遡先現を盲信している。危険なことにならないといいが…


 なよなよとした彼の背中を見て、俺はそう感じるのだった。

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