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16.義炎爆の秘密

 俺の名前は千里透真せんりとうま


 超能力者同士の戦い、サイカーバトルに出会った俺は、その戦いに巻き込まれていく。


 これまで色々なことがあった…大学の校舎が破壊されたり、各派閥に勧誘されてみたり、逮捕されたり、死にかけたり…


 様々な戦いを乗り越えながら、父の行方と超能力の起源を探る、18歳の天才でイケメンな紳士だ。


 そして朗報。なんと、来週から大学生活が再開!


 再開と言っても入学式から行ってないし、依然として校舎は壊れたままだけど別の場所を借りるらしい。


 なんやかんやで楽しみな大学生活に胸踊らせながら、色々買うために今、歩いている。


「見つけたぞ、千里透真。」


 後ろから声をかけられる。なんだよ、ルンルンだったのに…


 後ろを向くと、見知った人物がいた。


義炎ぎえん!? なんでここに…」


 リヴァイバル派の炎使い、義炎爆ぎえんばくが立っていた。ブースターを手に持っている。


「お前は力を手に入れた。今こそ、決着をつける時だ。」


 義炎爆はブースターを腕に装着する。決着、か…


 以前、義炎爆は言った。強い心に、強い力は宿ると。時が来たら戦おうと言って俺にブースターを渡したんだ。


 その戦う時というのが、俺が覚醒して力を手に入れた時ってことか。


「分かった。負けても文句言うなよ?」


 俺は自分の赤いブースターを腕につけた。全力で受けて立つまでだ。


「「ブーストアップ!」」


 俺たちが同時に叫ぶ。


 俺の体を赤いアーマーが包んだ。義炎爆を見る。


 見るのは、彼の本質。彼の体に流れている超能力だ。


 覚醒して初めて気づいたことなんだけど、サイカーの超能力ってのは血のように流れている。


 だから、ブースターを使用する時は血を少量使う。ブースター起動時の痛みってのはそれが原因みたいだ。


 そして、ブラッドインジェクトで血を消費するのもそういうことみたいだ。


 義炎爆の超能力がブースターへ流れる。攻撃が来る合図だ。


「俺は負けない!」


 火の玉が飛んでくる。俺はそれを躱した。超能力の発動が見れるから、身構えることができる。


「いーや、俺が勝つね!」


 俺はブースターに手をかける。義炎爆もブースターに手をかけた。


「ストーップ! 2人とも、落ち着いて!」


 そんな時に声がした。俺も義炎爆もそちらを見る。


 あら、絶世の白髪美少女、鑑見かがみさんがこちらへ向かって来るじゃないですか。


「はい、爆はおばちゃんの手伝い! 千里くんは…課題、やったの?」


 鑑見さんが俺たちにそう言った。え? 課題?


 俺と義炎爆はブースターを外す。


「…仕方ない。次は無いからな。」


 義炎爆は去っていく。嵐のようだったな…


「ふぅ、よかったよかった。」


 鑑見さんは安堵している様子。戦って欲しくないのだろうか。


「あの、鑑見さん? 課題って?」


 課題なんて聞いてないぞ…嘘だよな?


「え? 千里くん、知らなかったの? 休校期間中にずっと課題出てたんだけど…」


 鑑見さんは若干笑いながらそう言った。…ガチで? この1ヶ月間ずっと? 終わった…


「それって間に合う? 今から入れる保険ってありますか?」


 素で焦っている俺を見て、鑑見さんはふふっと笑う。もう完全にクールな紳士のイメージはなくなっちゃったよ…


「ちょっと難しかったから、私が教えてあげる。カフェでも行こっか。」


 鑑見さんがそう言った。ああ女神、ありがたや…


 俺たちは鑑見さん行きつけというカフェへと向かった。



 ◆◆◆



「ここをこうして…」


 鑑見さんが教えてくれる。やっぱり可愛いな…


「って、聞いてるの? もう。」


 鑑見さんが頬を膨らませる。怒られちゃった、てへへ。


 というか鑑見さん、結構人脈が広い。このカフェのマスターとも知り合いみたいだったし、みすみんとも知り合いだった。それでいてあのくせ者の義炎爆と一緒にいる。


 みすみん呼びを許されていたし、結構人たらしなのかもしれない。


「そういえば、なんでさっき戦いを止めたんだ?」


 俺はそう聞いた。もっと言えば、なんでそんな鑑見さんがリヴァイバル派にいるのか知りたい。でも、そこまで踏み込んでいいのかは分からなかった。


 鑑見さんが固まる。そして、表情が暗くなった。ごめんほんとに。


「…爆と千里くんが戦って欲しくなかった。2人が友達になれたらいいなって。」


 鑑見さんがそう呟く。友達? 俺と義炎爆が?


 そう言えば以前、ラーメン屋のおばちゃんが言ってたな。義炎爆には友達がいないって。


「爆、ずっと1人なんだ。10年前から。」


 鑑見さんの顔は暗い。義炎爆の秘密に触れようとしている。


「…10年前、一体何があったの?」


 俺は鑑見さんに聞く。義炎爆には、確実に何かある。リヴァイバル派の理念は、なぜ生まれたのだろう。


「爆の両親が、火事で亡くなったの。…そして、あの日から爆は超能力を使えるようになった。」


 鑑見さんがそう言った。炎を操る超能力を使えるようになった日に火事が起きた。それってまるで…


「それから、爆は変わった。彼の目に映る人がみんな敵に見えちゃってるの。私は彼の心に寄り添いたい。だから、傍にいる。」


 火事からなぜ、強者と弱者のない世界をつくることに繋がるのかは分からない。だが、そこに原因があるのは間違いないだろう。


 …これは直接会って聞いてみるしかないか。


 そして…鑑見さん。やっぱり彼女自身は力での支配を望んでいる訳では無かった。思えば、彼女がブースターのためにサイカーと戦っている所は見たことがない。


「そっか…話してくれてありがとう。

 実は俺、親父を探しに東京へ来たんだ。親を失ってる点で、俺と義炎は同じ。今度会ったら、話してみようと思う。」


 義炎爆。もし彼が苦しむ1人の人間なのだとしたら…紳士として、助けたいって気持ちもある。


「うん。ありがとね。…私、今日は帰る。」


 鑑見さんはそう言うと、お金を置いて行ってしまった。ちゃっかり奢られちゃった…


 今聞いた、義炎爆の過去。そして、遡先現そのざきあらわとガーディアン派の2人の過去。仲間を失った、比護守。サイカーはみんなそれぞれ、抱えているものがあるんだな…


 俺がそんな風に考えてる時だった。


「きゃー!」


 外で悲鳴が聞こえた。この声は、鑑見さんだ。


 俺は急いで外へ出るのだった。



 ◆◆◆



「何してる! 鑑見さんを離せ!」


 店の外に出た俺が見たのは、鑑見さんの腕を掴んでいる遡先現だった。

 なぜ彼女を…? 思えば、最初に姿を現したのも鑑見さんの前だった。


「覚醒した貴様に、もう用はない。」


 遡先現は鑑見さんを突き放した。


「2度と会わないことを願う。千里透真。」


 遡先現がそう言った。完全に去り際のセリフだ。


「待て! お前は、15年前に俺の先生だった。そうだろ? 教えてくれ、あの時何があった!」


 俺は必死に引き留めようとする。サイカーはみんな18歳で、遡先現だけが35歳。15年前は、3歳と20歳。ちょうど、児童と先生の年齢感だ。


「…話すことなどない。」


 遡先現はそう言って、姿を消した。くそ、逃げられちまった。

 吾妻雷太に影宮幽…あいつはサイカーを殺している。とにかく、鑑見さんが無事でよかった。


「鑑見さん、大丈夫?」


 俺は鑑見さんに駆け寄る。あいつは鑑見さんを狙って現れた。生きてるとはいえ、何かされてないだろうか。


「…大丈夫。」


 鑑見さんはそう言った。でも、その表情がさっきまでとは違う。覚悟…いや、責任…? そういった類のものを感じる。


「じゃあ、私はこれで。課題、頑張ってね。」


 鑑見さんは行ってしまう。


 さっき鑑見さんは、遡先現に触れていた。もしかしたら、超能力で何かを見たのかもしれない。


 そのことについて何も話してくれないということは、言えない理由があるって事だ。


 俺は、ただ彼女の背中を目で追うことしかできなかった。

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