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15.みすみん救出大作戦!

 俺の名前は千里透真せんりとうま


 超能力者同士の戦い、サイカーバトルに出会った俺は、新たな力を手に入れた。


 無事に危機を脱するも、イレイス派のサイカー、影宮幽かげみやゆうが命を落としてしまう。


 そして、みすみんから届いたメッセージ。


『イレイス派の基地にいる。情報を掴んだから、助けに来て。』


 俺は彼女を助けるため、イレイス派の基地へ向かうのだった。


 ガチャリ。


 家のドアを開ける。すると、そこに人が立っていた。

 スーツ、メガネ、七三分けの髪…比護守ひごまもるだ。また?


速水はやみの正体を探りたい。君の力を貸してくれ。」


 比護守が口を開いた。ステート派の速水瞬はやみしゅん。以前現れた時は何かを知っている風だった。


「正体? どういうことだ?」


 正体と言っても、速水瞬は速水瞬だろう。


「あいつは、私と並ぶ実力の持ち主で世界の平和を願う男だった。

 3ヶ月前から突然仕事をサボり始め、何か悩んでいるのかと思っていたが…」


 比護守がそう言う。比護守に並ぶ程の実力? あの速水瞬が? にわかには信じられない。


「あいつが悪事に加担するはずがない。なにか事情がある。もしかしたら影宮のように…」


 速水瞬が化け物と融合している可能性、か。


 影宮幽は化け物と融合し、自我を失っていた。遡先現そのざきあらわもまた、化け物以上の何かと融合している。


 もし速水瞬が比護守の言うような男なのだとしたら、化け物に加担している元ガーディアン派リーダーの遡先現に通じる部分があるのかもしれない。


「分かった。俺の能力であいつの本質を見てみる。……その前に、今はみすみんを助けに行かなくちゃ。」


 俺はそう言って先へ急ぐ。


「みすみん……ああ、玻璃はりか。礼と言っては何だが、私も手伝おう。」


 比護守も協力してくれることとなった。礼ね…礼と言えば…


「…ところで、お金を振り込んでくれるって約束は?」


 国主催の大会に出る代わりに、比護守のアイドル活動で得たお金を貰うという約束。まだお金貰ってないんだけど…


「その事なんだが、その…」


 比護守が言葉を濁した。メガネをカチャッと上げようとするも、手が震えている。まさか。


「国に、全て使われてしまった…」


 な、なんだって!? 俺のお金…


「活動経費の分を差し引くと言われ、ほとんど吸い取られてしまったんだ。絶対あんなに金はかかってないはずなのに…」


 比護守自身もどこか悔しそうだ。せっかく頑張ってきたアイドル活動だったのに、何も残らなかったなんてな。


「分かった分かった。俺はお金いらないから。さ、いくぞ!」


 俺は比護守を宥め、歩き出す。


「親父め…」


 比護守は恨めしそうにそう言うと、俺についてきた。こいつも苦労してんだな。



 ◆◆◆



 ビルに到着。ここがイレイス派の基地だ。俺は目を閉じて深呼吸。早速透視能力を使って外からみすみんの居場所を特定する。


「いた。3階の…」


 そこまで見た時、文字が見えた。ブースターも使ってないのに…? 覚醒したおかげかもな。


「3階の倉庫だ。非常階段付近には人もいないから、そこから向かおう。」


 彼女は倉庫で縛られていた。よく連絡できたなと感心する。


「分かった。直ちに行こう。」


 俺たちはビルの裏手、非常口から侵入する。ここにみすみんがいるってことは、予兆未来や速水瞬がいる可能性も高い。なるべく気付かれないように…


「あっれー? こんな所で何してるのかな?」


 やべ、一瞬でバレた。階段から上を眺めると、速水瞬が手を振っていた。


 俺たちは急いでそこ…踊り場まで駆け上がる。


「それはこっちのセリフだな。」


 俺は赤いブースターを取り出した。俺の覚醒の影響か赤色に染まったのだ。


「速水。一体何があったんだ。」


 比護守もブースターを取り出し、腕につけた。


「「ブーストアップ!」」


 俺たちはそう唱える。


「さぁね。その謎、解いてみてよ。」


 そう言うと速水瞬は物凄いスピードで走り出した。俺は速水瞬を見ようとするが…早すぎて見えない。


「比護! こいつの正体を見るには、動きを止める必要がありそうだ!」


 俺はそう叫ぶ。スピードに目が追いつかない。


「分かった! 俺がこいつを捕らえておく。お前は先に玻璃を助けてこい!」


 比護守はバリアを展開しながらそう言った。俺だけがそのバリアの外にいる。


 これで邪魔なく助け出せる。助かった。


 シュンシュンと音がする中、俺は倉庫へと走り出した。



 ◆◆◆



 倉庫の扉を開ける。そこには、両手を縛られ、口にガムテープが貼られたみすみんがいた。


「みすみん! 無事でよかった。すぐに助ける!」


 俺は両手の紐を力いっぱいに引き裂いた。みすみんがガムテープをビリッと剥がす。


「ありがとう。…その姿、もしかして。」


 みすみんは物憂げな表情をしている。情報を掴んだと言っていたけど、関係しているのかな。


「とにかく、すぐに脱出すべき。予兆未来よちょうみくが来る前に。」


 みすみんがそう言って倉庫から出た。何か焦っている…?


「…比護が速水と戦ってる。俺もそこに行かなきゃ。」


 速水瞬は不気味だ。比護守が無事だといいが…


「そう。私は超能力を奪われたから助けられない。…応援してる。」


 みすみんがそう言った。本当に、もうサイカーじゃないんだな。


 俺はみすみんを連れて階段の踊り場へと戻るのだった。



 ◆◆◆



「速水! 止まれ!」


『ブラッドインジェクト。出力レベル2。』


 ドカーンと音がする。比護守が戦っているのだ。


「比護! 無事に救出完了だ!」


 俺は比護守にそう言う。比護守はこちらを向き、笑った。


「あーあ。だから殺しとけばよかったのに。詰めが甘いなぁ。」


 速水瞬の声がする。依然として姿は見えない。


「私のブラッドインジェクトで作り出したバリアの箱の中に速水はいる。後はお前が叩け!」


 比護守がそう言った。俺と比護守を隔てていたバリアは消えている。


 流石、どこまでも出来る男だ。俺はブースターのボタンを押した。


『ブラッドオーバーフロー。』


 無機質な音と共に、アーマーのエネルギーが右腕に集まる。


「空間ごと、ぶち抜く!」


 俺は比護守が作り出したバリアの箱に向かって力いっぱい殴る。衝撃波と共に、バリアの箱が砕け散った。速水瞬が膝をつく。


 すかさず彼を見つめた。


「…視える。お前の全てが。」


 俺は、速水瞬の本質を見た。何…これは驚いた。


「こいつは、速水瞬じゃない。融擬傀ゆうぎかい。その超能力は、変装だ。」


 比護守も衝撃を受けたような顔をしている。みすみんだけは落ち着いていた。知っていたのか、それとも普段から無表情だからか…


 速水瞬…改め、融擬傀の見た目が溶けるように変わっていき、全く別の人間となった。

 水色の髪が銀髪になり、体格も良くなった。これが、融擬傀の本当の姿か。


「あはは、バレちゃった。せっかく近い性格のサイカーだったのになぁ。」


 融擬傀がそう言って笑う。だが、予兆未来同様目が笑っていなかった。


「…奪ったのか? 本当の速水瞬から超能力を。」


 融擬傀の本当の姿を見てもなお、俺の見ている情報から高速移動の能力は消えていない。

 予兆未来がみすみんから超能力を奪ったように、彼もまた何らかの方法で奪ったのだろう。


「速水は…本当の速水はどこにいる!」


 比護守がそう言って融擬傀へ迫った。だが、それをいとも簡単に躱す融擬傀。


「あー残念。もう死んじゃったんだー。ま、君は見抜けなかったんだし、いてもいなくても変わらないって。」


 そう言って軽薄な笑みを浮かべる融擬傀。…許せない。


「僕は予兆未来みたいに甘くないの。超能力奪ったなら、もう用済みでしょ?

 最期まで弱音1つ吐かなくて面白くなかったなー。いっぱい苦しめたのに。」


 融擬傀はそう言うと立ち上がった。こいつ、人の命をなんだと思ってやがる。


「……ざけるな…ふざけるな!」


『ブラッドインジェクト。最大出力です。』


 比護守がバリアを投げつけた。それに対して融擬傀は姿を消す。


「うわっ、危ないじゃん。…また会おうね、ごきげんよう。」


 その言葉だけが、踊り場に響き渡った。



 ◆◆◆



 あの後、倒れた比護守を抱えて俺とみすみんはガーディアン派の基地へやってきた。倒れたサイカーの回復には、快斗かいとの力が必要だ。


「俺を便利屋みたいに…ま、いいけどさ。千里は大丈夫なの?」


 快斗はそう言ったが、俺の体は元気そのもの。これも覚醒の影響かな。


 今、快斗は比護守を治療中。俺とみすみんはガーディアン派の基地のソファで待たされていた。


 ちなみに知念心ちねんこころは昨日からずっと遡先現について知るために資料を漁りまくり、疲れて爆睡中だそうだ。


「お待たせ…あー、疲れる。」


 快斗がそう言ってやってきた。後ろには比護守もいる。


「すまない。私としたことが、つい感情的になってしまった。」


 比護守が謝る。そりゃ、あんなことがあったら仕方ない。


「ありがとうと言って欲しいね。その失血量に対して出力レベル2での回復だから、しばらくは安静に。」


 快斗と比護守も椅子に座った。全員がみすみんを見る。


「え…どうした?」


 みすみんは、少し恥ずかしそうに俺に小声でそう聞いてくる。


「ほら、情報があるって言ってたから。」


 俺はみすみんにそう返す。みすみんは納得した様子だ。


「…予兆未来と融擬傀。2人は、サイカーバトルを通してサイカーの覚醒を目指している。」


 みすみんの口から、そう告げられた。


 サイカーバトルで、サイカーの覚醒を…? だから以前、ステート派に囚われた俺たちを助けるよう指示を出したのか。サイカーバトルを終わらせないために。


「覚醒…それって、千里みたいに?」


 快斗がそう聞いた。俺は影宮幽との戦いの中で、新たな力に目覚めている。


「多分そう。そして、覚醒したサイカーが5人になった時…」


 全員が息を呑む。5人。それが、約束の数ってやつか。


 約束の数が全て集まった時、何が起こるんだ…?


「……何かが起きる。」


 全員がずっこけた。それは分かってないんかーい! 俺は心の中でそう突っ込む。


「とりあえず、やつらの作戦を阻止するためにも、一時休戦としよう。」


 比護守がそう言った。サイカーバトルが起こらなければ、覚醒したサイカーが現れることも無いだろう。


「ああ。でも、あくまでも一時的にだからな。予兆や…その、融擬ってやつを倒したら、次はステート派を潰す。」


 快斗がそう言う。やつらの陰謀を阻止するまでは、ガーディアン派とステート派は手を結ぶこととなった。


「予兆未来と融擬傀だけじゃない。もう1人、私から超能力を奪った人がいる。…どんな人かは分からないけど。」


 みすみんはそう言うと立ち上がり、出口へ行く。伝えるべきことは伝え終わった、ということだろう。


 予兆未来に融擬傀。そしてまだ見ぬもう1人の敵。更には遡先現のことまで…倒すべき敵は山積みだ。


「ちょっと待ってよみすみん! 俺が送るよ!」


 俺はみすみんを追いかけながら、この先の戦いを見据えるのだった。

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