↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/19

14.信じる理念! 目指す未来

 俺の名前は千里透真せんりとうま


 超能力者同士の戦い、サイカーバトルの中で、イレイス派の影宮幽かげみやゆうが化け物となってしまった。


 死の淵で思い出した、紳士でいたいという気持ち。


 これまで俺が目を背けてきた事実と向き合い、俺は自分の強さに気づいた。


「視える…お前の全てが。」


 影宮幽に向き合った俺は、彼の本質を見る。


 見えるのは、2つの力の流れ。1つは、影を操る超能力。そしてもう1つは、化け物の力。


 こいつは、サイカーと化け物が融合している状態だ。


 化け物の力が流れる部分だけを倒せば、影宮幽を救い出せるかもしれない。


「死ね死ネ死ネ死ね!!!!!!」


 その発言をしているのは、影宮幽なのか、化け物なのか…

 影宮幽の無数の手がこちらに向かってくる。


「千里!」


 横にいた義炎爆ぎえんばくがそう叫ぶ。ああ、大丈夫さ。


「任せろ!」


 俺はそう叫ぶと、手を足場に影宮幽の方へと跳躍する。


 普通じゃ有り得ない身体能力。常にブラッドインジェクトを使っているみたいだ。


「戻ってこい、影宮!」


 俺は影宮幽の化け物の部分に拳をいれる。

 影宮幽は少し後退りする。攻撃が効いた…!


「…私たちも戦うぞ。」


 比護守ひごまもるが影と戦っている。比護守だけでない。他のみんなも、戦っていた。


「分からぬ。弱い汝が、なぜ覚醒を…? こんな未来は見ていない!」


 予兆未来よちょうみくが俺に対してそう言った。弱い、か。


 俺はこれまで、自分の弱さを自覚しながらも目を背けていた。

 天才でイケメンなんて自分に言い聞かせて、な。


 でも、もうその必要もない。なぜなら俺は…


「俺は、強い。元から弱くなんてなかったんだ!」


 諦めない、強いヒーロー。俺はもう、そんな存在になれてたんだ。

 …その事を教えてくれた先生は、何故か化け物側にいるんだけどな。


「強い心に、強い力は宿る。こいつは、やはり強者だ!」


 義炎爆がそう言った。こいつは最初から、その事を見抜いていたのか。


「強イのは、俺ダ!」


 影宮幽がこちらに迫る。彼が力を込めたのか、彼に宿る化け物の力が1箇所に集約されていく。


 …お前は、自分の理念を捨ててしまった。諦めてしまったんだ。


 俺はブースターのボタンを押す。よく見ると、ブースターが赤く染っていた。


『ブラッドオーバーフロー。』


 ブースターから音が鳴る。全身の赤いアーマーが光となり、俺の腕に集まった。


「はあああああああ!!!!!!!!!!!!」


 俺は、影宮幽に拳をぶつける。1箇所に集約された彼の化け物の部分を、絶対に消し去る!


 凄まじい衝撃音と共に、砂煙が巻き起こった。


 煙の中でも、見える。彼の化け物の部分が吹き飛び、消滅した。影宮幽を、化け物から解放したのだ。


「千里透真。お前の声、響いたぞ。俺はイレイス派の影宮幽だ。プライドなんぞにはもう呑まれぬ。」


 砂煙が晴れた時、影宮幽がそう言う。暗くなっていた空は、再び光を取り戻した。彼の顔には、爽やかな笑みが浮かんでいる。憑き物が落ちたようだ。


「あーあ…ま、1人目が生まれたことに変わりはないんだし、いいんじゃない?」


 速水瞬はやみしゅんがそう言った。俺は周囲を見渡すが、もう速水瞬はいなくなっていた。


 とにかく、影宮幽を救い出すことができた。さっすが俺。


『素晴らしい、素晴らしいぞ千里透真! 彼が化け物を倒しました!』


 突然、闘技場に実況の声が響いた。この人、逃げてなかったのか…


「テレビ放送の方は続いていたか…これで放送終了だ。頼んだぞ。」


 比護守が頭を抱えた様子で電話している。俺の戦いが放送されてたなら、ちょっとは人気も増えたかな。


 俺はブースターを外し、笑顔で他のサイカー達の元へ駆け寄った。影の軍団ももう消えている。


「千里くん、かっこよかったよ!」


 鑑見かがみさんがそう言う。いやーかっこいいなんてそんなこと…あるかも、ね? なんちゃって。


「ふふっ。…やっぱり面白いね。」


 鑑見さんが笑っている。まさか、心を読まれた!? 彼女の腕にはブースターが…あ、やべ!


「千里さん! 流石です!」


「手強いライバルになっちまったな。」


 知念心ちねんこころ快斗かいとがそう言って駆け寄ってくる。少し離れた所で、義炎爆は腕を組んでいた。

 俺のこの赤いブースター…義炎爆が使っていたものだが、俺が持ったままでいいと言うことか。


「影宮。妾の見た未来では、汝が覚醒するはずじゃった。さあ、覚醒するがいい!」


 予兆未来がそう言って影宮幽に向かって手を突き出した。こいつ、諦めが悪い。


「覚醒? 俺はそんな力など要らん! 俺の目指す未来に…力は無い!」


 影宮幽がそう言い切った。自分の理念を、取り戻したんだな。


「ふざけるでない! 汝は…」


 予兆未来が影宮幽に迫ろうとする。その時だった。


「ぐはっ!」


 影宮幽が、紫の剣に貫かれた。その後ろには、遡先現が。


「何をする!」


 予兆未来がそう叫んだ。本当に何してんだ。


「こいつはもはや約束の数には入り得ない。弱き者は、あの方に相応しくない。」


 遡先現…15年前、俺に紳士になるよう言った先生は、彼だった。


 それなのに、なぜ今はこんなことをしているんだ…!


 俺は赤いブースターを腕につけた。


「ブーストアップ!」


 ブースターからアーマーが出現し、俺の体を纏う。俺は、遡先現を見た。


「どういうことだ…」


 遡先現にも、2つの力が流れていた。1つは、時間操作の超能力。だが、この力は極めて弱まっているように見える。

 もう1つは…化け物よりもおぞましい、何か。


「その力と相手をするつもりはない。目的は果たせた。」


 遡先現が姿を消した。予兆未来も苛立ちながら、姿を消す。


「影宮!」


 俺はブースターを外し、影宮幽の元へ駆け寄った。


「千里…世界を、頼んだ…」


 影宮幽がそう呟く。目から、光が消えていく。


 そんな…理念を取り戻したばかりなのに…


「おい! 影宮! しっかりしろよ!」


 必死に影宮に呼びかける。だが、ピクリとも動かない。


「彼は…もう…」


 快斗がそう呟いた。救える命は救うはずの男が、ただ立ち尽くしているのがなによりの証拠だった。


「遡先さん…なんで…」


 暗い顔をする知念心。突然の出来事に、ショックを受けているようだった。


「…鑑見、行くぞ。」


 義炎爆はそう言って、その場から去っていく。鑑見さんも悲しげな顔で去っていった。


吾妻あずまに次いで2人目…あの男の目的は一体…」


 比護守は冷静にそう言う。だが、怒りを表すかのように拳を握りしめていた。


「影宮…」


 あいつに、世界を頼まれた。遡先現、予兆未来、速水瞬…世界を脅かすものは大勢いる。


 もはや、戦うのは自分の目的のためだけじゃない。俺は決意を新たにするのだった。



 ◆◆◆



 あの日の翌日。俺は、いつものように、SNSを眺めていた。


 あんなことがあっても、世界は回り続けている。


 だが、変わったこともある。


 まず、イレイス派のことだ。予兆未来が離反し、影宮幽が死亡。そしてみすみんは行方不明。イレイス派は、自然と消滅した。


 そしてステート派にも変化が。速水瞬が姿を消し、比護守1人となった。だが、アイドル活動もあり人気は上昇している。


 人気と言えば、俺も人気になったようだ。あの戦いが放送されたことで、SNSで話題の的となっている。


 …覚醒シーンの動画が存在したみたいだが、血が出ていたせいかそれは消されていた。


 ピロン。


 その時、突然スマホから通知が鳴った。メッセージが来たみたいだ。


『イレイス派の基地にいる。情報を掴んだから、助けに来て。』


 みすみんからのメッセージだった。よかった、やはり彼女は生きている。すぐに助けに行かなくちゃ。


 俺は、新たに手に入れた赤いブースターを握りしめ、外へと出るのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。