↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/19

12.全サイカーの集結

 俺の名前は千里透真せんりとうま


 超能力者同士の戦い、サイカーバトルの大会が開かれた。


 国主催のその大会。そこに、想定外の乱入者が。


 イレイス派の、影宮幽かげみやゆう義炎爆ぎえんばくを倒すために現れたのだった。


「貴様はこの俺が直々に痛ぶり、苦しみを味わわせた末に消してやろう! 俺を侮辱した罰だ!」


 影宮幽は傍に落ちていたブースターを拾い上げ、装着する。快斗かいとが使っていたものだ。


「ふははははは、ブーストアップ!」


 影宮幽がそう言った瞬間、俺は何かに掴まれ、身動きが取れなくなる。俺を掴んでいるものは…自身の影だ。快斗や比護守ひごまもるも、同じように捕らわれている。


「さあ認めてもらおうか! 俺が、お前より強いと!」


 影宮幽は義炎爆の胸ぐらを掴み、そう言った。以前、弱者と言われたことを相当気にしているようだ。


「…お前は、弱者だ!」


 義炎爆はそう言い放った。彼の目は、闘志に満ちている。


「ふざけるな!」


 影宮幽がそう言って、義炎爆の腹を殴る。義炎爆は呻き声を上げ、吹き飛んだ。


「じっくり痛ぶろうと思ったが、もういい! 死ね、義炎爆!」


 影宮幽がブースターのボタンに手をかける。不味い、何とかしないと!


 俺は無理やり体を捻り、地面へ倒れた。地面でブースターのボタンを押す。


『『ブラッドインジェクト。最大出力です。』』


 俺と影宮幽、2人のブースターの音が重なった。俺は影を無理やり振り払い、義炎爆の元へと走る。


 影宮幽は、足に影を纏い、蹴りを放とうとする。


 間に合え…!


「ぐはっ…」


 影宮幽の蹴りが、俺に炸裂した。俺はガードしたが、それでも吹き飛ばされる。


 俺は起き上がろうとするが、体が言うことを聞かない。

 蹴りによるダメージなのか、最大出力のブラッドインジェクトを使ったことによる貧血なのかは分からない。


 …だが、最大出力を使ったのは影宮幽も同じはず。確実に弱っているはずだ。


「…千里透真。やはりお前は、強者だ。」


 義炎爆が起き上がった。彼もかなり苦しいはずなのに、それでもその目は闘志に満ちている。


「俺がこいつを倒す。後は任せとけ。」


 そう言った彼の顔は、笑っていた。


「私もいる。国に反抗する危険因子だが仕方ない。ここは協力するとしよう。」


 そう言って現れたのは、比護守。彼も影に捕らわれていたはずだが、どうやって…?


「私だけではない。知念ちねん鑑見かがみ…彼らも、手を貸してくれるそうだ。」


 比護守が見た方向。そこにいたのは、知念心ちねんこころと鑑見さんだった。2人が比護守を影から引き剥がしたのか…


「試合を見守るだけのつもりだったんですが、流石にいても立っても居られなくなって…」


 知念心がそう言う。なるほど、観客としていたわけか。


「…千里くん、ありがとね。」


 義炎爆、比護守、知念心、鑑見怜奈かがみれいな。立場の違う彼らが、並び立っている。


「…俺も、負けてられないな。」


 快斗が立ち上がり、俺の元に来た。俺の腕からブースターを外すと、自分の腕につける。


「ブーストアップ。」


 そう唱えると同時に、ボタンを押した。


『ブラッドインジェクト。出力レベル2。』


 その音と共に、両手をそれぞれ俺と義炎爆に向ける。体が回復していく。ダメージは残ったままだが、なんとか立てるくらいには。


 回復を終えると、快斗はブースターを知念心に投げ渡した。


「何人で来ようと知ったことか! 全員倒してブースターは頂く!」


 影宮幽がそう言うと、影が動き出す。すかさず義炎爆が炎を撒き散らし、影を消す。


「貴様の攻撃は通用しない。強者を気取るのも大概にしろ!」


 義炎爆の言葉を聞いた影宮幽は苛立ち、こちらへ迫る。だが、それがバリアによって弾かれた。


「プライドに呑まれたな、影宮。もはやお前に信念はないようだ。」


 比護守の言葉。サイカーたちは皆、己の信念を貫いているのだ。


 弾かれた影宮幽の体が浮かび上がる。ブースターをつけた知念心が手をかざしていた。


「あなたはもはや、平和なんて願っていない。この戦いに、相応しくない!」


 ガーディアン派、イレイス派、リヴァイバル派、ステート派。4つの派閥に共通していることは、平和な未来を目指していることだ。

 その形は違えど、そのためにみんな戦っている。


「偉そうな口を効くな! 俺が…俺が頂点だ!」


 影宮幽の体から、黒いオーラが溢れ出た。超能力が更に強くなっている…? そのオーラによってか、炎の光で消えたはずの影が復活する。


「鑑見、お前の出番だ!」


 それを見た義炎爆が鑑見さんにブースターを渡した。鑑見さんはそれを受け取り、ブーストアップする。


「あなたの考えは、お見通しです。…皆を傷つけるあなたは、許せない。」


 影宮幽が影に消えた瞬間、鑑見さんは俺の方を向き、拳を振るった。


 俺にぶつかる…!? そう思ったが、拳は俺の顔の横を通り過ぎる。俺が後ろを向くと、影宮幽がそこにいた。


 危うく、俺がやられるところだった…意外と武闘派な怜奈さんに助けられた。


 怜奈さんは直後、俺にブースターを渡した。決めろと言わんばかりに。


「ブーストアップ!」


『ブラッドインジェクト。出力レベル2。』


 俺はブースターを起動すると共に蹴りを放つ。


「お前にも、理想があったはずだろ! 落ちぶれんなよ、影宮幽!」


 蹴りを食らった影宮幽が、吹き飛んだ。ブースターだけがその場に落ちる。


 イレイス派に来た時の影宮幽からは、信念を感じた。だが今の彼は、ただの小物だ。


「うああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!! どいつもこいつも、邪魔をするなああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 影宮幽がそう叫ぶ。だが、彼にはもうブースターもない。この数のサイカー相手に、何か出来るはずが無い。


「なかなか面白いことになっておるな。」


 その時、声がした。全員がその声の方を見る。ゆっくりと歩いてくる、着物の女性。予兆未来よちょうみくだ。


「影宮…その様子、汝の覚醒はすぐそこだな。約束の数の1つとなる日は近い。」


 予兆未来がそう呟いた。その時だった。影宮幽の前に、黒い泥が現れる。化け物が産まれる時のアレだ。


「影宮。それは、汝の力となるであろう。さあ、纏え。」


 予兆未来は落ち着いた様子でそう言う。


「力…? 俺に、力を…もっと力を…!」


 それを聞いた影宮幽は、そう言って泥に飛び込んだ。目が血走っている。


「…勝手な真似をするな。」


 その時、紫の剣を持った男…遡先現そのざきあらわが現れ、予兆未来へ剣を振るった。


 …一体何が起きている? 影宮を倒したと思ったら、予兆未来…そして遡先現まで。


「おや? ならあの方の声を聞いてみよ。きっと、『よい』と言うはずじゃ。」


 剣を振るわれてるのに、物怖じ1つしない予兆未来。遡先現はそれを聞き、動きを止めた。


「…チッ。」


 遡先現は舌打ちをして、消えた。あの方…誰のことだ?


「そうだ、1つ面白い話があるぞ?」


 予兆未来が怪しい笑みを浮かべてそう言った。その直後、姿を消す。


 そして、俺の真横に現れた。この能力って、まるで……


「おっほほ。そんなに驚くとはのぉ。みすみん、最期まで可愛かったぞ?」


 予兆未来が笑う。最期? まさか、みすみんを…!

 俺は予兆未来を突き放した。こいつだけは許さない。


「酷いなー、ただ眠ってるだけだよ。…ま、もう彼女はサイカーじゃないけど。」


 その時、また新たな声がする。軽薄な男の声…


速水はやみ、お前は何を知っている?」


 比護守がそう言った。速水瞬はやみしゅん。ステート派のサイカーの1人。


 とりあえず、みすみんが生きてるなら安心だ。サイカーでは無くなったということは、超能力がないってことか? 透明化の能力を予兆未来が使ったのは一体…今の彼女の状態は…


 ああもう。考えても埒が明かない。何か知っていそうな、予兆未来と速水瞬。2人から聞き出すしかない。


「いーからいーから。そんなことより、気にするべきはあっちじゃない?」


 速水瞬が指をさす。その方向には…


「俺ハ最強の力ヲ手に入レた!」


 黒い泥に塗れた影宮幽。彼の見た目が、異形と化していく。人型ではあるが、巨大。胸の辺りに顔があり、そこから手足が生えている。


 これでは……まるで化け物だ。


 報復に囚われた哀れなサイカー…影宮幽を見て、俺はそう感じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。