↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
箱根の山は高く険しく美しく ~箱根駅伝を目指していた男~  作者: 鹿園鹿


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/9

第2区 入寮

 俺が所属していた関東大学駅伝部は部員全員が寮で生活していた。部員約50人ほどが一つ屋根の下で暮らしていた。しかし、残念ながら女子部員はおらず男女一つ屋根の下。何も起こらないはずがなく..とはならなかった。


 俺が入寮したのはまだ高校を卒業していない2月末のことだ。


「もう自由登校期間だろ?いつでも寮に入ってきていいよ。」


 2月中旬、監督から電話でそう伝えられた。


「結構です。」


 そう伝えられたらよかったのだが・・・そんなことを言う度胸はなく、数日後に俺は入寮した。

  

 


 関東大学駅伝部は箱根駅伝は箱根駅伝に出場した経験はない。4年前に学生連合で一人の選手が箱根を走ったことがあるらしいが、当時の俺は野球部だったため何も知らなかった。

 

 しかしここ最近はスカウトがうまくいったらしくいい選手が何人も所属している。俺の一個上と二個上には強い先輩が多く在籍している。実際最近急成長中の大学としてメディアにも取り上げられているのを見たことがある。そのたびに箱根初出場を目指す先輩達の姿が映っていた。


「俺が関東大学を箱根に導きます。」


 そうインタビューで答えていたのは当時2年生だった加藤(かとう)先輩だった。高校時代から結果を残していて多くの大学から声がかかっていたそうだが、関東大学の監督の熱心な勧誘に心を打たれ入学を決意したという。1年次から予選会に出場している関東大学のエースだ。


 自分が走ることで箱根に導く。当時の俺もそんな思いをもって関東大学に入学を決めた。俺も高校時代は全国大会に出るほどの実力は持っていた。3000mSCというマイナー寄りの種目ではあるものの全国に出たというだけで自分に自信を持っていた。大学でどれだけ成長できるのかと自分への期待にあふれていた。





 俺が入寮した時、すでに3人もの新入生が入寮していた。その中には高校時代から県の3000mSCで切磋琢磨していた広瀬(ひろせ)の姿もあった。俺は広瀬に県大会では勝利したものの地方大会とインターハイの予選では敗北。広瀬は決勝まで進んだが、俺は予選で敗れ去った。お互いにライバル意識を持っており、レース中はバチバチに競っていたが、レース後は一緒にダウンをする中だった。広瀬と共に戦えるのは心強い。広瀬も俺も3000mSCでは県では上位だったが、5000mや1500mでは上位には食い込めなかった。広瀬の高校は県でも屈指の強豪で広瀬ほどの選手でも3~4番手であった。一方俺はあまり強くない高校だったのでエースという立場ではあったが他の高校のエースには敵わなかった。お互いに大学では高校時代勝てなかった県の上位をぶっ倒す気概をもっていた。


「清木君と同じチームになれてうれしいよ。必ず箱根に出てあいつらを倒そう。」


「あぁ。必ずあいつらを越える。」


 入寮して最初の夕食でそんな会話をしたのを鮮明に覚えている。自分に対する自信、広瀬に対するライバル心、高校時代勝てなかった選手への対抗心。俺の心は激しく燃えていた。やる気に満ち溢れていた。


 これが俺が入寮した日の思い出だ。



‐‐‐



 俺が入寮して一か月がたったころ、俺の体はボロボロだった。卒業式で一度地元に戻ったがそれ以外は基本的に毎日練習があり、3月中旬、新入生が全員入寮しさらに練習がハードになった。もともと高校では陸上部が強くなかったこともあり比較的余裕のある練習をしていた。強豪校は高校駅伝で結果を出すためある程度長い距離に対応するための練習もしているが、俺は3000mSCや5000mのための練習しかしておらず20km以上のレースが主戦場となる大学での練習に体が追い付いていなかった。これを読んでいる人がどれだけ詳しいかはわからないが、俺の大学では1日25kmは走る。多分もっと強い大学はそれ以上に走っている。高校時代1日10kmが普通だった俺にとって25kmはありえないほど長く大変だった。


 それでも周りには広瀬や加藤先輩をはじめ強い選手が何人もいた。そんな選手はそんな練習を淡々とこなしている。負けられない。その一心でくらいついていった。


 当時のチーム状況についてお話しよう。まず、チームの主力は3年生だった。スカウトがうまくいき、期待されていた代であったが、順調に走力を高め予選会でも好走が期待できる選手が何人もいた。次に4年生、入学時はそれほど目立った選手はいなかったが地道な練習が実を結び、14分30秒切りや29分台を持つ選手が数人いた。2年生は期待されている選手がケガや長い距離への対応に苦戦し思うような結果が残せていない。1年生では広瀬が大きな期待をされていた。インターハイ決勝まで残った実績、大学の練習にもうまく対応していた。それ以外の1年生は練習についていけず、苦戦している選手が多かった。俺もそのうちの一人だ。


 その年に箱根に出場するためには下級生からの突き上げが必須であった。






 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。