表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に転生したのに。また中間管理職でした。  作者: しーするー
第3章 王様と魔王が同じ席に座った日
PR
69/117

第六十八話 OLAと、初めて協力した

第六十八話 OLAと、初めて協力した


前話までのあらすじ

三音節の言葉がGOL、道が開く、という意味の可能性が出てきた。

ランセルの古い記録にGUL・TNAという言葉があった。道が開く前に特定の存在が来る、という意味。

OLAは警告を伝えていた。向こうも道が開くことを望んでいないかもしれない。

王様が「来るべくして来て、やるべきことをやって、帰るべくして帰る。それが全体の話かもしれない」と言った。


 六回目の訪問は、五回目から一週間後だった。

 今回は田中、レオン、カラ、アレンの四人で来た。

 アレンは「今回は俺も行きたい」と言った。

「理由はありますか」とレオンが聞いた。

「俺が最初に見た。だから、最後まで一緒にいたい」とアレンが言った。

「最後まで、というのは」とレオンが聞いた。

「OLAと何かが解決するまで」とアレンが言った。

 田中は、アレンを連れてきた。


 岩場に着いた。

 OLAは今日も来ていた。

 今回は、岩場の上ではなかった。

 田中たちが来た道の途中に、すでにいた。

「待っていたんですか」とカラが言った。

「そうかもしれません」と田中が言った。

「田中殿たちが来ることを、知っていた」

「前回も、こちらに向かってきていました。今回は、待っていた」

「信頼が生まれています」

「そうですね」

 田中はOLAに近づいた。

「OLA」

 OLAが前足を踏んだ。

「TNA」とOLAが言った。

「はい」と田中が言った。

 OLAが、三音節の言葉を言った。

 GOL。

「GOL」と田中が繰り返した。

 OLAが肯定の音を出した。

「GOLは、道が開くという意味だと理解しています」と田中が言った。

 OLAは田中を見た。

「田中殿、北を示してみてください」とカラが言った。

 田中は北を示した。

「GOL、北」と田中が言った。

 OLAが強く前足を踏んだ。

「そうです。北で道が開く、ということを確認しています」とレオンが言った。

「はい」と田中が言った。

 それから、田中は試みた。

 前回からずっと考えていたことだった。

 田中は南を示した。

「TNA、GOL、止める」

 この言語圏に「止める」という音があるかどうかは、わからなかった。

 ただ、動作を加えた。

 両手を前に出して、止める、という動作をした。

 OLAが、少し動いた。

 田中の動作を見ていた。

「反応していますね」とカラが言った。

「そうですね」と田中が言った。

「田中殿の意図が伝わっているかどうか」

「確かめてみます」

 田中は、もう一度試みた。

 今度は、レオンが教えてくれたこの言語圏の「止める」に近い音を使った。

「GOL、止」

 止、に近い音を出した。

 OLAが、動いた。

 今度は、今まで見たことがない動作をした。

 両方の前足を、同時に地面に置いた。

「あれは」とアレンが言った。

「見たことがない動作です」とカラが言った。

「どういう意味だと思いますか」

「わかりません。ただ、止まった動作に見えます」

「止まった」

「両足を地面に置いて、動かない。止まっている」

「GOLを止める、という動作を示したのかもしれません」とレオンが言った。

「そうかもしれません」と田中が言った。

「OLAも、止めたい」

「止めたい、か、または、止めることができる、ということかもしれません」

「どちらかはわかりませんが、GOLを止める、という概念がOLAに伝わった可能性があります」

「そうですね」

 田中はOLAを見た。

「OLA、TNA、GOL、止」

 田中は、両足を地面に置く動作を真似した。

 OLAが、肯定の音を出した。

「肯定しました」とレオンが言った。

「そうですね」と田中が言った。

「田中殿とOLAが、GOLを止めることで合意している、という状況です」

「そうかもしれません。まだ、合意とまでは言えないかもしれませんが」

「方向としては、同じを向いている」

「そうです」


 それから、一時間、田中とOLAは過ごした。

 完全に言葉が通じたわけではなかった。

 ただ、音と動作を使って、少しずつ意思を伝え合った。

 OLAが北の方向を示した。

 田中も北を示した。

 OLAが山脈に向かって、何か音を出した。

 長い音が続いた。

 田中には意味がわからなかった。

 ただ、聞いた。

 OLAが止まった。

 田中を見た。

 田中は頷いた。

 頷く動作がOLAに伝わるかどうかはわからなかった。

 ただ、やってみた。

 OLAが、少し首を動かした。

「あの動作は何ですか」とアレンが言った。

「わかりません。ただ、田中殿の動作に反応しているようです」とカラが言った。

「田中殿の動作を真似しているのかもしれません」

「そうですね」

「OLAが田中殿の動作を学んでいるように見えます」

「田中も、OLAの音を学んでいます」と田中が言った。

「お互いに学んでいる」

「そうですね」

 OLAがまた音を出した。

 今回は短い音が連続した。

 レオンが聞いていた。

「タナカ、少し聞き取れた気がします」

「どんな音ですか」

「OLAが出す音に、繰り返しのパターンがあります。一つの音が二回続いています」

「二回続く」

「はい。例えば、SKO・SKOという感じです。同じ音が繰り返される」

「それは、強調しているということですか」

「強調か、または、急いでいる、という意味かもしれません。この言語圏でも、同じ音を繰り返すことで強調や緊急性を表すことがあります」

「OLAが急いでいる、ということですか」

「そうかもしれません」

 田中はOLAを見た。

 OLAが北を示した。

 それから、同じ音を何度も繰り返した。

「急いでいます」と田中が言った。

「そうだと思います」とレオンが言った。

「北の状況が、急いでいる」

「そうです。GOLが近い、ということかもしれません」

「タイムラインが早まっているということですね」

「そうかもしれません」

 田中は少し考えた。

「OLA、GOL、いつ」

 「いつ」に近い音を出してみた。

 OLAが反応した。

 動作を見せた。

 太陽の方向を示した。

 それから、指の数を示すような動作をした。

「太陽、三つ」とカラが言った。

「三日、ということですか」

「そうかもしれません」

「三日後にGOLが来る可能性がある」

「そう解釈できます」

 三人が静かになった。

 アレンが言った。

「タナカさん、三日後ですか」

「OLAの示した動作が、そういう意味だとすれば」

「確実ですか」

「確実ではありません。ただ、急いでいることは確かです」

「どうしますか」

「今日中に、三国に伝えます。OLAとの話の内容を全部共有します」

「わかりました」

「アレン、今日すぐ城に戻れますか」

「戻れます」

「ロイド卿に、今夜中に報告してください。明日の朝、私から詳細を話します」

「わかりました。今すぐ出ます」

「ありがとうございます」

 アレンは馬に乗って、先に戻っていった。


 田中はOLAを見た。

「OLA、TNA、戻る」

 戻る、という動作を示した。

 去っていく動作だ。

 OLAが、動いた。

 田中に向かって、一歩近づいた。

 今まで最も近い距離だった。

 一メートルほどだった。

 田中は動かなかった。

 OLAが、低い音を出した。

 長い音だった。

 それから、OLAは田中から離れた。

 ゆっくりと、岩場の方に戻っていった。

「田中殿、今の音、何だったと思いますか」とカラが言った。

「わかりません。ただ、別れの言葉かもしれません」と田中が言った。

「そうかもしれません」

「また来る、という意味かもしれません」

「そうですね」

「次に会えるかどうかは、わかりません」

「三日後にGOLが来るとすれば」

「そうですね」

「田中殿、次に会ったとき、OLAに何を伝えたいですか」

 田中は少し考えた。

「GOLを止めるために、TNA、OLA、三国が一緒に動く、ということを伝えたいです」

「一緒に動く、ということを」

「そうです。OLAは一人で伝えに来てくれた。こちらも、一人ではないということを伝えたいです」

「田中殿、それは、大事なことですね」

「そうですね」

「OLAに、味方がいる、ということを伝える」

「そうです」

「それができれば、本当の意味で協力できます」

「そうなるといいですね」

 カラはしばらど田中を見た。

「田中殿、一つだけ言っていいですか」

「どうぞ」

「今日、田中殿とOLAが、初めて同じ方向を向きました。それが今日の一番大事なことだと思います」

「そうですね」

「GOLを止めるという同じ目標を持った。言葉は通じなくても、目標が同じなら、協力できます」

「そうですね」

「それが、田中殿のやり方ですよね」

「そうですね」

「魔王軍とも、ランセルとも、バルト卿とも、グレイドとも。目標が同じなら、話し合える」

「そうです」

「今日、OLAとも同じになりました」

「そうですね」

「田中殿は、最初からそれを目指していましたか」

「目指していたというより、やってみたらそうなりました」

「田中殿らしいですね」

「そうかもしれません」


 帰り道。

 田中とレオンとカラの三人で馬を進めた。

 山脈が背後に見えた。

 大きかった。

「タナカ、三日後に何が起きると思いますか」とレオンが言った。

「わかりません。ただ、備えます」と田中が言った。

「備えるとは」

「三国に伝える。ロイド卿と軍の準備を確認する。OLAとの対話の内容を全部共有する。それだけです」

「それだけですか」

「今できることは、それだけです」

「向こうが来たら、どうしますか」

「来てから考えます」

「来てから」

「来る前に全部考えようとすると、動けなくなります。来てから、その場でできることをやります」

「やってみないとわからない、ですね」

「そうです」

「わかりました」

「レオン、今日の記録を整理してもらえますか。今夜中に三国へ送りたいです」

「はい。今夜中にやります」

「ありがとうございます」

「カラさんも、今日の記録を送っていただけますか。ランセルへ」

「今日中に送ります」

「ありがとうございます」

 田中は馬を進めながら、メモアプリを開いた。

 【六回目の訪問・記録】

 ・OLAが待っていた。信頼が生まれている。

 ・GOLを止める、という意思をOLAに伝えた。OLAが肯定した。

 ・OLAが急いでいるサインを出した。三日後の可能性を示した。

 ・OLAが一メートルまで近づいた。今まで最も近い距離。

 ・今日、OLAとTNAが同じ方向を向いた。

 最後に一行書き足した。

 ・三日後に何かが来るかもしれない。ただ、一人ではない。OLAも、同じ方向を向いている。


次回「第六十九話 三日目の朝、山脈が光った」へつづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ