奇妙なお下がり
部屋でトウモロコシ茶を飲みながら、ぼんやりとメダカの水槽を眺めていた。
時折、グラスの中で氷がカランと崩れる音がして、
そのたびに部屋の空気が少しだけ涼しく感じられる。
こたつの上に置いていたスマホが、ぶるっと震えた。
「誰や…?」
そう思いながら画面を見ると、高校時代の友人の名前が表示されていた。
「珍しいこともあるな」
そう呟きながらメッセージを開く。
「よぅ、久しぶり、覚えてるか?覚えてたら返事くれへんか?」
なんやろ、と思いながら
「久しぶり、何年ぶりよ。どうしたん?」
と返す。
すぐに既読がついて、返事が届いた。
「良かったわ。忘れられてたらどうしようかと思ったわ。ちょっと聞きたいことあるねん?」
聞きたいことってなんやろ?そう思いながら
「どないしたんよ? 通話の方がええか?」
と送ると、ほぼ同時に着信が鳴った。
「よう、久しぶり」
「おぅ、久しぶり。どうしたんや?」
電話越しの声は昔と変わらない。
少し笑いながら、友人が言う。
「実はな、お前、学生の頃から怪談とか好きやったやろ?」
「おぅ、まぁ、好きやな」
「まだ、話とか集めてんのか?」
「まぁ、集めとるよ」
「ならちょうど良かったわ。ちょっと聞いてや」
「聞くだけやぞ」
そう返すと、電話の向こうで友人が小さく笑った。
「ありがとう」
「ええで」
そう言うと、電話の向こうで友人が小さく息を吸った。
「実はな、最近、嫁が息子の通ってる幼稚園のママ友から聞いた話なんやけどな」
一度、咳払いが聞こえる。
「家の宅配ボックスに差出人不明の小包が入ってたらしくてよ。中身は子供用の服らしいねんけど、サイズとかちょうど良かったらしい」
「誰からの荷物かわからんもんやから怖いやろ?」
「せやな、でも、そこのお家、ありがたいってなったんやって。ご近所のママ友さんからちょくちょく服のお下がりも貰ってたから、その人かなってなったらしいわ」
「いや、それ普通に怖いやん」
「せやろ?まぁ、まだそこまでは良かったんや」
少し間が空く。
「でもな、その服を子供に着せてから、ちょっと間経ってからなんや。そこの子がな、夜に知らん子の名前を呼んだり、壁の一点をじーっと見つめたりするようになったらしい」
「知らん子って幼稚園の友達じゃないん?」
「それが、その幼稚園におらん女の子の名前らしい」
「意味がわからんな」
「せやねんな。でや、嫁とそんな話しててお前ならってなったねんけどな」
「いや、そんな話は聞いたことないなぁ」
「そうか……すまんな。なんかママ友さんが偉く不気味がっててな。元々活発な子やったのに、急に内気な子になってもたらしくてよ。うちの嫁なんかはえらく心配してて」
「そう言われてもなぁ……」
「すまん……。周りのママ友とかに聞いても、そんな小包は入れてないらしくてな。ホンマになんなんやろな……」
「奇妙な話やな」
「せやろ?」
「まぁ、なんかそんな話聞いたら、連絡するわ」
「おぅ、すまんな」
「いや、ええで」
「また久しぶりに飯でも行こうや」
「おぅ、また、空いてる日連絡くれよ?」
「わかった、また、嫁とも話しとくわ」
そう言って通話が切れた。
静かな部屋に、氷がカランと崩れる音が響く。
差出人不明の小包か……
そんなことを考えながら、キッチンで追加の氷とお茶を入れていると
ゴトッ
玄関の方から、何かが落ちたような音がした気がした。




