子供が見たのは?4
麦茶の入ったグラスを前に置いてもらう。
カラン、と氷が静かに鳴った。
改めて簡単に自己紹介を済ませてから、俺はJrのほうへ向き直る。
「もう一度、こないだの話してくれる?」
そう言うと、Jrは少しむくれたように、
「おっちゃん、忘れたん? まぁ、ええけど」
「俺はもう一回聞きたいんや。お話できるやろ?」
「できるで」
と笑いながら話し始めた。
内容は前に聞いた時とほぼ同じやったが、“夜、話し声の前に小さくチリンという音がした”という一言が追加されていた。
大人四人で顔を見合わせる。
その時、Jrが俺の膝の上に置いていた妖怪図鑑を指さした。
「おっちゃん、その本何?」
「ん? おっちゃんが子供の頃に買ってもらった妖怪図鑑や。読むか?」
「うん、読む」
笑いながら本を渡すと、Jrはペラペラとページをめくりながら、
「これ絵が怖いなぁ…」
と小さく呟きつつ、真剣に読み始めた。
その様子を見ながら、嫁友さんが口を開いた。
「珍しい話ですよね」
「確かにな。子供だけ聞こえて見えてるってのはまぁ、よく聞くけど…」
友人夫妻も頷きながら、
「うーん…」
と考え込んでいる。
そんな話をしていると、突然Jrが声を上げた。
「これ似てる!!」
全員がそちらを見る。
「見たやつがのってたんか?」
「せやで、こんなやつやで!」
Jrが指さすページを覗き込んだ瞬間、大人四人とも言葉を失った。
そこに載っていたのは、妖怪の行列の一体。
草履のような形をした、“履き物だけが歩く”奇妙な存在。
嫁友さんが息を呑む。
「それって……」
友人夫妻も「えっ?」と驚いた顔をしている。
俺はJrに向き直る。
「間違いない?」
「うん。この形で間違いない」
Jrは嬉しそうに頷きながら、その“履き物の妖怪”を指さし続けていた。
その無邪気さとは裏腹に、俺たち大人はなんとも言えない空気に包まれた。
ふと、暗くなり始めた外を見た時、視界の端で何かが揺れた気がした。




