子供が見たのは?3
スマホのカレンダーを見ると、週末は珍しく予定が入っていなかった。
“週末空いてるけどどうする?” とメッセージを送る。
すぐに返事が来た。
『おぅ、なら久しぶりに飲もうや』
“ええけど、お前、ちゃんと嫁さんの許可取れよ” と返す。
『おぅ、任せとけ』
“お前、そう言うて前取ってなくて気まずい雰囲気なったやんけ”
『大丈夫や』
ほんまかいなと思いながら、“また時間とか連絡くれ” と送って、その日はそのまま寝てしまった。
それから週末まで、Jrが言っていた“ぞろぞろ歩いてた何か”が気になり、自分なりに調べてみることにした。
「部屋のどこかに妖怪図鑑があったはずやな」
そう思いながら部屋を探すと、子供の頃に買ったまま、挿絵が怖すぎて奥にしまい込んでいた一冊が出てきた。
ページをペラペラとめくりながら調べてみるが、草履のようなものが歩く妖怪なんて、どうにも検討がつかない。
怪談好きの友人にも聞いてみたが、
「情報が少なすぎるわ」
と返されて、結論は出なかった。
金曜日の昼、仕事の合間にスマホが震えた。
『明日、14時頃に来てくれ。嫁の友達もおるけど気にせんでくれ』
“大丈夫なんか?”
『向こうの了承も得てるから大丈夫や。お前と同じ怪談好きだよ』
“はいはい”
そう返して、また仕事に戻った。
次の日、早めに目が覚めた。
カーテンを開けると、綺麗な青空が広がっている。
「いい天気だな」
そう呟きながらメダカに餌をやり、自分の朝食の準備をする。
アイスコーヒーを淹れて、チーズをたっぷり乗せたトーストを焼く。
サッと済ませて掃除をしてから、出る準備を整える。
「例の妖怪図鑑も持っていこう」
そう思い、バッグに入れる。
早めに家を出て、車に乗り込んだ。
途中で蕎麦を食べて、手土産を買ってから友人宅へ向かった。
待ち合わせ時間ぴったりに着いてドアホンを押すと、家の奥から バタバタバタッ と小さな足音が近づいてきて、その勢いのまま扉が開いた。
「おっちゃん、待ってたで!」
「おぅ、久しぶり。……でも開ける前に誰が来たか確認してから開けや」
「わかった〜」
分かってるんかどうか怪しい返事を残して、Jrはそのまま部屋へ走って戻っていった。
靴を脱いで続いて中へ入る。
リビングに向かうと、テーブルには友人夫妻と、髪の長い女性が一人座っていた。
「おぅ、久しぶり」
そう声をかけながら、買ってきたお土産を差し出す。
「これ食べて」
友人の嫁さんが笑顔で受け取ってくれた。
「ありがとう。ちょうどお茶淹れようと思ってたとこやねん」
髪の長い女性も軽く会釈してくる。
落ち着いた雰囲気で、どこか柔らかい笑い方をする人や。
友人が紹介してくれた。
「この人、嫁の友達でな。お前と同じで怪談好きやねん」
「はじめまして。○△さんの話、よく聞いてます」
柔らかい感じの話しやすそうな人だった。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
そう言って席に着くと、Jrがまたバタバタと戻ってきて、
「おっちゃん、座って座って!」
と元気に椅子を引いてくれる。
「はいはい、ありがとうな」
そんなやり取りをしながら軽く頭を下げ、腰を下ろす。




