↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
655/673

目に留まるのは

夕飯を食べ終えて、部屋で一服しながらスマホのマップアプリを開いた。

最近の日課になっているウォーキングのルートを確認してみると、どうやら同じ道ばかり歩いていたらしい。

「慣れてきたし、そろそろ負荷あげてもええか」

そう思いながら地図を指でなぞり、少し遠回りしながら最寄り駅を経由するルートを組んでみる。

距離を計算すると、今までより約1.5キロほど長い。

山裾の道路を通るし、アップダウンもそこそこある。

「ええ感じやな。今日からこれで歩いてみるか」

スマホをテーブルに置き、麦茶をひと口。

カラン、と氷がグラスに当たる音が静かな部屋に響いた。

加圧スーツとジャージに着替え、軽くストレッチ。

反射バンドを腕に巻き、スマホとオープンイヤーのイヤホンを装着する。

玄関を開けると、昼間の焼けるような暑さが嘘みたいに落ち着いていた。

夜風が少しだけ肌を撫でていく。

「さて、今日も歩くか」

そう独り言をこぼしながら、ゆっくりと歩き始めた。

ウォーキングの時間とテンポを測るために、

いつものウォーキング用プレイリストを選んで再生する。

軽快なリズムが耳に流れ、身体が自然と歩くモードに切り替わっていく。

家を出て、まずはいつもの大きな幹線道路を渡る。

そこから細い路地へ入ると、さっきまでの車の音が嘘みたいに静かになった。

街灯の明るさもぐっと落ちて、夜の空気が濃くなる。

「ちょっと怖いかもな」

そう思いながらも、足元に気をつけて歩く。

ジャッ、ジャッ、と自分の足音だけが規則的に響く。

やがて山裾の道に出た。

そのまま駅のほうへ向かって歩いていく。

ポツポツと並ぶ街灯が頼りなく灯っていて、その下を通るたびに影が伸びたり縮んだりする。

いくつか街灯を越えたところで、ふと先の灯りの下に何かが落ちているのが見えた。

(ん?なんやあれ?)

近づいてみると、最近流行りの大きめのぬいぐるみキーホルダーが落ちていた。

「誰か落としていったんかな」

街灯の下、やけにくっきりと見える。

そう思いながら通り過ぎようとしたが、なぜか視線がその落とし物に引っ張られる。

(そういや駅前に交番あったよな)

拾って届けようかと手を伸ばしかけて、「あ、身分証家に置いてきたわ」と思い出し、手を引っ込めた。

そのとき、ふと気づく。

音楽が止まっている。

周りの音も、風の音も、虫の声も、何もない。

(あれ?おかしいな……)

ポケットからスマホを取り出そうとした瞬間、指が小銭に引っかかり、


チャリン


とそのぬいぐるみの上に落ちた。

無意識に後ろに摺り足で下がった。

その音が響いた直後、イヤホンから音楽がふつうに流れ始めた。

(なんやこれ……気持ち悪いな)

小銭を拾おうとしたが、暗くて見つからない。

「もうええわ」と思い、早足で駅のほうへ向かう。

明るい駅前に着いてからもしばらく、イヤホンの音量を上げる気になれなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。