会釈を返したら2
そんな日が二、三日続いた。
寝不足のだるさを引きずりながら迎えた週末、隣県の友人と昼にお茶をする約束があったので、少し早めに起きて準備をした。
今日は彼の地元まで電車移動だ。
顔を洗い、冷蔵庫からアイスコーヒーを取り出してコップに注ぐ。
数日の寝不足のせいか、気分がどこかイライラしていて、トースターにパンを放り込む手つきも雑になる。
サッと朝食を済ませてから髭を剃り、髪を整え、オープンイヤーのイヤホンでお気に入りの曲を流す。
少し気分が軽くなったところでバスに乗り、駅へ向かった。
電車を乗り継ぎ、待ち合わせより一本早い電車で向かう。
到着してすぐ、彼にメッセージを送る。
『早いけど着いたぞー。時間潰してるからゆっくり来てー』
すぐに返事が来た。
『相変わらず早いな。今から向かうわ』
『すまんね』
『ええで、いつもの事やわ』
『へへへ、駅の南側のロータリーにおるわ』
『はいよ』
ロータリーのベンチに座り、人の流れをぼんやり眺めていると、彼の車がスッと入ってきた。
助手席の扉を開ける。
「よぅ、お迎えありがとう」
「おぅ、乗ってくれ」
手早く乗り込み、シートベルトを締める。
カチッという音を確認してから、彼は車を発進させた。
駅から少し離れたオシャレな喫茶店に車を停め、店内へ。
コーヒーの香りが広がり、なんとも心地いい。
奥のテーブルに座り、アイスコーヒーを注文する。
「元気にしてたか?」
「おぅ、元気やぞ。お前はなんか疲れてそうやけど大丈夫か?」
「おぅ、大丈夫やぞ」
そんな他愛ない話をしながら、お互いの近況を確認する。
怪奇蒐集が共通の趣味だからか、自然と話題はそちらへ向かった。
「そういや、最近なんかおもろい話は仕入れたか?」
そう聞かれ、目線を上に逸らしながら、
「いやぁ、あんま無いなぁ」
と答える。
「そうか、俺もあんま無いんよな。そういや、ここ二、三日変なことはあったんよな」
「おっ、それは聞かせてや」
そこから、直近の出来事を話した。
すると、それまで笑っていた彼が、頬を引きつらせながら腕を組んだ。
「変な話やろ?」
そう問いかけると、
「おぅ、そうやな」
とだけ言い、目線を少し下げる。
「なんか知ってるんか?」
「いや……」
そう口ごもる彼に、
なんやねん
と思いながらコーヒーを飲む。
カラン、と氷の崩れる音が響いた。
お茶会を終え、駅まで送ってもらい車を降りる時、
彼がふいに真顔で言った。
「帰りしにな、知らんやつの後ろにそっとついて、振り返ったら軽くでええからお辞儀してから帰りな」
「ん?なんでや?」
「ええからしろよ」
妙に真剣な顔で言う彼に気圧されて、
「わかったよ」
と手をヒラヒラさせながら別れた。




