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会釈を返したら1

週の真ん中の仕事帰り。

刺すような日差しの中、なんとか定時で仕事を終わらせて、更衣室へ向かった。

額に滲んだ汗を手の甲で拭いながら扉を開けると、ひんやりした空気がふわっと漏れてくる。

「暑いなぁ…」

そうぼやきながら作業着を脱ぎ、制汗シートで身体を拭く。

あの独特のヒヤッとした感触が気持ちよくて、少しだけ息が軽くなる。

シャツに着替えて鞄を肩にかけ、会社を出た。

駅までの道はまだ明るくて、アスファルトがじんわり熱を返してくる。

ホームに着いた瞬間、ちょうど電車が滑り込んできたので、軽く小走りで乗り込んだ。

反対側の扉に背中を預けて、ふぅと息をつく。

乗り換えてバス停に着く頃には、夕方の風が少しだけ涼しくなっていた。

スマホを眺めながらバスを待っていると、ふと背後に誰か立った気配がして、なんとなく振り返る。

若い男性がひとり、首をカクカクと動かしながら深々とお辞儀をしてきた。

(あれ、知り合いやったっけ…?)

とりあえず軽く会釈を返すと、男性は口元をちょっとだけニヤッとさせて、そのまま静かに歩いていった。

「なんやったんやろな…」

そんなことを思っているうちにバスが来て、いつものように乗り込んで帰路についた。

家に帰ってまず風呂に入り、汗を流してさっぱりする。

湯上がりの涼しい空気が気持ちよくて、少しだけ疲れが抜けた気がした。

夕飯は、暑さで食欲が落ちていたので冷たいそうめんにした。

梅肉を少し混ぜると、酸味がアクセントになってちょうどいい。

ズルズルとすすりながら、ふと帰り道で見かけたあの男性のことを思い出す。

首をカクカクさせながらお辞儀してきたけど、

あんな知り合いおったかなぁ……

そんなことをぼんやり考えつつ、食器を片付けた。

その日は少し早めに布団にもぐり込む。

暑さのせいか、身体がだるくて、すぐにまぶたが重くなった。

夜中に一度目が覚めて、トイレへ行き、ついでに水を飲んで部屋へ戻る。

布団に入ってウトウトしていると、ベランダの方から


コン…コン…


と、何かが当たるような音がした。

「うるさいなぁ……」

そう思いながら寝ようとしたが、一定のリズムで続くので気になってカーテンを開ける。

外は静かで、特に何もない。

念のためライトで照らしてみても、やっぱり何もいなかった。

「なんやねん……」

軽く舌打ちしてカーテンを閉め、布団に戻る。

それでもしばらく、コン…コン…と音が続いていた。

寝付けないまま空が少し明るくなり始める頃、ようやく音が止んだ。

なんだったんやろな……

そう思いながら、いつものように仕事へ向かった。


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