返事したのは?3
家に着いて、後部座席のダンボールをそっと抱え上げる。
玄関先で封をバリバリと開ける音が、閑静な住宅街にやけに響いた。
中から火鉢を取り出し、まずは家の外でひっくり返してみる。
カラン、と軽い音がして、底の丸みが地面に触れた。
中には何も入っていない。
埃が少し積もっているだけで、特に変わったものは見当たらない。
「なんや、普通やんけ…」
そう思いながら玄関先の軒下にそっと下ろす。
スマホのライトで中を照らすと、やっぱり綺麗なもんで、古い陶器特有の匂いが少しするだけ。
軽く水洗いして、外に伏せて干しておく。
その日はもう疲れていたので、そのまま寝ることにした。
翌朝。
昨日の夜、彼の家で聞こえた“あの声”を思い返しながら外に出る。
火鉢は、ただそこにあるだけ。
特に変わった様子はない。
「うーん…」
唸りながら、とりあえず睡蓮鉢として使うことに決めた。
砂利を敷き、カルキ抜きした水と飼育水を半々で注ぎ込む。
水面が火鉢の縁ぎりぎりまで満ちて、朝の光を反射して揺れた。
そこにメダカとエビ、浮草をそっと入れる。
火鉢の白地に黒の松の絵付けが、水と生き物の色を引き立てて、思った以上に見栄えがいい。
思わず口から言葉が漏れた。
「ええ感じやな」
その瞬間
ゴボ…ゴボボ…
くぐもったような、小さな泡の音がした。
水が動いたわけでもないのに、火鉢の底のほうから響いたような気がした。
少しだけ背筋がむずむずしたが、もうメダカも入れてしまったし、今さら抜き出すのも手間だ。
「まぁ、防犯にもええか」
そう自分に言い聞かせて、火鉢の写真を撮り、彼に送った。
ゴボリ……




