豪雨に出かけるのは?3
とりあえず濡れた足跡を踏まないように気をつけながら玄関に向かい、新しい靴を一足、そっと玄関に出した。
「外は晴れてます、どうぞお行きなさい」
不思議に思いながらも、親父に言われた通り淡々と事務的に口にする。
それからは部屋に戻り、アイスコーヒーを飲みながら夜明けまで映画を見て過ごした。
久しぶりに五本も観た頃、外を見ると昨日とは打って変わって快晴になっていた。
「いい天気やな」
そう思いながら部屋を出ると、昨日の足跡は跡形もなく乾いていた。
ただ、よく見ると乾き跡だけが薄く残っている。
踏まないように注意しながらトイレに行き、部屋に戻ると親父からメッセージが来ていた。
「今から家に向かう
部屋に竹箒あるか?」
「いや、ないで」と返すと、
「わかった」
とだけ返ってきた。
玄関に向かうと、昨日出した新しい靴がまるで一日バケツに放り込んだみたいにボトボトに濡れていた。
「うわぁ……」
片付けようかと思ったが、親父が来てからにするかと朝食の準備を始める。
正直眠い。早く寝たい。
そんなことを思いながらトーストを食べていると、ピンポーンとインターホンが鳴った。
出ると、両親が袋と竹箒を持って扉の前に立っていた。
「久しぶり」
そう言いながら玄関を開ける。
「久しぶりやな。……しかし面倒な」
親父はそう言いながら玄関の濡れた靴を見る。
そして足跡を踏まないように部屋に上がり、ざっと見渡してから袋に入った灰をテーブルに置いた。
「おい、家庭用のゴミ袋あるか?」
「そこにあるで」
「なら、靴を外向きにしたままそれに入れろ。手で触るなよ」
そう言って火箸を渡してくる。
面倒やなと思いながら、火箸でそっとすくい上げるようにして靴を袋に入れる。
玄関の外に置いた瞬間、靴から水がぽたぽた落ちた。
濡れた場所を見ていると、親父が言った。
「それが乾いたら、この袋の灰を足跡のところに撒いて、竹箒で外に掃き出せ。終わったら竹箒ごとゴミ処理場に捨ててこい。今日なら空いてるはずや」
そう言って、俺の肩を強く掴んだ。
「ええな?」
「わかったよ。……なんでなん?」
「ええからそうしとけ。もし同じようなことあったら、同じようにするんや」
「わかったけど、理由……」
「聞かんでええ」
「えぇ……」
そう言いながら、両親は帰っていった。
母親は帰る前に、
「ちゃんとするんやで。今日中にしっかりやるのよ。またご飯食べに帰ってきなさい」
「はーい」
そう返事してから、一眠りした。
昼前に目が覚めると、濡れた跡はすっかり乾いていた。
袋の灰をゆっくりかけていく。
粉が舞いながら足跡の上にふわっと乗った瞬間、
ジュッ
と小さく音がした。
「……嫌な音やな」
全部に灰をかけ終えてから、竹箒で外に掃き出す。
そのあと、袋に入るように竹箒を折って袋に入れた。
袋ごと地元のゴミ処理場に持っていく。
係の人に「それだけですか」と聞かれて、「はい」とだけ返して家に戻る。
歩きながら、ふと頭に浮かぶ。
雨の日に、何が家におったんやろうな。
考えたところで答えなんか出るはずもないのに、脳のどこかがずっと“そこ”を触ってくる感じがする。




