映り込むのは?1
連休に入る前の日の夜。
クーラーの効いた部屋で、針子がちょこちょこ泳ぐのを眺めながら、のんびり動画を流して過ごしていた。
グラスの中で、たまにカランと氷が崩れる。
その音が、静かな部屋にちょうどいいリズムで響く。
スマホが震え、画面に友人の名前が表示された。
スワイプして通話に出る。
「おぅ、夜分にごめんな。明後日空いてないか?」
「おぅ、久しぶり。ちょっと待ってよ」
カレンダーを確認すると、特に予定は入っていない。
「空いてるぞー」
そう返すと、友人は少し安心したように言った。
「明後日うちに来てくれんか? ちょっと蔵の整理で人手が欲しくてな…」
「蔵の整理か…」
「頼むよ。そういや、この前片付けてたらな、デカいお前好みの睡蓮鉢あったぞ。良かったらどうや?」
「魅力的なお誘いやな。しゃーないな」
「ありがとう、助かったよ。」
「何時かだけまた連絡くれ」
「おぅ、10時に来てくれたらええぞー。親父とか親戚のおっさんも居るけど、お前なら大丈夫やろ?」
「気ぃ使うやん…」
「まぁまぁ、昼飯は楽しみにしといて」
「わかったよ」
そう言って電話を切る。
クーラーの風がふわっと頬に当たる。
針子が水面近くで光を反射させながら泳いでいる。
「そういや、あいつんちの蔵、あんまりいい思い出ないんだよな…」
そんな独り言をこぼしつつ、布団に潜り込んで、ゆっくり目を閉じた。
手伝いの日の朝、休みにしては少し早めに目が覚めた。
カーテンを開けると、雲ひとつない青空が広がっている。
気温は上がりそうやなぁと零しながら、メダカに餌をやり、アイスコーヒーをグラスに注ぐ。
トーストが焼ける香りが部屋に広がって、なんとなく気分がいい。
スマホでニュースを流し見しながら朝食を済ませ、顔を洗う。
汚れてもいい服に着替えて、軽くストレッチ。
軍手をポケットに突っ込んでから車に乗り込む。
エンジンをかけ、ナビに友人宅をセットし、プレイリストから気分に合う曲を選んだ。
ゆっくりと車を発進させる。
思ったより道が空いていて、早く着きそうだったので、途中のコンビニで手土産を買ってから向かうことにした。
友人の家の駐車場に車を停め、「着いたぞ」とメッセージを送る。
ほどなくして、家の奥から友人が現れた。
サンダルにスエット、髪はボサボサで、まだ寝起きの欠伸をしながら片手を上げる。
「おはよう…」
「おはよう。お前、さっきまで寝てたな」
「おぅ、すまんね」
「まぁ、ええわ。これお土産な」
「気ぃ使わんでもええのに」
「まぁ、大したもんじゃないから」
「ありがとう」
そんなやり取りをしながら、友人の後ろについて家の中へ入っていった。




