余分の一枚1
夜のクーラーが静かに回る部屋で、ぼんやりと動画を眺めながら冷たい麦茶を口に運んでいた。
グラスの外側についた水滴が、指先にひんやりと心地いい。
そのとき、テーブルの上のスマホが小さく震えた。
画面を見ると、しばらく会っていなかった隣県の友人からのメッセージだった。
「よぅ、明日暇ならうちに来ないか?
何人か声かけてるねんけど、どう?」
久しぶりの名前に、自然と口元がゆるむ。
スマホのカレンダーを開いてみると、明日は特に予定もない。
「ええでー。何時にどこ行けばええんや?」
そう返して、麦茶をひと口。
カラン、と氷が転がる音が部屋に響いた。
すぐに返信が届く。
「明日、10時にここへ来てくれ」
位置情報が添えられていて、開いてみると、どうやら彼の家ではなく、少し古い民家を改装した貸別荘らしい。
写真をざっと見て、料金を軽く調べて、「なるほど、こんな感じか」とだいたいの目算をつける。
なんや、ちょっと楽しそうやん。
そう独り言をつぶやいて、いつもより少し早めに布団に入った。
翌朝は、いつもより少し早く目が覚めた。
カーテン越しの光が柔らかくて、なんとなく気分がいい。
キッチンでコーヒーを淹れて、トーストを焼く。
香ばしい匂いが部屋に広がって、簡単な朝食でも十分満足できる。
顔を洗って身支度を整え、車に乗り込む。
まだ早朝なのに、外はもうじんわり暑い。
エンジンをかけてエアコンを入れると、冷たい風がすぐに広がった。
今日はアップテンポなレゲエを流していく。
ビートに合わせて指先が軽く動くくらい、気分が上がる。
道路は驚くほど空いていて、車は気持ちよく進んだ。
途中で土産を買い、予定より少し早めに目的地へ着く。
「着いたぞ」
とメッセージを送ると、ほどなくして民家の前に友人が姿を見せた。
相変わらず、約束の時間より早く来ている。
「おはよう、久しぶりやな」
「おぅ、久しぶり。これ土産な」
「悪いな。あと三人来るから、とりあえず中でくつろいどいて」
「おぅ、ありがとう」
そう言って並んで民家に入る。
大きめの土間があって、昔ながらの家の匂いがふわっと漂う。
木の柱や土壁の色合いが落ち着いていて、なんとも言えない良い雰囲気だ。
「ようこんなとこ見つけたな」
そう言うと、友人は照れくさそうに笑った。
「おぅ、こないだ動画で紹介されててな。
なかなか良さげで、すぐ予約したんや」
「へぇ、行動が早いな」
「おぅ、その時は誰呼ぶかなんて考えてなかったけどな」
「行き当たりばったりやないかい」
「へへへ」
頭を掻きながら笑うその姿が、昔と変わらなくて少し安心する。




