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後ろに居たのは2

喫茶店に入ると、挽きたてのコーヒーの香りがふわっと広がってきて、外の暑さが一気に遠のいた。

窓際の席に腰を下ろし、お互いアイスコーヒーを頼む。

運ばれてきたおしぼりで手と顔を軽く拭くと、ひんやりした感触が気持ちよかった。

グラスの冷たい水をひと口飲んだところで、向かいの彼も同じようにおしぼりで顔を拭き、水を飲んでから、少しだけ目線を落として話し始めた。

「実はな、先週末に彼女の住んでるところにデートに行ったねん。普通に家デートしに、電車で行ってたから、終電なくなる前に帰らなあかんやろ?せやから早めに駅向かってんけどな」

「へぇ、車で移動するの好きなお前にしては珍しいな」

「おぅ。彼女が“たまには電車でおいでよ”って言うてな。いつも私だけ電車やからって」

そう言いながら、彼は顎をさすって苦笑いする。

「お前、いつも送って行ってなかったっけ?」

「送ってるぞ。ただ、珍しいこと言うから物は試しやと思って電車で行ってみたら、まぁ大変でな。乗り慣れてへんのもあるけど、時間に縛られるのが面倒でよ」

「せやろなぁ」

そう返しながら、アイスコーヒーをひとくち飲む。

氷がカランと鳴って、店内の落ち着いた空気に溶けていった。

「それで?」

続きを促すと、彼はグラスの縁を指でなぞりながら話し始めた。

「いや、田舎の駅やからか、ほぼ人おらんホームでな。しかも慣れてへん電車やろ?なかなか心細くてよ。スマホ見ながら彼女とやり取りしてたんやけどな」

「まぁ、慣れへん電車で一人やと不安にはなるわな」

「おぅ。でな、急に襟足を触られた気がしてよ」

そう言って、彼は自分の首筋の髪を軽く触った。

「虫かと思ったけど、なんもなくてな。そのまま電車が来たから乗ってん。で、ついウトウトしてもうて、気付いたら目的の駅やって。慌てて乗り換えて、地元まで帰ってきたんやけどな」

「危なかったな」

笑いながら言うと、彼は少しだけ肩をすくめた。

「おぅ。それでよ。改札出ようとしたら、急に首筋に生暖かい息みたいなんがこう、ふぅってされたみたいに当たって、なんか気持ち悪くてな」

「それは嫌やな」

「で、家帰ってから彼女にそのこと話したらさ。なんか慌てた感じで“振り返ってないよね?”って言われてん」

「理由は聞かず?」

「いや、“振り返ってない”って答えてから聞いたら、変な間があってからはぐらかされてな。なんやったんやろか?」

「まぁ、なんもないんやろ」

「それはないな。でもまぁ、次会う時に聞いてみるわ。 気持ち悪いし、次は迎えに行って遊びに行こうと思ってる」

そう言って、残ったアイスコーヒーを飲み干した。

店を出て、彼に家まで送ってもらい、車が走り去るのを見送ってから玄関へ向かう。

しかし、彼が言っていた、彼女の確認だけが残った。


振り返ってないよね?


そう考えた瞬間、汗とは違うひやりとした感触が走った。

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