後ろに居たのは1
平日の仕事終わり、汗で背中にへばりついたシャツを脱ぎ、制汗シートで首筋から腕にかけてゆっくり拭いていく。
ひんやりした感触が気持ちよくて、さっぱりしたところで新しいシャツに袖を通した。
ロッカーをバタンと閉めてスマホを見ると、短いメッセージがひとつ。
「よぅ、今日時間ねぇ?」
なんや急やなと思いながらロックを外し、そのままアプリを開いて返す。
「よぅ、時間はあるけどどうした?」
送信して更衣室を出ると、外はチリチリと焼くような日差し。
思わず眉間に皺が寄る。
駅へ向かって歩き出したところで、スマホが震えた。
画面には友人の名前。
「実はな、聞いて欲しい話があるんや。
お前好みの話やぞ」
なんやそれ、と思いながら
「わかった。今から帰るから途中の駅で会おう」
と返す。
すぐに返信が来た。
「お前の会社の最寄り駅に既におるぞ」
ストーカーかよ、と心の中で突っ込みつつ、
「相変わらず準備がいいこって」
と皮肉混じりに返すと、
「とりあえず待ってるでー」
と軽い返事。
はぁ、とため息をひとつ。
結局、急ぎ足で駅へ向かうことにした。
駅の手前の交差点に差しかかったところで、ハザードをつけて停まっている一台の車が目に入った。
見覚えのある車種と色に、あぁ来てるなと察しながら近づくと、助手席側の窓がスッと下がった。
中から友人がこちらを見て、いつもの悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「乗ってや」
「はいよ」
そう言って助手席に滑り込むと、車内は冷房が効いていて、汗ばんだ肌に心地よかった。
シートベルトを締めながら、
「で?どうした?」
と聞くと、彼は車をゆっくりと発進させながら言った。
「実はな、こないだ遠距離恋愛の彼女に会いに行った時の話なんや」
「彼女って隣県の?」
「おぅ。とりあえず、いつもの喫茶店で話すわ」
そう言って、二人でよく使う馴染みの喫茶店へと車を走らせる。




