表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
626/650

背中に乗るのは?2

登山口近くの駐車場に車を停め、バックを背負って歩き出す。

彼が“プチ登山”と言っていた通り、道はそこまで急ではなく、木漏れ日が揺れる気持ちのいい山道だった。

汗はじんわりとかくけれど、彼はこまめに休憩を挟んでくれる。

どう見てもこちらのペースに合わせてくれていて、その気遣いがありがたかった。

「しんどくないか?」

「まぁ、ぼちぼちやな」

そんな軽口を交わしながら登っていくと、やがて視界が開け、展望台にたどり着いた。

そこには、雲ひとつない青空と、遠くまで広がる景色が待っていた。

「……暑さ忘れるな、これ」

思わず本音が漏れる。

「な、登って良かったやろ」

彼がさわやかに笑いながら言うので、つい皮肉を返す。

「まぁまぁやな」

「男のツンデレはキモイぞ」

「うるさいわ」

軽く蹴りを入れてやると、彼は笑いながら避けた。

展望デッキのベンチに腰を下ろし、持ってきた軽食を広げる。

風が通り抜けて、汗がすっと引いていく。

近況や仕事の愚痴、最近見たアニメの話まで、他愛ない会話が続いた。

気づけば、1時間ほどゆっくりしていた。

「そろそろ下りるか」

「せやな。帰りは楽やしな」

そう言いながら立ち上がり、ゆっくりと下山を始めた。

夏の光が、木々の間からきらきらと差し込んでいた。

下山が一番危ない、と彼が言っていたので、足元をしっかり確認しながらゆっくり降りていく。

登りよりも神経を使うせいか、休憩を多めに挟んでくれるのがありがたい。

「気ぃ抜くと滑るからな」

「わかってるって」

そんなやり取りをしながら、ちょうど中間地点に差し掛かったときだった。

ふわりと、甘い発酵したような匂いが鼻をかすめた。

「……ん?」

同時に、背中のバックが急に重く感じる。

(疲れが溜まってきたか?)

そう思いながら、「まぁ、もう少ししたら休憩できるし」と自分に言い聞かせて歩く。

自然とペースが落ちていき、口数も減っていった。

彼がちらりとこちらを見てくる。

「大丈夫か?」

「大丈夫」

そう返すものの、足がだんだん重くなり、ついにその場にへたり込んでしまった。

「すまん、ちょっと休憩させて」

「おぅ、無理すんなよ」

道の端に座り込み、水を飲んで深呼吸する。

けれど、なかなか調子が戻らない。

「……ヤバいな」

思わず漏れた独り言に、彼はそっとチョコレートバーを差し出してきた。

「食う元気ないぞ……」

そう言う俺に、彼は包装を開けながら笑う。

「ひとくちでもええから食え」

そのまま口に突っ込まれ、モチャモチャと咀嚼して飲み込む。

すると、さっきまでの疲れやだるさが、嘘みたいにすっと消えていった。


「あれ?」


自分でも驚くほど体が軽い。

彼はニヤリと笑いながら

「それ食べ終わったら急いで降りるぞ」

彼が立ち上がるのに慌てて、残りを口に放り込んで立ち上がる。

さっきまで感じていた重さも、あの甘い匂いも、すっかり消えていた。

彼の後ろについて歩き出すと、風が通り過ぎる時


チッ


舌打ちのよう音が聞こえた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ