雨の中で佇む子3
「俺、あの菓子好きやから数えながら食うてるし」
そう言って、彼は口を尖らせた。
「ごめんって。でも、たまにない? 無意識に口に運んでること。テレビとか見ながらやと、気づかん時あるやん」
「まぁ……それはあるな」
そう言いながらも、彼はどう見ても納得していない顔だった。
「他にはなんか変わったことないの?」
そう聞くと、二人は同時に目線を上に向け、腕を組んで考え込む。
店のざわめきが耳に入る。
焼き鳥を一口かじりながら、二人が思い出すのを待つ。
すると、彼女がぽつりと言った。
「そういえば……足音って、雨の日しか聞こえてないかも」
顎に指先を当てながら、ゆっくり思い返している。
彼も頷きながら言う。
「俺も……菓子が減るの、雨の日やった気がする」
「雨か……」
俺が呟くと、二人は顔を見合わせる。
「それ以外は特に実害もないの?」
そう尋ねると、二人は同時に首を振った。
「ないなぁ」
声が揃っていた。
「まぁ、あんまり気になるようなら……ここの寺にお参り行ってみたらどうや?」
そう言って、スマホで寺のホームページを開いて見せる。
二人が身を寄せて画面を覗き込む。
「へぇ……明日お互い休みやし、行ってみるか?」
「そうね。足音は気になるし」
俺はURLをメッセージに添付して二人に送った。
その後は他愛ない話をしながら、ゆっくり飲んで解散になった。
店を出て互いに背を向けて歩き出した瞬間、晴れているはずなのに、アスファルトが濡れた時の、あの独特の匂いがふっと鼻をかすめた。




