表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
613/650

夜の物音2

リビングに通されると、テーブルには見慣れない女性が一人座っていた。

肩口で切り揃えた髪に、ぱっちりした目が印象的な人だ。

「ただいま。昨日話してたやつだよ」

彼がそう言ってこちらを見ると、女性は軽く会釈した。

「初めまして。彼とお付き合いしてる○○です」

突然の紹介に少し面食らいながら、俺も慌てて頭を下げる。

「初めまして。彼の悪友の○△です」

そう言ってから、横目で彼を睨む。

「……人がいるなら初めから言わんかい」

少し怒ったように言うと、彼は頬をかきながら、へへへと笑って目をそらした。

ため息をひとつつくと、彼は彼女の横に腰を下ろし、俺はその対面に座る。

彼女はすっと立ち上がり、台所でお茶を淹れて戻ってきた。

氷の入った麦茶を置いてくれたタイミングで、俺は小声で彼に言う。

「お前なぁ……彼女が家にいるなら言えよ。

そしたら菓子のひとつでも買ってこれたやろ」

すると彼は、少しだけ肩をすくめて言った。

「すまんな。ちょっと急いだほうがいいと思ってよ」

彼女は、俺と彼のやり取りを聞きながら、困ったように片方の眉を少し下げた。

俺が彼に向かって、

「何も用件聞いてないけど、なんや?」

と尋ねると、

「実はな……彼女と住み始めてから、ちょっと色々あってよ。お前なら、なんかわかるんちゃうか思って」

「なんやそれ」

そう返した瞬間、彼女の右手がそっと彼の服の袖をつまんだ。

不安というより、“話してええん?”と確認するような仕草。

彼はその手に気づいて、少し照れたように笑った。

「お前、そういう話好きやったやろ?」

「怪奇譚とかは好きやけど、聞くの専門やぞ」

「おぅ。聞いてくれるだけでええんや」

「聞くだけでええならええけどよ。変な期待すんなよ」

そう言って麦茶を一口飲む。

冷たさが喉を通っていくのが心地いい。

すると彼は、隣に座る彼女の方へ向き直って言った。

「大丈夫だ。彼はちゃんと聞いてくれるから」

その言い方に、俺は少しだけ引っかかって、

「ん? ちゃんと聞いてくれるってことは……誰かに話したんか?」

と尋ねた。

彼は苦笑いしながら頭をかいた。

「彼女の友達に話したらしいんやけどな……

信じてもらえんかったみたいでよ」

その言葉に合わせるように、彼女は少し俯き、けれどこちらの様子をそっと伺うように視線を上げた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ