表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
608/650

温泉街での撮影2

あちこち見て回って楽しんでいるうちに、気づけばチェックインの時間になっていた。

川沿いの道をゆっくり歩きながら宿へ向かう。

水面を渡る風が少しだけ涼しくて、さっきまでの暑さがすっと引いていく。

今日泊まるのは、いかにも“老舗旅館”という佇まいの宿だ。

普段なら手が届かない値段だけど、特別価格のプランが出ていたのを見つけて、少しだけ予算を上乗せして予約した。

玄関をくぐると、落ち着いた空気がふわりと体を包む。

思わず背筋が伸びるような、静かな品の良さが漂っていた。

「ようこそお越しくださいました」

着物姿の女将さんが、柔らかい笑顔で深くお辞儀をして迎えてくれる。

その所作の美しさに、旅に来た実感がじんわりと湧いてきた。

靴を脱ぎ、受付でチェックインを済ませる。

門限や食事の時間を確認してから、案内された部屋へ向かった。

ハイシーズンによく一人で取れたな。

そう思いながら襖を開けると、一人で使うには広すぎるくらいの部屋が広がっていた。

畳の匂いが心地よくて、窓の外には表通りが見える。

人の気配が遠くにあるのに、部屋の中は不思議なくらい静かだった。

「いい部屋やな」

そう小さくつぶやいて、荷物をそっと畳の上に置いた。

今日は夜の撮影が目的だし、

日が落ちるまではゆっくり過ごそう

そう思って、浴衣に着替えて温泉へ向かった。

暖簾をくぐると、広めの洗い場と内湯、そして奥には露天風呂が見える。

まずは体を洗い、湯気の立つ内湯へそっと浸かった。


「はぁぁ〜……」


思わず声が漏れる。

ここ最近の忙しさが、湯の中に溶けていくようだった。

しばらくして露天風呂へ移動すると、こちらはまた違う風情があった。

岩を組んだ湯船の向こうに、青空がゆっくりと色を変え始めている。

まだ早い時間だからか、人影はほとんどない。

湯面を渡る風が心地よくて、

「やっぱりお高い宿の露天は一味違うな」

と小さく笑ってしまった。

たっぷり温泉を楽しんで部屋に戻ると、夕食まで少し時間があった。

座椅子に腰を下ろし、ぼんやりと天井を眺めていると、控えめにコンコンッと戸をノックする音で我に返る。

どうやら晩ごはんのようだ。

部屋の机には、色とりどりの料理がずらりと並んでいた。

旬の魚の刺身、揚げたての天ぷら、地元の食材を使った小鉢の数々。

「おぉ…」

思わずスマホを取り出して写真を撮る。

旅館の夕食って、どうしてこう胸が躍るんやろな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ