追いかけてきたのは?2
目的の滝まで、ゆっくりと半時間ほど登った。
額ににじんだ汗をタオルで拭いながら、リュックからカメラを取り出して撮影の準備をする。
周りに人がいないことを軽く確認して、構図を探しながらシャッターを切る。
パシャ、と音が響いては、液晶を覗き込む。
なかなか設定が決まらず、露出やシャッタースピードを微調整しながら何度も撮り直した。
パシャ、パシャ。
山の中には、自分のシャッター音だけが続いていた。
ようやく納得のいく一枚が撮れた頃には、日が傾きはじめていた。
思ったより時間が経っていて、少し焦りながらカメラを片付け、山を降りはじめる。
ザッ、ザッ、
と足音を立てて下っていくと、後ろから同じリズムのザッ、ザッという音が聞こえた気がした。
今日は誰もいなかったはずだが、気のせいだろうと思いながら歩く速度を少しだけ上げる。
日はゆっくりと傾き、山の稜線に沈もうとしていた。
暗くなる前に、と急ぎ足で駐車場へ向かう。
なんとか明るいうちに車へたどり着き、
はぁ、はぁ、
と荒い息のまま運転席に滑り込む。
エンジンをかけてエアコンを全開にすると、冷たい風が顔に当たってようやく落ち着いた。
「帰るか」
そう思ってバックにギアを入れた瞬間、バックモニターの端に“つっかけ”のようなものが映った。
えっ、
と思ってミラーを確認するが、そこには何もない。
気のせいか。
そう思い直して車をゆっくりとバックさせ、駐車場を出ようとした時だった。
駐車場の入口に、昼に牛丼屋で見かけたあの爺さんが立っていた。
夕闇の中で、こちらを見ながら、ゆっくりとニヤリと笑っていた。




