夢で会うのは3
思わず彼の首元を見る。
けれど、今は特に跡はなかった。
その視線に気づいたのか、彼は苦笑いを浮かべてグラスを指でつつきながら言った。
「不思議なんやけどな、朝には消えてんねん。最近は少し夢が変わってな…」
「変わったんか?」
「おぅ。冷たい感触で巻き付かれる感じでな」
「すごい変わりようやな…」
「せやろ? 今度は腕に鱗の跡みたいなんがついてたわ…」
「そら、寝れんやろな…」
そう返すと、彼は小さくうなずいて、
「せやねん…どうしたもんかなって思って考え込んでた時にふと、お前ならって頭によぎったんや」
「それで、いきなりの電話やってんな?」
「おぅ。こんな話なかなか真面目に聞いてくれんやろ?」
「せやな。普通の人が聞いたら心療内科勧められるな」
「せやろ?怪奇譚好きなお前なら、なんかしら聞いてはくれると思ってな」
彼はそう言って、少しだけ肩の力を抜いたように見えた。
「そういや、その女に首締められる前後になんか変わったことないんか?」
「うーん…、なんかあったかなぁ…」
腕を組み、視線だけが天井の方へ向く。
週末の居酒屋のざわめきが、その沈黙の隙間にゆっくり流れ込んでいく。
少し前に似たような話を聞いた気がして、顎に手を当てながら考え込む。
女…巻き付かれる…鱗…
そんな単語だけが頭の中でゆっくり回る。
その時、「ポンッ」と彼が手を打った。
その音で思考が途切れ、視線を彼に戻す。
「そういえば、ちょうどその頃に彼女と別れたわ…
なかなか揉めたけど、何とか別れたって感じやったけど」
「揉めたってのは?」
「別れた彼女が、すごい束縛の強い子でな…飲みに行くのも一緒に行くか、男性だけの飲み会以外は嫌って子でな。他にも連絡の頻度がな…」
そう言って、彼は目線を下に落とした。
まぁ、彼の性格から考えれば長続きはしないだろう。
そう思いながら、
「それで?」と促す。
「悪い子では無かったんやけど、なかなか別れるのを嫌がってな… 彼女の友達とかにも協力してもらって、何とかって感じやな…」
「なるほどな…それは大変やったな」
そう言うと、彼は少し苦笑して、
「俺にはもったいないくらいの別嬪さんやってんけどな。家事とか面倒見も良かったんやけど、俺の性格と合わんかったんよな…」
「まぁ、お前は飲み歩きもするし、いろんな人と話したい方やもんな」
「せやねん…申し訳ないとは思ったけどな…」




