夏の鈴の音2
「とりあえず家に着いたら話すよ。彼女も待ってるし」
ハンドルを軽く叩きながら彼が言う。
「おいおい、待ってるってなんやそれ」
思わず眉をひそめると、彼は当然のように続けた。
「いや、お前が来る話は事前にしてあるぞ」
「……お前は俺が嫌がったらどうするつもりやったんや?」
「ん? お前がNoって言わんことくらい分かっとるし。それに本気で嫌なら電話にすら出んやろ?」
ぐうの音も出ない。
確かに、そうだ。
「まぁ、そうやけどさ」
「だからお前と電話が繋がった時点で、彼女には“お前来るで”って連絡してある。本人も了承済みや」
ガハハと笑う声が車内に響く。
ほんま、昔から変わらん。
目的のためなら用意周到。
そのくせ悪気はゼロ。
ある意味尊敬するわ……
悪い意味でな。
そう思いながら窓の外を眺めていると、車はゆっくりと彼の家の前に停まった。
車から降りて部屋に入ると、彼の彼女が心配そうにこちらを見た。
「すみません、彼が無理やり連れてきたんじゃないですか?」
栗色の髪を肩で切りそろえた、落ち着いた雰囲気の子だ。
久しぶりに会う。
「久しぶり。今回も拉致されてきたよ」
そう言うと、彼女は小さく肩を落とした。
「やっぱり……毎回毎回、すみません」
「いや、いいよ。あいつはそういう奴やからさ」
そう返すと、彼女は少し安心したように微笑んで、テーブルへ案内してくれた。
椅子に腰掛けると、向かいに彼らが並んで座り、冷たい麦茶が出される。
カラン、と氷が崩れる音が心地よく響いた。
しばらく沈黙が落ちる。
「で? どうした?」
自然と声が少し低くなる。
長い付き合いだから、空気で分かる。
彼は指先を胸の前で組みながら、少し言いにくそうに口を開いた。
「実はな、こいつがおかしなことを言うようになってな……二週間くらい前からなんやけど。お前なら、なんか解決の糸口になるんじゃないかと思ってよ」
そう言いながらこちらを見るが、目が泳いでいる。
後ろめたさはあるらしい。
「俺は怪奇譚は好きで聞くし集めもするけど、
解決してるわけじゃない。それを前提で話は聞くけど、責任は持てんってのは前も話したよな?」
そう言うと、彼は慌ててうなずいた。
「お、おぅ。もちろん分かっとる」
そう言いながら、心配そうに彼女のほうへ視線を向ける。




