表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
597/663

雨の休日

休日の朝、いつもより少し早く目が覚めた。

布団の温もりを名残惜しみながら起き上がり、カーテンを開けると、空には厚い雲がゆっくりと広がっていた。

まるで大きな絨毯を敷き詰めたみたいに、どこまでも続いている。

「今日は雨かな」

そんな独り言が自然とこぼれる。

せっかくの休みなのに、と思いながらも、静かな朝の空気は悪くない。

布団を畳み、部屋着に着替える。

コーヒーミルで豆を挽くと、ゴリゴリという小さな音が部屋に心地よく響いた。

スマホで流していた動画の声と混ざって、ゆっくりとした朝のリズムができていく。

挽き終わった豆をマキネッタに詰めて火にかける。

その間にパンを軽く焼き、バターを塗って砂糖をまぶし、もう一度トースターへ。

甘い香りがふわりと広がる。

マグカップに牛乳を半分注ぎ、電子レンジで温める。

今日はイタリアンスタイルの朝食。

濃いエスプレッソに、甘く焼けたパン。

マキネッタから立ちのぼる香りが、ゆっくりと部屋に満ちていく。

そろそろかな。

そう思いながら、温めたマグカップに濃いコーヒーを静かに注いだ。

朝食を食べながら窓の外を眺めていると、ガラスに小さな水滴がひとつ、またひとつと落ちてきた。

やっぱり降り始めたか…

そう思いながら、今日の買い物は延期だな、と心の中で予定を組み直す。

椅子に深く座り直すと、焼き上がったパンの甘い香りがまだ残っていて、部屋の空気が少しだけ柔らかく感じられた。

パンを食べ終え、温かいコーヒーをゆっくりと口に運ぶ。

雨の音が静かに部屋へ入り込んでくる。

ふと、窓の端で何かが揺れたような気がした。

ん?

視線を向けてみるが、そこには特に変わったものはない。

風で木の影が揺れただけかもしれないし、雨粒が流れた跡がそう見えただけかもしれない。


見間違いかな。


そう思い直して、コーヒーをもう一口。

それでも、さっきの揺れが妙に気になって、気づけばまた窓の外をじっと見つめていた。

雨脚は少し強くなってきて、雲の色もゆっくりと濃くなっていく。

今度は、窓の下のほうで黄色いレインコートのようなものが、はっきりと視界をかすめた。

さっきの揺れとは違う。

今のは確かに“色”があった。

気になって、椅子から立ち上がり、窓のそばまで歩いていく。

窓の高さからして、子どもだろうか?

そんな考えが頭をよぎる。

けれど、窓を開けずに外を見回しても、そこには誰の姿もない。

道路も歩道も、雨に濡れているだけ。

なんだ今の。

そう思いながら、ひとまず窓から離れ、テーブルへ戻ろうとしたその瞬間。


バンッ。


反射的に振り向く。

雨脚だけが強まっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ