雨の休日
休日の朝、いつもより少し早く目が覚めた。
布団の温もりを名残惜しみながら起き上がり、カーテンを開けると、空には厚い雲がゆっくりと広がっていた。
まるで大きな絨毯を敷き詰めたみたいに、どこまでも続いている。
「今日は雨かな」
そんな独り言が自然とこぼれる。
せっかくの休みなのに、と思いながらも、静かな朝の空気は悪くない。
布団を畳み、部屋着に着替える。
コーヒーミルで豆を挽くと、ゴリゴリという小さな音が部屋に心地よく響いた。
スマホで流していた動画の声と混ざって、ゆっくりとした朝のリズムができていく。
挽き終わった豆をマキネッタに詰めて火にかける。
その間にパンを軽く焼き、バターを塗って砂糖をまぶし、もう一度トースターへ。
甘い香りがふわりと広がる。
マグカップに牛乳を半分注ぎ、電子レンジで温める。
今日はイタリアンスタイルの朝食。
濃いエスプレッソに、甘く焼けたパン。
マキネッタから立ちのぼる香りが、ゆっくりと部屋に満ちていく。
そろそろかな。
そう思いながら、温めたマグカップに濃いコーヒーを静かに注いだ。
朝食を食べながら窓の外を眺めていると、ガラスに小さな水滴がひとつ、またひとつと落ちてきた。
やっぱり降り始めたか…
そう思いながら、今日の買い物は延期だな、と心の中で予定を組み直す。
椅子に深く座り直すと、焼き上がったパンの甘い香りがまだ残っていて、部屋の空気が少しだけ柔らかく感じられた。
パンを食べ終え、温かいコーヒーをゆっくりと口に運ぶ。
雨の音が静かに部屋へ入り込んでくる。
ふと、窓の端で何かが揺れたような気がした。
ん?
視線を向けてみるが、そこには特に変わったものはない。
風で木の影が揺れただけかもしれないし、雨粒が流れた跡がそう見えただけかもしれない。
見間違いかな。
そう思い直して、コーヒーをもう一口。
それでも、さっきの揺れが妙に気になって、気づけばまた窓の外をじっと見つめていた。
雨脚は少し強くなってきて、雲の色もゆっくりと濃くなっていく。
今度は、窓の下のほうで黄色いレインコートのようなものが、はっきりと視界をかすめた。
さっきの揺れとは違う。
今のは確かに“色”があった。
気になって、椅子から立ち上がり、窓のそばまで歩いていく。
窓の高さからして、子どもだろうか?
そんな考えが頭をよぎる。
けれど、窓を開けずに外を見回しても、そこには誰の姿もない。
道路も歩道も、雨に濡れているだけ。
なんだ今の。
そう思いながら、ひとまず窓から離れ、テーブルへ戻ろうとしたその瞬間。
バンッ。
反射的に振り向く。
雨脚だけが強まっていた。




