あいつは?
土曜日の夜。
部屋でコーヒーを飲みながら映画を流していたら、スマホが震えた。
画面には仲のいい友人の名前。
開いた瞬間、怒ったようなメッセージが飛び込んできた。
「おいおい、無視するなんて酷くねぇか? 声かけてもスタスタどっか行ったやんけ。なんなんだよ?」
頭の上に「?」が浮かぶ。
「お疲れ様。何をキレてんのか知らんが、俺今日家から一歩も出てないぞ。 今、映画見てる。」
そう返すと、すぐにまた通知。
「嘘つくなよ。さっき駅前の飲み屋街ですれ違ったやんけ。なんかしたか?」
埒が明かないので、そのままビデオ通話を押した。
数回のコールのあと、友人が出る。
背後は飲み屋街の店内らしく、ざわざわした声が聞こえる。
「よう。えらい剣幕でメッセージ送ってきたけど、俺はこの通り家にいるけど? なんなんだよ」
少しイラついていたのもあって、声が強めになる。
「……えっ?」
友人は本気で困惑した顔をしていた。
「どうしたんだよ?」
「いや……お前とさっきすれ違った時、声かけたんや。せっかくなら飲もうと思ってな。でも……その感じやと家やんな?」
「家や。ほら」
途中で止めた映画が映っているテレビをカメラに向ける。
友人はしばらく黙ってから、ぽつりと。
「……ごめん」
そういいながらデコに手を置いた。
「かまへんけど、俺にそんな似てたんか?」
そう言うと、友人は隣にいる別のやつに声をかけた。
「なぁ? めっちゃ似てたよな?なぁ?」
「おぅ、そっくりやったな」
「あっ、でも、顔は見えんかったし、こっちに振り向きもせんかったわ…」
「怖いこと言うなよ」
苦笑しながら通話を切った。
映画の続きを再生しながら、さっきの会話を思い返す。
そう思って、コーヒーをもう一口飲んだ。




