触れたのは?2
「まぁ、場所に着いたら生配信始めたわけよ。
トンネルやし、反響音とかでもおかしな音とか、
変なもんでも映ってくれたらめっけもんや思ってな」
「相変わらずやな」
「おぅ。 でもな、その日は特になんもなかったんよな。 配信中のコメント欄も“暗いだけやなぁ”みたいな、 盛り上がりに欠ける感じでよ。俺も配信者やし、ちょっとおちゃらけてみたりしたけど、全然なんも起こらんくてな。なんやねんと思いながら、とりあえず奥まで行って、トンネル抜けて帰ってきたんや」
「へぇ、なんもなかったなら良かったんじゃないん?」
そう言うと、向こうで小さく息を吐く音がした。
「いやいや、なんかちょっと変な音でも入りゃ盛り上がるやろ?」
「はぁ……罰当たりなこって」
そう返すと、友人の声が少しだけ低くなった。
「それがな……動画にもなんにも起こらへんかってんけどな」
「なんや?そんな言い方するってことは、なんかあったんか?」
「いや、配信終わらせて帰りしなに車で帰ってたんやけどな。 峠を降りた辺りで、急に車内に焦げたような匂いがしてな……」
「焦げたような匂い?タバコの灰でも膝に落としたん?」
「いやいや、それなら良かったんやけど……」
言いにくそうに言い淀む。
「ここまで来たら話してや。気になるやん」
そう促すと、友人は意を決したように続けた。
「実は車にな、交通安全の、家の近くの神社のお守りをぶら下げてるねんけど……まるで親指と人差し指で挟み込んだみたいに、裏表、焦げた跡があってん……どうしたらええと思う?」
声が妙に弱々しい。
「そら、おちゃらけたりしたら、そこになんかおったなら怒るやろ……」
そう返すと、友人は小さく
「そうよなぁ……どうしよう……」
と漏らした。
「お前ん家の近くの神社に改めてお参りに行くのと、 お守り買い直すか、近くの刀が祀ってる神社へお参りに行ったらどうや?」
そう提案すると、友人は少しだけ安心したように息を吐いた。
「そうするか……すまんな、ありがとう」
「ええよ。気をつけろよ」
そう返して電話を切った。
怖いもの知らずなやつでも、怖いことあるんやな……。
そう思いながら、冷めたお茶を飲み干し、ノートをパタンっと閉めた




