触れたのは?1
平日の夜、家でだらっとソファに沈んでいたら、テーブルの上のスマホがぶるっと震えた。
なんやろ、と思って画面を見ると、心霊系の配信をしている友人の名前が表示されている。
通話なんて珍しいな。
そう思いながら、指でスライドして出た。
「もしもし。お久しぶり」
「どうしたん?」
そう声をかけると、向こうで少し息を整える気配がした。
「おぅ、すまんな。ちょっと怪談好きなお前に聞いてみようと思ってな。 悪いとは思ったんやけど、電話させてもらったんや」
なるほど、と思う。
別に嫌でもないし、暇してたところだ。
「聞くだけでええんよね? 俺、解決とかはできんよ?」
「ええよー。聞いてくれたら、なんかわかるかも知らんし」
「あっ、長くなりそうならイヤホンに変えるわ。あと、お茶入れさせて」
そう言って一度通話をミュートにして、立ち上がる。
急須に茶葉を入れて湯を注ぐと、ふわっと湯気が立ちのぼった。
そのまま湯のみを持って部屋に戻り、イヤホンを耳に差し込む。
「ごめん、お待たせ」
そう言いながら、ひと口お茶を啜る。
向こうでも湯飲みを置くような小さな音がした。
「おぅ、話してええか?」
「ええで」
そう返しながら、机の上のノートを開いてペンを手に取る。
別に頼まれたわけじゃないけど、癖みたいなものだ。
「実はな、昨日、撮影で廃トンネルに行ってきたんや。ほら、心霊スポットで有名なあそこよ」
「あぁ、前から行きたいって言ってたとこ?」
「そうそう。んでな、とりあえず深夜の22時すぎに、何人かで行ったねん」
「うんうん」と相槌を打ちながら、ノートにさらさらとメモをとる。
「んで、まぁ、入り口から入って行くねんけど、さすがに暗すぎてさ。懐中電灯だけやと心もとない感じやったわ、まぁ、撮影用のライト持っていってたから明るいのは明るなってんけどな」
「へぇ、確かにあの辺は明るいイメージないなぁ」
「せやろ?でな、倒木とかもあってんけど、まぁ入っていったんや」
そのタイミングで、イヤホン越しに“すする音”がふっと入ってくる。




