渓流ですれ違ったのは?2
山道をゆっくりと抜けていくと、小さな駐車場に辿り着いた。
車は一台も停まっていない。
まだ朝が早いせいか、空気がひんやりとしていて気持ちがいい。
車を停め、買ったばかりのフィルターをカメラに取り付ける。
カメラ用のサングラスみたいな効果があるやつだ。
どんな写りになるのか、少しワクワクする。
カメラを首から下げて車を降りると、すぐそばに小さな渓流が見えた。
滝を撮る前に、まずはここで予行練習だ。
少し降りて、流れの近くに立つ。
水の音が一定のリズムで耳に入ってくる。
カメラの設定をいじりながら、試し撮りを始めた。
パシャ、と一枚。
画面を確認して、設定を少し変える。
また一枚。
「うーん、まだ慣れてへんか」
フィルターの濃さを調整しながら、何度もシャッターを切る。
気づけば、もう三十分ほどここで撮影していた。
朝の光が少しずつ強くなってきて、渓流の水面がきらきらと揺れている。
ゆっくりと駐車場へ戻り、滝へ向かう道を歩き始めた。
小さな吊り橋を渡り、少しだけ登ると、入山口の脇に不動明王像が祀られている。
手を合わせ、軽く頭を下げてから賽銭箱に入山料を入れた。
再び吊り橋を渡り、狭い山道の階段を登っていく。
木々の間から差し込む光が、足元にまだら模様を作っていた。
橋をいくつか渡り終えた先、行き止まりのように開けた場所に滝が現れる。
連日の天気のせいか、水量は少し控えめだ。
それでも、落ちる水の白さは綺麗で、見ているだけで気持ちが落ち着く。
カメラを構え、ブレないように慎重にシャッターを切る。
パシャ、パシャ、と確認しながら何枚も撮っていく。
フィルターの効果も少しずつ掴めてきて、ようやく満足のいく一枚が撮れた。
「よし、帰るか」
そう呟いて橋へ戻ろうとしたとき、橋の袂に女性がひとり立っていた。




