離れたくないもの3
「で?不思議な指輪の話を俺に体験させるだけのために呼んだのか?」
そう言うと、友人は少しだけ目を細めた。
「どう思う?お前なら直感で感じたもんとかありそうやろ?」
さっきまでのニヤニヤした顔が、いつの間にか真顔に変わっている。
「そうやな……来歴も聞いてないんか?」
問い返すと、友人は肩をすくめた。
「いや、店仕舞いのタイミングで聞けてないな」
「そうか」
「おう。でもな……何故か“手放すのは惜しい”と思う俺と、“手放すべき”と思う俺が同時におってな。お前ならどうするか聞きたいねん」
「なんでや。お前の買ったものならお前が決めろよ。
俺に委ねるな」
そう返すと、友人は苦笑いを浮かべた。
「正直、迷ってるからな。あとは……こういう不思議な物の直感はお前の方が鋭いやろ?だから聞きたいねん」
「はぁ……」
ため息をつき、少し考え込む。
「たしかに綺麗な指輪だが……これは手放すべきかもな。人の温もりが残るような指輪は、なんか因縁がありそうや…」
そう思いながら黙り込む…。
「あくまで俺なら、手放した方がいいって思うならすぐに手放すな」
そう言うと、友人は深く息を吐いた。
「そうなるよな……
どうやって手放すかな……」
悩む彼に、思わず笑ってしまう。
「手放すにも色んなやり方があるからな」
「例えば?」
「骨董品屋へ売りに行く。まぁ、値段つくかは別としてな。あとは寺とかに供養をお願いするとかやな」
そう言うと、友人は視線を落とし、聞こえるか聞こえないかの声でつぶやいた。
「手放す……いや、手元に……いや、でも……」
独り言のような、まとまりのない声。
軽く肩を叩く。
「おい、大丈夫か?」
その瞬間、友人はハッとしたように顔を上げた。
さっきまでの迷いとは違う、どこか焦ったような目。
その変化に、胸の奥で小さな違和感が揺れた。
「とりあえず、この指輪手放すなら俺が預かってもいいぞ?」
「お、おぅ……頼むわ」
手放すのが惜しいというより、離したくないという風に見える。
箱を受け取り、そっと手に持つ。
「じゃあ、とりあえず俺の方で何とかするわ。
金になったらお前に払うよ」
そう言って席を立つと、友人も立ち上がった。
「おぅ、頼むわ」
玄関に向かい、靴を履いて外へ出ようとした瞬間、
肩を掴まれた。
「……最後に一回、見てからでも」
その声は、さっきよりずっと弱い。
俺はその手をそっと握り、外す。
「また連絡するわ」
そう言って扉を開けると、友人は異様に寂しそうな目でこちらを見ていた。




