紫陽花の君は?2
ハザードをつけて停まっている友人の車に乗り込むと、開口一番、軽く肩を小突いた。
「いってぇなぁ……へへへ。 お前なら絶対のってくれると思ったわ。相変わらず煽りに弱いな」
憎めない顔で笑うその様子に、
思わず舌打ちしながらも窓の外へ視線を向ける。
「で、どこへ連れていくんや。紫陽花なら寺か?」
そう聞くと、友人はハンドルを握りながらニヤリと笑った。
「いや、今回は隣県の展望台やな。
雨の日の紫陽花はあそこが一番ええんよ」
「また山道かよ……」
そう返しながらも、どこか笑ってしまう。
「まぁええやん。俺とドライブしようや」
こういうところが、どうしても憎めない。
「しゃーないな」と肩をすくめ、他愛ない話をしながら車は山の上へ向かっていく。
雨は相変わらず降り続いていたが、車内は暖かく、窓を叩く雨音が妙に心地よかった。
そんなこんなで、気づけば目的地に着いていた。
車を降りて歩くと、斜面いっぱいに紫陽花が咲き乱れている。
「うわ……綺麗やな」
思わず漏れた言葉に、友人が横で得意げに頷く。
「せやろ。撮りたなるやろ?」
ニヤニヤしながらこちらを見るその顔に、「せやな」と苦笑しつつカメラの設定をいじる。
試し撮りを何枚か繰り返し、友人が満足するまで撮影に付き合うこと一時間。
傘をさしていても、じわじわと冷えが体に染みてくる。
「よし、これでええわ!」
友人が満足げに言うのを確認してから、今度は自分用に何枚か撮影を始めた。
雨粒をまとった紫陽花は、光を吸い込んだようにしっとりと色を深めている。
パシャ、パシャ、とシャッター音が静かな山に溶けていく。




